身代わりから始まる恋  〜白い悪魔の正体は甘くて優しい白馬の王子!?〜
「待って!」
 香蓮はとっさに追いかけようとする。
「危ない!」
 白バイ隊員がとっさに香蓮を抱き留める。
 その横を、後ろから来た車がすごい勢いで走り抜けた。

 車にひかれかけたことより、置いて行かれたことがショックだった。足から力がぬけてよろける体を、白バイ隊員がしっかりと支える。

「ひとまずこちらへ」
「でも……」
 言いかけて、はっと気が付く。抱き締められるようにして立っている自分に。

「す、すみません!」
 慌てて彼から離れる。羞恥で顔が赤くなった。
「こんなところに置き去りとは。被害届を出しますか?」
「被害届けなんて」
 急なことに、判断が追いつかない。

「届けはあとでも出せますよ。あの人は彼氏さん?」
「そうです」
 しょんぼりと答える。
「余計なお世話かもしれませんが……おつきあいは考え直したほうがいいのでは」
「そうですね」
 そう答えることしかできなかった。

「どうやって帰りますか」
 聞かれて、香蓮は返答に困る。
 歩道もないバイパスの待避所から、どうやって帰ればいいのか。
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