キスだけで誤魔化さないで。好きってちゃんと、言ってよね。【完】
「律、今日は連れて来てくれて、ありがとう!」
「楽しめたか?」
「うん! すっごく楽しかった!」
「そりゃ良かった」

 こんな風に遠出のデートはなかなかないから、今日は本当に楽しい一日だった。

「また、連れて来てくれる?」
「そうだな、こういうのもたまには悪くねぇから、また今度な」
「本当に?」
「ああ」
「嬉しい!」

 横に並んで座っていた私たち。

 律の言葉に嬉しくなった私は彼の肩に寄りかかる。

 すると、律が私の肩に腕を回してきて身体を引き寄せられ、

「――琴里」
「律――?」

 名前を呼ばれて顔を上げると、ふいに律が唇を重ねてきた。

「……ん、……」

 触れるだけの、優しいキス。

 何度かされて唇が離れていくのが名残惜しかった私は律の服を掴むと、

「……律、もっと、して?」

 恥ずかしいけど、おねだりしてみる。

「お前……そういう事言うの、禁止。つーかもうすぐ降りるのに、今したら止められなくなるだろーが」

 律はそう文句を言いながらも、私の顎に指をかけると持ち上げてきて、

「――んんっ」

 今度は強引なキスをしてくる。

「……んっ、は……ぁ、り、つ……」

 さっきとはまるで違う、激しい、大人なキス。

「その顔、エロすぎ」
「……っや……、はずか……しいっ」

 キスだけなのに、もの凄くいけないことをしているみたいな感覚になって、身体が熱く(ほて)っているのが分かる。

「名残惜しいけど、もう着くからここまでな」
「……うん」

 何だか中途半端にスイッチが入ってしまった私たちは何とか押し留まり、観覧車を降りる。

「さてと、帰るか」
「うん」

 そして少し淋しい気持ちを感じながら、ワンダーランドを後にした。
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