身代わりから始まる恋  〜白い悪魔の正体は甘くて優しい白馬の王子!?〜
「この車、あなたのですね。使用者も同じだ」
 白バイ隊員に言われ、雄聖は口をへの字に曲げる。
「さっきはこいつが運転してたんだ!」

 白バイ隊員は呆れたようにヘルメット横のカメラを示した。
「録画されてますよ。免許証、出してください」
「くそ!」
 雄聖は忌々し気に吐き捨て、財布から免許証を出した。

 白バイ隊員はそれをあずかり、白バイの後ろに取り付けられたパニアケースから書類を取り出す。
 通常なら交通携帯端末TAPに免許証をかざし、必要項目を入力してプリントアウトする。が、それができるのは青切符までだ。

「曽田雄聖さん、三十六キロオーバーです」
 白バイ隊員は赤切符を切る。これは反則金ではすまない。検察に送致され、罰金刑になる。法的には前科がつくことになる。

 一発免停だ、と香蓮は気まずい気持ちで雄聖を見た。自分が同乗しているときにこんなことになるなんて。

「後日、通知の期日に指定の場所に出頭してください」
「なんで俺なんだよ! ほかにも車はいただろ!」
 雄聖が罵る。
 違反したからじゃない、と思うが、香蓮はそれを言えない。

 手続きを終えると、雄聖はぎりっと香蓮をにらんだ。
「お前のせいだからな」
「は!?」
 香蓮は唖然として彼を見た。
 彼はさっさと車に乗り込むと急発進させた。
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