キスだけで誤魔化さないで。好きってちゃんと、言ってよね。【完】
(れん)、誰、この子」
「ああ、弟の彼女」
「へえ?」
「なぁ亜美香(あみか)、悪いけど、俺この子と話あるから約束またにしてくれない?」
「えー」
「その分埋め合わせするからさぁ」
「もう、しょうがないなぁ。そんなお子ちゃま相手に浮気、しないでよ?」
「分かってるって」

 律のお兄さんは彼女らしき人に話をすると、

「ねぇ、これから俺と付き合ってくれない? 話があるんだ。ね?」

 今度は私に向かって話があるから付き合って欲しいと言ってくる。

「何だよ、コイツ。琴里、行こうぜ」

 新田たちが私に声を掛けてくれるけど、

「ごめん、この人は知り合いなの。私も話があるから、今日はここで帰るね」

 私は律のお兄さんの誘いを受けて、新田たちに断りをいれると、そのまま彼と共に繁華街を歩いて行く。

 彼は車で来ていると言うので、あまり密室に二人きりにはなりたくなかったけど、『何もしないから警戒しないで』と彼は言うし、一応律のお兄さんだし、ここは信じようと思って車に乗った。

「……それで、話って何でしょうか?」
「君、高校生だよね? こんな遅くまで遊び歩いてたらいけないじゃん。律は知ってるの?」
「……お言葉ですが、お兄さんは鈴さんという奥様がいらっしゃるのに、他の女の人とデートなさるのはいけない事では?」
「はは、君、結構言うね」
「……お説教でしたら、聞きたくないんですけど」
「そうだね。いけない事をしてるのはお互い様だから、この話は止めよう。君、知ってる? 最近律と鈴、もの凄く仲が良いんだよ? 二人が昔付き合ってたのは知ってるのかな?」
「ええ、聞きました」
「それなのに、律が実家に……元カノが居る家に戻るの許しちゃったの? 」
「それはあくまで一時的なものですし、そもそも律が実家に行ったのは、貴方と鈴さんの問題があるからですよ? それなのに貴方はどうして家に帰らないんですか?」
「うーん、まあ、子供の君には分からないかもしれないけど、色々あるんだよねぇ……事情がさ」

 相変わらずお兄さんは何だかよく掴めない人で、何を考えているのかも分からないのだけど、色々あると言った時、一瞬だけど寂しそうな表情をしているのが気になった。

 そんな時、私のスマホから着信音が鳴り響く。
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