キスだけで誤魔化さないで。好きってちゃんと、言ってよね。【完】
 その日の放課後、いつも通り私が律のアパートに向かって歩いて行くと前方に見覚えのある後ろ姿が見えた。

(あれって……もしかして、鈴さん?)

 そう思って別の道から行こうと元きた道を引き返そうとする。

「あ、待って! 律の彼女さん!」

 そんな私に気付いたのか、鈴さんが声を掛けてきた。

 それには流石に知らないフリが出来なかった私は仕方なく彼女の方へ視線を向ける。

「……何でしょうか?」
「あの、これから少し、時間あるかしら?」
「え?」
「……あなたと、話がしたくて来たの」
「私と?」

 どうやら鈴さんは律に会いに来たのではなくて私に会いに来たらしく、話がしたいと言われ少し戸惑った。

(一体、何なんだろ?)

 正直私はあまり関わりたくないけど、話というのは気になるし、私も聞きたい事と言いたい事があるのは確かだったから、

「……分かりました。ここじゃあれだし、少し行った所に公園があるから、そこでいいですか?」
「ええ」

 鈴さんの申し出を受けて、私は彼女と話をする事に決めた。

「……それで、話というのは?」

 公園に着いた私たちはベンチに座ると、早速本題に入った。

「……その、律の事なんだけど……。律から、わたしの事は、何か聞いてるのかな?」
「……ええ、聞いてます。元カノだった事と、それと、今は律のお兄さんの奥さんだって事……それから、律を裏切って悲しませた事も」
「そう……」
「……私も、貴方に聞きたい事があります」
「何、かしら?」

 私は一つだけ鈴さんに聞いてみたい事があった。とても意地悪な質問かもしれないけど、これだけはどうしても聞かずにはいられなかった。
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