キスだけで誤魔化さないで。好きってちゃんと、言ってよね。【完】
「……琴里、今日は友達の所に泊まるって、親に連絡してあるんだよな?」
「うん……だから、律のアパートに……泊めてほしいの……」
「…………却下」
「え?」
「そろそろ行くぞ」
「……う……うん……」

 アパートに泊めてとお願いしたら断られてしまった。

(これって、やっぱり帰れって事なの? 家に着く頃には朝方になっちゃうよ?)

 再び無言になってしまった車内。私は心の中で問い掛ける事しか出来ずにいた。

(やっぱり私は、律にとっては子供で、恋愛対象にはなれていないって事なのかな?)

 私が好きだって言ったから、付き合ってっていったから仕方なく、一緒に居るだけなのかもしれない。

 悲しくて、涙が零れそうになった私は俯いたまま律の運転する車に揺られて行く。

 暫くして、

「……着いたぞ」

 車を停めた律がそう口にした。私はいつの間にか眠ってしまったようだ。

 目を擦りながら顔をあげると、

「…………え?」

 辿り着いていた先は私の家でも律のアパートでもなくて、そこはどこかの駐車場だった。

「ここ……どこ?」
「いいから降りるぞ」
「う、うん」

 律に促され車を降りた私は手を引かれて建物の入口までやって来た。

(こ、ここって……)

 中へ入って私は、確信した。

 今、私たちが居る所が――ラブホテルだという事を。

「り……律……ここ……」
「部屋は……まぁどこでも良いよな」

 律は何だか慣れた手つきで部屋を選び、カウンターで鍵を受け取ると、

「何固まってんだ? 行くぞ」

 ボーッと立ち尽くす私の手を取ってエレベーターへ乗り込んだ。

(え? 何……この状況……)

 三階で止まるとエレベーターのドアが開き、律は無言のまま私の手を引いて部屋の前までやって来た。

 けれど律はドアノブに手を掛けただけで何故かドアを開けない。

「……り……律?」

 不思議に思った私が恐る恐る名前を口にすると、

「……嫌なら止めてもいい。どうする?」
「!!」

 そんな、意味深な質問をして来た。
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