身代わりから始まる恋  〜白い悪魔の正体は甘くて優しい白馬の王子!?〜
「続きまして、小道路転回です」
 アナウンスの直後、澄玲は前輪を下ろした。パイロンで挟まれた一車線分の隙間で片足をつき、バイクを振り回すようにしてくるりと反転させる。

「かっこいい!」
 近くにいた子供が歓声をあげた。
「続きまして、ジャックナイフです」
 前輪を下ろしたバイクが急加速したあと急制動をかけ、後輪が浮いた。息をのむ観客の前で、バイクは何事もなかったかのように後輪を落として止まる。

「次は、ストッピーです」
 同じように急加速し、今度は後輪を浮かせたまましばらく走ってバイクを下ろす。続けざまにまたストッピーをして、今度は後輪を浮かせたまま百八十度ターンして見せた。

 観客は喜んで拍手を送る。
 香蓮もまた夢中で拍手を送った。
「白バイは災害時、先行して現場に駆け付けることがあります。それに備えて悪路走行の訓練も行っています」
 アナウンスが説明する。
 だからこんなに多彩な運転をできるのだろうか。香蓮は感心してしまった。

「あんなの練習すれば誰だってできる」
 雄聖の悪態が聞こえたが、香蓮は応じなかった。
 澄玲は手放しで八の字走行するなど次々と技を決め、観客は歓喜した。

 訓練場の中央に、直角三角形を思わせるスロープが設置された。
 まさか。
 そう思う間に、澄玲は白バイをスタートさせ、急加速する。
 スロープを駆けあがり、そのまま高くジャンプする。
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