キスだけで誤魔化さないで。好きってちゃんと、言ってよね。【完】
(どうするって……それって……)

 ここへ来たという事は、恐らくそういう事。

「……律……一つだけ……いい?」
「何だ?」
「……私のこと……好き? 大切だって、想ってる?」

 私は、後悔しない。だって、律が大好きだから。

 初めての相手は、律がいい。律じゃなきゃ、嫌だ。

「愚問だな。嫌いな奴相手なら、ここまで来て今みたいな質問はしねぇよ。大切だから、聞いてんだ」

 ここでも、やっぱり『好き』とは言ってくれない。

 でも、『好き』って言葉にこだわり過ぎるのも、良くないのかもしれない。

 だって、今の律の言葉は……好きって言われるよりも、嬉しかったから。

「……嫌じゃないよ。私は、律がいい。律とじゃなきゃ、嫌だから」

 先程の質問にそう答えると律はドアを開け、少し乱暴に腕を引かれて中に入った。

 そして――

「っん……り……つ……っ」

 閉まったドアを背に、私は息つく間もなく強引な律の口付けに応えていく。

「……琴里」
「……り、つ……」

 激しいキスが一旦止み、名前を呼ばれると、

「きゃっ……」

 急に身体がフワリと宙を舞う。

 律が私を抱き抱えて、ベッドまで運んでくれたのだ。

 優しく寝かされ、着ていたブラウスのボタンを一つ、また一つと丁寧に外してくれる。

 そして、ボタンが全て外されブラジャーに覆われただけの胸が露になって、何だか酷く落ち着かない。

「んっ……、や……」

 布越しに触られているのに、それだけで反応しちゃう私の身体は、何だか自分のものでは無いような気がして恥ずかしさが増していく。

「……ん、……ふ……ぁ、」

 そして再びキスをされ、撫でるように指先で触れられる身体に、力はどんどん抜けていき、律に委ねるしか無くなっていく。

 そして気付けばお互い服を脱ぎ捨て、恥ずかしいはずなのに、そんな事はどうでもよくなっていた。

 初めてで怖いけど、律はまるで壊れモノを扱うように優しく触れてくれて、気持ちよくしてくれて、いつの間にか、恐怖心は薄れていく。

「琴里、いいか?」
「――うん、いいよ」

 そして、沢山のキスと愛撫によって二人の気持ちが昂ぶり、互いを欲しいと思った時、私の身体は無事に、律を迎え入れる事が出来たのだった。
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