身代わりから始まる恋  〜白い悪魔の正体は甘くて優しい白馬の王子!?〜
「警官なんて正義厨のなれの果てだろ。ダサ」
 雄聖はまた笑った。
「とにかく、安全運転が大事よ」
 困ってしまって、香蓮はそう濁した。



 という話を最近したばかりだというのに。
 土曜日、雄聖はバイパスでミニバンを飛ばしていた。高架になっているここは高速道路と錯覚しそうだが、一般道だ。
「スピード出し過ぎじゃない?」
 香蓮が横から覗くメーターは、制限を三十キロ以上オーバーしている。

「臆病だな」
 鼻で笑い、雄聖はさらにアクセルを踏む。
 片側二車線の右側を走っている。左車線の車がすごい勢いで見えなくなっていく。
 車に乗ると人格が変わる人がいるというが、彼もそうなのか。むしろ本性なのか。

 知り合ったのは半年前。香蓮が勤める会社に彼が営業として中途採用された。
 自分は事務で、彼がとってきた契約の書類をチェックしたり商品をスムーズに届けられるように手配したりなどしている。
 商材は水。法人も一般家庭も対象としてウォーターサーバーを販売、レンタルしている。

 彼はすぐに結果を出し、営業トップとなった。
 二か月前、彼から告白された。真面目に働く姿に惹かれた、と。
 陰キャな自分とは違う陽キャな彼の告白に、迷った。

 だが、違うからこそ憧れがあった。誰とでも仲良く話せるスキル、にこやかな笑顔、スマートな対応。香蓮にはないものばかりできらきらして見えた。
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