身代わりから始まる恋  〜白い悪魔の正体は甘くて優しい白馬の王子!?〜
 怖い、と香蓮はおののいた。警察官は独特の威圧感があるが、この人は背が高いせいか迫力が増している気がする。白バイ隊員は拳銃のケース(ホルスター)も白いんだ、と他人事のように思った。

「ドライバーは男性でしたね」
 白バイ隊員は断定するようにたずねる。
 やはりバレている。身代わりなんて不可能だ。

「こいつです」
 雄聖が香蓮を指さす。
 香蓮は答えられなくてうつむいた。

「嘘はいけませんよ」
 白バイ隊員が言う。
「ほんとですって。車もこの女のやつで」

 香蓮はバッグの紐をぎゅっと握った。彼氏なのに、と恨めしく思う。恋人なら罪をかぶって当たり前だろうか。だが、それは犯罪ではないのか。いや、自主的に罪をかぶろうと思えない自分の愛情が足りないのか。

「車検証を見せてください」
「見せる必要ないよな」
 白バイ隊員は顔を雄聖に向けた。
「車の所有者は彼女ですよね。あなたが答えなくてけっこうです」
 雄聖はぐっと言葉に詰まる。

「正直に言うべきですよ」
 白バイ隊員が言う。その声は厳しくて、決して不正を許さないだろうと確信した。
 香蓮はドアが開けっぱなしの助手席側にまわった。

「おい!」
 雄聖を無視してダッシュボードから車検証の入ったケースを出して白バイ隊員に手渡す。
「なにするんだよ!」
 雄聖の怒声に、香蓮は地面を見つめた。
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