身代わりから始まる恋  〜白い悪魔の正体は甘くて優しい白馬の王子!?〜
 キスを終えたとき、二人は軽く息を切らしていた。
「こんなにキスを官能的に感じたのは初めてだ。きっと君が心から好きだから」
 彼のつぶやきに、香蓮は頭をもたせかける。
 彼はぎゅっと香蓮を抱きしめる。

「このままだと我慢できなくなる」
 香蓮は答えられなかった。彼は彼女の背を撫で、髪を撫でる。愛しさがその動きのすべてから伝わり、たまらなくなった。

「……明日も仕事だよね」
 香蓮は黙ってうなずいた。
 澄玲は彼女の髪に顔を埋めるようにキスをした。

「離したくない……けど、遅くならないうちに帰らないとね」
 帰りたくない、と言ってしまいそうで、香蓮は口を閉じた。
 胸が溶岩のように熱くてすべてを燃え溶かしてしまいそうだ。冷静になれ、と必死に自分に呼びかける。

「実を言うと、これから忙しくなるんだ。しばらく会えないかもしれない」
 澄玲の声はさみしそうだった。

「どうして?」
「来月、警察学校で文化祭があって。数年ぶりに一般公開で行われる。そこで白バイのデモ走行を披露するから練習とか準備で」

「警察学校に文化祭なんてあるのね」
 知らなかったから、驚いた。
「君にも見てもらいたいな」
「絶対に行く!」
 即答すると、澄玲は笑みに目を細めた。
< 28 / 57 >

この作品をシェア

pagetop