身代わりから始まる恋  〜白い悪魔の正体は甘くて優しい白馬の王子!?〜
「ごめん、大丈夫!? 本当に落とす気はなかったの!」
 香蓮を突き落とした友達が半泣きで言う。
「大丈夫だから」
 香蓮はにこっと笑って見せた。
「兎山さん、保健室へ行きましょう。みんなは上がって、着替えて教室で待機!」
 先生の声に、はーい、と生徒たちがバラバラに答えた。



 香蓮は念のために病院に連れていかれたが、異常はなかった。
 翌日、登校後はまっ先に澄玲を探して見回した。
 目が合うと、白葉はにこっと笑った。
 香蓮はどきっとして目を逸らしてしまった。
 お礼を言いたかったのに、友達に囲まれて言えないままになってしまった。

 男子たちからは、からかいが飛んだ。
「白葉がお姫様抱っこしてた!」
「白馬の王子様だ!」
「名前通りかよ!」
 そう言ってげらげら笑う。

 香蓮も澄玲も相手にしなかったが、しばらくそれは続き、だから香蓮はお礼を言うタイミングを完全に失った。

 目はいつも澄玲を追った。
 彼は同級生の誰よりも背が高く、凛々しくて大人びていた。
 男子からも女子からも人気があり、いつも誰かに囲まれている。香蓮はそれもあって彼に近付けなかった。
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