キスだけで誤魔化さないで。好きってちゃんと、言ってよね。【完】
「……律……!」

 その行為が嬉しくて私が律に抱きつくと、そんな私に応えるように背中に腕を回して抱き締めてくれた。

「……さっきは、悪かったな……」

 その言葉に、首を横に振る。

「……だいぶ、遅くなっちまったな。今から送るよ」

 時計に目をやった律は私を放して車の鍵を手にしようとする。

「だ、大丈夫! 明日、土曜で学校……休みだし、親にはその、友達のトコに泊まるって……言っておいたから……だから……」
「…………」

 私の言葉を聞いた律は何かを考えるように黙り込んでしまう。

 もっと一緒に居たい。泊めて欲しいって思うけど……やっぱり無理なのかと諦めかけていると、

「…………今から少しドライブしよう」

 頭にポンっと手を乗せた律は優しい口調でそう言った。

「うん」

 まだ一緒に居られる、それが分かった私は嬉しくて、自然と笑顔になっていた。

 ドライブをすることになり、アパートから暫く車を走らせていく律。

 どこか目的があるみたいなのに場所を教えてはくれず、車は市外へと向かって行く。

 それから更に走り続け、気が付けば時刻は深夜一時を回っていて、流石に眠くなってしまった私は欠伸をして目を擦る。

「何だ、眠いなら寝ていいぞ? 着いたら起こしてやる」
「でも……」
「俺の事は気にするな。昼間寝てたし」
「……じゃあ、ちょっと寝るね」
「ああ」

 律の言葉に甘えた私は椅子を軽く倒して目を瞑ると、睡魔は一瞬にして私の意識を闇へ誘った。
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