身代わりから始まる恋  〜白い悪魔の正体は甘くて優しい白馬の王子!?〜
「……お願いします」
 ぺこっと頭を下げる。
「じゃあ今から俺の恋人だ」
 彼はぎゅっと香蓮を抱きしめる。

 香蓮はなにも言えない。金の矢が胸に深く刺さるのを感じながら、ただ彼に抱きしめられていた。



 月曜日の出勤はいつも気怠い。だが、香蓮はいつも以上にぼうっとしていた。
「おはよ、香蓮!」
「おはよ」
 紅美佳にぼうっと挨拶を返す。

「どうしたの?」
「急展開についていけない」
「なになに、気になる」
「あとで話す」
「じゃあ今日は外で一緒にランチ、決定」
「うん」
 香蓮はぼうっと席についた。

 あれから、彼は手を繋いで駅まで送ってくれた。
 別れ際にまた軽くハグをされて、胸に熱が生じて消えてくれない。
 彼は自分を助けたいと思ってくれただけだ。なのに。
 なにをしていても、彼を思い出してしまう。

 彼の笑顔、大きく温かな手。
 レストランの輝く水槽に照らされた精悍な顔。
 雄聖を撃退したときの凛々しい姿。
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