キスだけで誤魔化さないで。好きってちゃんと、言ってよね。【完】
「やっぱり、そうなんだね……」

 律は、『そんな事出来るわけない』って言うけど、決して不可能なんかじゃない。

 鈴さんたちが離婚すれば、私と律が別れれば、二人が一緒になれない事なんてないんだから。

 でも律は優しいから、きっと私を選んでくれる。

 私が嫌いにならない限り、私と律が別れる事はないと思う。

 だけど、本当にそれでいいのだろうか。

 心の底から私を好きでいてくれるのなら嬉しいけど、情で一緒に居られても、嬉しくない。

 それに、私は思うんだ。

 律は……本当は鈴さんとやり直したいって思ってるんじゃないかって。

 私に『好き』って言ってくれないのは、心の中に、彼女がいるからなんじゃないかって。

「――ねぇ、律。」
「ん?」
「律は、私の事、好き?」
「何だよ、急に」
「答えて? 好き?」
「ああ、そんなの当たり前だろ?」
「……うん、そうだよね」

 こんな時ですら、『好き』とは言ってくれない律。

 言葉に拘りすぎても仕方ないけど、今この時だけは、『好き』だと言って欲しかったのに。

「琴里、不安にさせて悪いと思ってる。鈴と兄貴の事は、近いうちに片付くと思うから……少しだけ待ってて欲しい。正直関わりたくはねぇけど一応家族の事だから、状況を知っちまった今、見て見ぬふりは出来ねぇんだ。本当にごめんな」
「ううん、私の方こそごめんね。大丈夫、私は、律を信じてるから……」
「ああ、ありがとな」

 そう言って私を抱き締めてくれる律。

 納得したように振舞ったけど、本当は嘘。

 私は密かに決意していたの。

 律から離れようって。
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