身代わりから始まる恋  〜白い悪魔の正体は甘くて優しい白馬の王子!?〜
「ごめんね、ありがとう。前回も今回もおごってもらっちゃって」
「いいよ。仕事ばっかで使い道なかったし」
 彼のさわやかな笑顔に、香蓮の心がまたときめく。

 彼の運転で夜の街を抜け、山の中へと走っていく。
 体感速度も普通の車より速くて怖い。
 風防があっても風が寒かったから彼の用意してくれた上着を羽織った。

 山道ではカーブが多い。彼は充分に速度を落としてくれるのだが、側車に乗る香蓮は体を左右にふられる。普通の車よりも遠心力がかかる気がした。前方のバーにつかまって、なんとか耐えた。
 夜景スポットに着くころには、体力を削られてフラフラになっていた。

 黒々と茂る木々に囲まれた駐車場に、サイドカーは止まった。
 奥にはフェンスがあり、夜景が広がっていた。
 降りた直後、香蓮はふらついてしまう。澄玲に抱き留められ、顔に血が昇った。

「……乗り心地、悪かったかな。強引でごめん。ここ、夜景がきれいだって聞いて、君と見たくてさ」
 照れたように彼が言うから、思わず胸を押さえた。ワイルドなイケメンが照れるとこんなに破壊力があるんだ、と初めて知った。

「大丈夫、酔わなかったから」
 香蓮は笑顔を作って答える。
「本当に?」
 彼が心配そうにのぞき込むから、また胸が甘く痛んだ。
 別の意味では絶対大丈夫じゃない。だが、香蓮はただうなずいた。

「無理はしないでね」
 彼は香蓮の肩を支えるように抱いた。
 一緒に歩きながら、香蓮の顔は赤くなる一方だ。温かい彼の手が大きくて、頼もしい。
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