キスだけで誤魔化さないで。好きってちゃんと、言ってよね。【完】
「どうして、お兄さんの事が好きだったのに、律と付き合ったりしたんですか? お兄さんに彼女が出来た時、律に優しくされたから?」
「そ……それは……」
「……私、律から話を聞いた時、貴方の事、すごい腹立たしく思った。思わせぶりな事して、律を傷付けて……結局お兄さんと結婚までしちゃうとか……律の事を何だと思ってんのかなって思いました」

 私が責め立てるように言ったからか、鈴さんは唇を噛み締めたまま俯き何も言い返して来ない。

「律を苦しめて楽しい? 少しでも悪いと思ってるなら、律に会いに来ないで下さい。今は私が律の彼女だし、私が律を幸せにするから。だから、私たちの邪魔をしないで下さい」

 言い返して来ないのが余計にムカついた私はこれでもかと彼女を責め続け、もう会いに来ないで欲しいと告げる。

 正直、これは私が決める事ではないのは分かってる。

 でも、もしかしたら心の奥では律も鈴さんに会いたいと思ってるかもしれない。そんな不安があるからなのか、これ以上姿を見せて律の心をかき乱さないで欲しかったの。

 そんな私の気持ちが伝わったのか、

「……そうよね。ごめんなさい。貴方の言う通りよね。もう、来ないわ。さようなら」

 申し訳無さそうな表情を浮かべた鈴さんはそれだけ言うと、私を残して走り去って行った。

(……これで、良かったんだよね……? でも、こんなにも不安になるのは、どうして?)

 言いたい事は言えたし思い通りの展開になったはずなのに、私の心は何故だかザワついて不安が拭えずにいた。
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