身代わりから始まる恋  〜白い悪魔の正体は甘くて優しい白馬の王子!?〜
「家族とか友達の違反は見逃してるんだろ? 金が必要か?」
「金の問題じゃない」
「だったらこいつをお前にやるからさ」
 雄聖が香蓮を指さす。

「私はあなたの所有物じゃないわ!」
 香蓮はわなわなと震えた。
 こんな人だったとは気が付かなかった。片鱗はどこかにあったはずなのに。陽キャで営業成績一位。その輝きに目がくらんでいたようだ。

 澄玲は大きく息をついた。
「警察官の目の前で彼女の人権を無視し、犯罪を教唆するとは」
「見逃してくれたっていいじゃねえか! 人情はないのか!」
「引き下がった方が身のためだぞ。逮捕されたいなら別だが」
 ぎろりと澄玲がにらむと、雄聖は気圧されてあとじさった。

「お前は本当に悪魔みたいなやつだな。善良な市民を攻撃しやがって! 物陰に隠れて見張って、権力を振りかざして! 卑怯者が!」
 雄聖は叫び、踵を返した。
「ちょっと待ってよ!」
 なりゆきを見守っていた舞奈は慌ててあとを追う。

 香蓮はほっと息をついた。
「ありがとう」
「むしろ俺がいるときで良かった」
 澄玲は手を伸ばし、香蓮の頬に触れる。温かく大きな手に、安心感が広がった。
 が、彼はすぐにはっとして手を下ろした。
「すまない、つい」
「大丈夫」
 香蓮は照れてうつむいた。
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