身代わりから始まる恋  〜白い悪魔の正体は甘くて優しい白馬の王子!?〜
「白バイって、大型?」
「そうだよ。俺が乗ってる白バイは1300CCの排気量で、重さは300キロくらい」

「そんなに重いのね。仕事ってやっぱり大変?」
「大変だよ。違反者からはクレームの嵐。どうやって書類にすんなりサインをもらうかと苦心する日々」
 おどけて言う彼に、香蓮は苦笑した。

「楽しいのはどんなとき?」
「子供が敬礼してくれるときとか。かわいくてさ。知ってる? 警察って敬礼されたら敬礼を返すって法律で決まってるんだよ。例外もあるけどね」
「知らなかった!」

「あと印象深かったのはカルガモのための交通整理かな。まるで要人警護だよ」
「見たかったなあ。VIP待遇のカルガモ」
「通りすがりの人、みんなスマホで撮影してた」
 香蓮はくすくす笑った。

「そんなに面白いこと言ったかな」
「言ったよ」
 香蓮はふわふわと彼を見る。
 目が合って、とろんとした笑みを向けた。

「……そんな目で見られると」
 ふいに立ち止まり、彼が顔をそむけた。
 驚いて香蓮も立ち止まる。
 顔の赤い彼が、口に手を当ててうつむいている。

「飲み過ぎた? 気持ち悪い?」
「そうじゃなくて」
 彼はまっすぐに香蓮を見る。
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