キスだけで誤魔化さないで。好きってちゃんと、言ってよね。【完】
「……律、怒ってる?」
「怒ってねぇよ」
「本当に?」
「ああ」
「……キスして?」
「何だよ、いきなり」
「律は、したくないの?」
「……したいに決まってんだろ? いつでもしたいっての」
「……ん……」

 深くて大人なキスも好きだけど、触れるだけの軽いキスも好き。

「……琴里、明日は久々に、どこか出掛けるか」
「え? でも、締め切り間に合う?」
「平気だよ、一日くらい」
「無理しなくていいよ? 私は、律と居られればどこでも幸せだもん」
「…………本当、お前は良い女だよ。けど本当に大丈夫だぜ? 明日、どこ行くか考えとけよ」
「うん、分かった!」
「さてと、そしたら今日は早めに寝ようぜ、一緒に、な?」
「……その言い方、絶対寝かせる気ないやつだ……」
「はは、バレたか」
「もう、律ってば」

 私が高校を卒業するまで暫くかかるから、まだまだ一緒に過ごせる時間は限られているけど、この先どんな困難が待ち受けていたとしても、私たちは絶対乗り越えられる。


「ねぇ律、好きって言って?」
「何だよ、言葉には拘らねぇんじゃ無かったのか?」
「そうだけど、たまには言われたいの」
「好きじゃ無かったら、一緒に居ねぇしキスだってしねぇだろ?」
「そうだけど、それはそれ!」
「ったく、注文の多いお姫様だよ、お前は」

『好き』って言葉が無くても、もう不安にはならない。

 それくらい、私たちの間には言葉なんかでは表せないくらいの深い絆があるから。


 だけど、たまには聞きたいから、聞くよ。『好き?』って。


「――好きに決まってんだろ?」
「うん、私も律が大好き!」

 



 ―END―
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