キスだけで誤魔化さないで。好きってちゃんと、言ってよね。【完】
4
 あの日以降、私は律の元へ行かなくなった。

 というのも、律が暫く実家に戻ったのが一番の理由だ。

 でも、それはタイミングが良かった。

 そして、タイミングが良過ぎた事で、私の決断が間違って無かったことを肯定している気がした。


「珍しいね、琴里がうちらとカラオケ来るの」
「本当本当! 最近ずっと彼氏優先だったじゃん?」
「あー、まあ、色々とねぇ」

 私は淋しさを紛らわせる為に、友達と遊び歩くようになった。

 律は毎日連絡をくれるけど、私が遊び歩いていて電話に出れない事が多いせいか、このところあまり話をしていない。

 でもいいの。このまま律と距離をとっていかないと、離れるなんて無理になるから。

「なあ琴里」
「何?」
「……お前、彼氏と上手くいってないのか?」
「えー? そんな事ないよ? っていうか、干渉するの止めてって言ったでしょ?」
「ごめん。けど、これは干渉してんじゃなくて心配してんだよ。何だか最近お前、無理してる気がするから……」
「そ、そんな事ないって! もう、変な事言わないでよね」

 新田はあれ以降しつこくして来たりしないどころか、今なんて心配してるとか言い出して、調子が狂ってしまう。

 しかも、新田のくせに、私の心の変化に気付いてるとか……本当、調子狂う。

 金曜の夜、制服から私服に着替えた私は仲間たちと夜の街に繰り出し、親からの電話も無視して遊び歩いていると、

「あれ? 君……確か律の……?」

 どこか見覚えのある男の人が声を掛けてきたと思ったら、その人は律のお兄さんで、隣には鈴さんじゃない女の人が居た。
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