身代わりから始まる恋  〜白い悪魔の正体は甘くて優しい白馬の王子!?〜
「なにするの!」
 とっさに振りほどくが、その手をつかまれる。
「俺は別れてないって言っただろ」
 香蓮は顔をひきつらせた。

「私、あの人とつきあってるの」
 とっさに言っていた。彼が、警察官とつきあってるなら雄聖が引き下がるだろうと言ってくれていたから。
「すぐに別れろよ。俺がいるんだから」
 雄聖の目がぎらぎらと香蓮を見る。

 そのまなざしには決して愛は存在しない。
 マウントだ、と香蓮は青ざめた。オスとして澄玲にマウントをとりたいがために、香蓮を捕まえようとしている。

「……できない」
「あの男の不正を……犯罪を見逃したことを警察に言うぞ。それともネットで呟こうか。すぐに炎上だろうなあ。警察の不祥事はみんな大好きだからな」
 香蓮は絶句した。

 雄聖のSNSはフォロワーが多い。ちょっとした呟きでもすぐに反応があるだろう。
 炎上したら澄玲はどうなってしまうのだろう。せっかく就いた憧れの仕事なのに。
「あなたとはつきあえない。だけど彼とは別れる。これでいいでしょ」
「とりあえずはそれで良しとしてやるよ」
 とりあえず。ということは、この先もなにかする気なのか。

「俺の目の前で別れろよ」
 言われて、香蓮はしぶしぶスマホを取り出す。
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