身代わりから始まる恋  〜白い悪魔の正体は甘くて優しい白馬の王子!?〜
「バイパスは歩行禁止です。タクシーを呼びますか?」
「そうします」
 香蓮はため息をついた。スマホでタクシーを呼び、そのまま待避所で待つ。

「危ないですから一緒に待ちますよ」
 その申し出が、なんだかいたたまれない。
「一人で大丈夫です」
「市民の安全を守るのが仕事なので」
 隊員は白バイ後部の赤色灯のステーを手で伸ばした。
 あれって伸びるんだ、と香蓮は少し驚いた。

 彼は香蓮の隣に立つ。悪魔とも呼ばれた人と二人きりになるなんて、さきほどまでは予想もしていなかった。
 通り過ぎる車の人に自分が捕まったと思われそうで嫌だ。だが、隠れる場所もない。

「置き去りは記録しておきます。身分証を拝見しても?」
「はい」
 ますます捕まった人みたいだ、とうんざりしながら免許証を出した。土日に母に頼まれてスーパーに行くときくらいしか運転しない。

「兎山香蓮さん?」
 隊員が驚いたように言う。
 香蓮が首をかしげると、彼はヘルメットとサングラスをとった。

 精悍な顔立ちが現れ、香蓮の胸がどきっと鳴った。目がきりっとして髪は短く、それがさらに彼の男らしさを強調しているようだ。ともすれば強面と思われそうな彼の顔は今、笑みにほころんでいる。

「俺だよ、白葉澄玲(はくばすみれ)!」
「白葉くん!?」
 香蓮が驚くと、澄玲がにこっと笑った。
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