身代わりから始まる恋  〜白い悪魔の正体は甘くて優しい白馬の王子!?〜



 課長から注意されたのか、舞奈が表立って仕事を押し付けることはなくなった。
 だが、今度は伝えるべき伝達事項を伝えてもらえず、書類作成に支障が出始めた。

 口頭だと伝達漏れがあるからメールで、とお願いしてもメールが来ない。
 紅美佳も文句を言うが、言いましたよお、と舞奈は反論する。
 舞奈と仲のいいテレアポが「言ってるの聞きましたよ」とくすくすと笑う。

 香蓮と紅美佳は孤立した。
 毎日、精神を削られた。
 その日も疲れ果て、よろよろと会社を出た。
 会社を出た直後、雄聖の姿が見えた。
 目をそらして駅に向かう。

「反省したか。俺に逆らうとこうなる」
 声をかけられ、振り返った。
 香蓮はぎゅっと唇を結んだ。
 彼が舞奈を使って嫌がらせをしているのだろうか。
 謝ればいいのだろうか。
 悪くもないのに謝るなんて屈辱だ。だが、それでやめてくれるなら。ひいては澄玲に迷惑がかからないのなら。

「私が悪かったわ。ごめんなさい。だからもう嫌がらせはやめて」
「わかったならいいんだ」
 直後、雄聖は香蓮の腰を抱く。
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