キスだけで誤魔化さないで。好きってちゃんと、言ってよね。【完】
 それを聞いた両親は驚いていたけど、律が小説家と聞いた瞬間、お父さんは瞳を輝かせてサインを要求した。

 実はお父さんは律の書いた小説のファンだったらしく、それを知って終始興奮気味だった。

 そして私が高校を卒業したら籍を入れてもいいと言ってくれたのだ。

 ただ、卒業するまでは節度ある交際をというのが最低条件だから、それを守る為にも毎回お泊まりというのを律は許してくれない。

「来週はお泊まりしないから! 今日は一緒に居たい! ね? いいでしょ?」
「……そう言って先週泊まったんだけどな」
「……もういい、帰る! 帰ればいいんでしょ!?」

 全ては私の為だと分かってはいるけど、なかなか首を縦に振ってくれない律にちょっとだけイライラした私は頬を膨らませてそっぽを向いた。

「……ったく、これだからお子様は……」
「子供扱いしないで。だって、しょうがないじゃん……離れたく、ないんだもん……」

 わがまま言うとやっぱり子供扱い。それは今までと変わらない。

 されるのが嫌なら言わなければいいんだけど、律と離れたくないからつい言っちゃうの。

 私がシュンとしてると律は、

「……ったく、分かった。今日は特別な。その代わりきちんと連絡しろよ…………いや、やっぱり俺からきちんと言うよ。電話してくれ」
「え? いいよ、私から言うから」
「駄目だ、こういう事はきちんと俺の方から言った方がいいんだよ」

 私の気持ちを汲んでくれて泊まる事を許可してくれただけではなくて、私の親に自分から泊めるという事を話してくれるという。

 こういう誠実なところも、私は好き。

 律が話してくれたおかげでお母さんたちは私が泊まっていく事を納得してくれてほっとする。
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