キスだけで誤魔化さないで。好きってちゃんと、言ってよね。【完】
 友人たちに嘘をつくのは少しだけ心苦しいけど、私にとって高校の友人は皆上辺だけの付き合い。

 地味で目立たなかった中学までの自分を変えたくて高校デビューした私にとって、高校では仲間外れにされないようについていくので精一杯なのだ。


 放課後、帰り支度をしていた私に、

「琴里、ちょっといいか?」

 少し遠慮がちに声を掛けてきたのはクラスメイトの新田。

「何? カラオケなら私はパスしたよ?」
「いや……うん、それは聞いたけど、何つーか、俺、琴里に来て欲しくて麻紀とか紀子も誘ったんだ……。だからさ、少しでもいいから来れねえかな?」
「……悪いけど、予定あるから」

 まだ何か言いたげな新田を置いて、私は逃げるように教室を出た。

「琴里、待てよ」

 だけど、諦めの悪い新田は私を追いかけてくる。

 彼は麻紀たちと一緒につるんでいる仲間の一人。

 律に出会うまでは私も一緒になって毎日みんなで街をぶらついたり馬鹿騒ぎしたりしてたけど、正直心の底から楽しんだ事はない。

 しかも、新田は私に気があるみたいだって麻紀たちが言ってたけど、好みじゃないし、そもそも眼中に無かった。

 それなのに、律と出逢う少し前、偶然二人きりになった時があって、告白すらされてなかったのに、いきなりキスをされてしまい、それから『どうでもいい』が『大嫌い』になった。

 だって、私のファーストキスは好きでもない男に奪われてしまったのだ。
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