キスだけで誤魔化さないで。好きってちゃんと、言ってよね。【完】
「律!」

 アパートに着いた私が勢いよく律の部屋のドアを開けると、

「何だよ? そんなに慌てて」

 私の慌てぶりに驚いたのか、彼は吸っていた煙草を灰皿に捨てて私の元へ歩いてきた。

「ねぇ律、鈴さんって、本当に義理のお姉さんでただの幼なじみだったの?」
「は? 何だよ(やぶ)から棒に……」
「だって律、この前から様子おかしいもん……私、不安なの」

 こんなウザい事言ったら、また子供扱いされる。

 だから敢えて触れずにきたけど、でも、もう聞かずにはいられないくらい不安が押し寄せていたから、聞くしかなかった。

「ったく、何心配してんだよ? 何もねぇって」

 そんな不安を感じ取ってくれた律は私を抱きしめると、優しく頭を撫でてくれた。

「……ホント?」
「ああ」

 律の言葉に安心した私は、ぎゅっと抱き着いて心を落ち着かせていく。

(……大丈夫、律がそう言ってるんだから、大丈夫……)

 律の言葉を信じようと言い聞かせていたその時、突如インターホンが鳴った。

 嫌な予感がした。

 ドアを開けては駄目だと私の頭が警告していた。

「ったく、最近来客多いな……」
「律、開けちゃ嫌……」

 私の言葉を聞こえていなかったのか、怠そうに呟きながら私から離れると、玄関のドアを開けてしまったのだ。
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