身代わりから始まる恋  〜白い悪魔の正体は甘くて優しい白馬の王子!?〜
「先頭を走りますのは小隊長の白葉澄玲隊員。続きまして……」
 澄玲の名前を聞いた瞬間、香蓮の心臓がぎゅっと痛んだ。小隊長だったなんて知らなかった。先頭ということは、彼が一番の実力者ということだろう。

「まずは慣熟走行を行います。これは人とバイクの準備運動で、車両の確認と同時に、体をバイクにならす目的があります。出向(しゅっこう)の前には必ず行われます」
 出向とは、出動のことだ。

 八台のバイクが目の前を通り過ぎて行く。
 しばらくして、白バイが列をなして停車した。
「最初はドリル走行です。白バイが蛇のようにつながって走ります」
 警察音楽隊が西部警察のテーマを奏でる。

 澄玲が出発し、次々とバイクが続いた。パイロンを蛇行しながらすりぬけ、本当に蛇のようだ。あれだけ車体を傾けているのに地面にこすらないのもすごい。

 並び直した隊員たちは一台ずつ出発した。蛇行を開始するがさきほどとは違い、すべての隊員が、右、左、と同じタイミングでバイクを操作する。乱れのない動きに観客から拍手がわいた。

 しばらくの演舞のあと、音楽の終了とともに七台のバイクがはけた。
「続きまして、白葉澄玲小隊長によるデモンストレーションです。白葉小隊長は大学生のときにトライアルの全国大会で優勝したことがあり、昨年の全国白バイ安全運転競技会では個人の部で優勝した実力者です」

「トライアルって、なに?」
 近くにいた子供が父親に話しかける声が聞こえた。
「小型のバイクで岩場とかを足を付けずに走っていく競技。難しいんだよ」

 科捜研の女のオープニングで使われているスリリングな曲がかかる。
 澄玲は前輪を浮かせてウィリーさせ、パイロンの間を抜ける。
 香蓮は息をのみ、はらはらと彼を見守る。
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