身代わりから始まる恋 〜白い悪魔の正体は甘くて優しい白馬の王子!?〜
澄玲とはメッセージでやりとりをして、電話もした。
彼は疲れているようで、電話をしている途中になんどもあくびをした。
「疲れてるね」
「うん……少し」
くたびれた声には疲労が隠しようもない。
「無理しないで。休めるときは休んでほしい。電話も疲れるでしょ?」
「悪い……演舞が終われば時間作れるから。また連絡する」
ごめん、と謝って彼は電話を切る。
電話すらできないほど疲れてるんだ。
香蓮はため息をこぼす。
こんなに消耗している彼に、相談する気になどなれない。
その後は電話どころかメッセージも減った。
寂しかった。
でも、彼は警察官だから。自分が普通に甘えていい存在じゃない。みんなのために頑張ってるんだから。メッセージの量が愛の量とイコールなわけじゃないんだから。
香蓮は自分に言い聞かせた。
舞奈が仕事を押し付けていることは数日でフロア中に知れ渡った。言わなくても見ればわかるからだ。
抗議してやると紅美佳が怒ったが、止めた。きっとケンカになってしまうから。
紅美佳が守ってくれようとしてくれたことに、情けなくなった。
自分できっぱり断るべきだ。その前に課長に相談しようか。課長は苦手だが、仕事のことなのに避けるのも大人げない。
そう思ったとき、課長の直斗に呼ばれた。
会議室に連れていかれ、向かい合って座る。
話が終わったら舞奈からの仕事のことだけでも相談してみよう。
そう思って直斗の話を待つ。
直斗は苦々しく香蓮を見た。
「栗生さんから相談があったよ。兎山さんに仕事をとられて、することがなくて困ってるって」
「え!?」
また先手を打たれた。香蓮は悔しさに口をゆがめた。
「栗生さんに頼まれたんです」
「だったらなんで彼女がとられたなんて相談にくるんだ?」
「わかりません」
「とにかく、仕事はちゃんと分担して、断るべきときには断って」
「……はい」
香蓮は悔しくてうつむく。