キスだけで誤魔化さないで。好きってちゃんと、言ってよね。【完】
「律!」

 解放された私は一目散に律の元へ走って行き、そのまま抱きついた。

「さっさと散れよ。目障りだ」

 そして、私を抱きしめながら律がそう口にすると、

「ッチ、もう行こうぜ」

 これ以上は無意味だと悟ったのか、舌打ちをしたり、文句を言いながら去って行った。

「律……」
「平気か?」
「うん……、大丈夫」
「悪かったな。一人にして」
「ううん、律は悪くないよ、元はと言えば私がジェットコースターに乗れもしないのに乗ったからだもん」

 律にギュッと抱きついたまま、私が落ち込んでいると、

「ほら、飲み物。それ飲んで、次何乗るか決めろよ」

 持っていた飲み物を手渡してくれる。

「律……ありがとう」

 飲み物を飲んで少し落ち着いた私は、いつまでも落ち込んでいては、せっかくのデートが台無しになってしまうと気持ちを切り替え、

「それじゃあ次は、ゴースト屋敷に行こう!」

 次のアトラクションに行く計画を立てた。

「それ、お化け屋敷だろ? お前幽霊とか苦手じゃねぇのかよ?」
「本物は怖いけど、お化け屋敷は作り物だもん、大丈夫だよ」
「…………まあ、お前が良いって言うならいいけど……」

 私が選んだのはお屋敷の中を歩いて回るタイプのお化け屋敷。

 怖いと評判だけど、作り物だから大丈夫……なんて余裕を見せていたはずなのに、いざ中に入ってみると作りがリアル過ぎて終始律の腕にしがみついたまま。

「だから言ったんだよ……」
「ごめんなさい」

 流石に調子に乗りすぎたと反省した私は出口に辿り着いたと同時に謝った。
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