身代わりから始まる恋  〜白い悪魔の正体は甘くて優しい白馬の王子!?〜
 香蓮は悲鳴を上げそうになり、口を押えた。
 無事に着地を決め、澄玲は拳を突きあげる。
 観客からは大歓声と共に拍手が響いた。
 


 最後は八台の白バイが再集結した。相棒のテーマをBGMに、左右から絡み合うようにスラロームしたり、前後からスレスレですり抜けたりなど、迫力ある走行を見せた。

 デモ走行は拍手と歓声に包まれ、幕を閉じた。
「つまんねー。失敗すればよかったのに」
 香蓮は顔をしかめて雄聖を見た。

「なんで俺が来てやったと思ってるんだよ。お前と一緒にいるのを見たら動揺してミスするだろうと思ったんだよ」
 香蓮は絶句した。そんな理由だなんて。

 だが、彼は警察官だからこんなことで動揺しないように訓練しているかもしれない。もしかすると、自分のことなど見切っているから動揺しないのだろうか。

 不毛な思い付きに、内心で自分を嘲笑した。
 別れると宣言したのは自分だ。その分際で気にかけてほしいなど、図々しいにもほどがある。



 デモ走行の終了後、その場で白バイの展示と交流会が行われた。警察音楽隊は片付けを始めている。
 帰ろうとする香蓮に、声をかける女性がいた。
「いたいた、香蓮!」
 紅美佳だった。
 たたっと駆け寄り、隣に立つ雄聖に驚く。

「別れたんだよね?」
「うん」
「別れてない」
 香蓮と雄聖が同時に答える。

「ストーカーだ、ストーカー」
 紅美佳が言う。
< 44 / 57 >

この作品をシェア

pagetop