キスだけで誤魔化さないで。好きってちゃんと、言ってよね。【完】
「……律」
「ん?」
「……大丈夫?」
「……ああ、平気だ」

 平気だと言うけど、実際はそんな事ないと思う。

 三人の関係は複雑過ぎて、当事者でない私ですら……何だか悲しくなったのだから。

「律?」

 すると突然律は私の身体を抱き締めたまま、動かないし何も言わなくなった。

「……律」
「……悪ぃ、暫く……こうさせて」

 そう口にした律の声は掠れていて、身体も微かに震えているように思えた。

 きっと、律は泣くのを我慢してる。

 そう思ったら凄く切なくなって、私は律の背中に腕を回して抱き締め返してあげた。

 その時律の身体がピクリと反応したけど、彼は何も言わなかった。

 それからどのくらいそうしていただろう。

 気づけば、もうすぐ時刻は午前二時。流石に私は眠くなっていた。

「……眠いか?」
「ううん、大丈夫……」

 眠そうな私に気付いた律はようやく落ち着いたのか、いつも通りに声を掛けてくれた。

「無理すんなよ、眠いなら寝とけ」
「今は、やだ……。まだ、律とこうしてたい……」

 だけど、私はまだ律から離れたくなくて、嫌だと首を横に振るも、やっぱり眠くて目を擦る。

 そんな私を律は自身の身体で支えるように私の体勢を直し、

「んじゃ、これでいいだろ? このまま少し寝てろ」

 自分の身体はベッドを背もたれにして寄り掛かり、私を支えた状態で頭を撫でてくれる。

「うーん、うん……律、傍に居てくれる?」
「ああ」
「どこにも、行かない?」
「行かねーよ」
「……もう、ずっと一緒に居てくれる?」
「ああ、琴里が嫌だって言っても、ずっと一緒だ」
「嫌だなんて、言わないよ……だって、私は……律が……」

『好き』と言葉を紡ごうとしたのだけど、眠気かピークに達した私はそのまま眠ってしまった。
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