陰キャな凄腕プログラマーくんの視線が気になって仕事になりません!
「それで、海堂くんは一体、何がしたかったんですか?」
私は腕組みをしながら、少し怒ったように彼を問い詰めた。
「まず、順番に説明しますね。今日のお昼以降のことですが、加藤さんの企てていることが判明したので、それを阻止し、ついでに犯行現場の証拠もしっかり掴みました」
「彼女の企んでいること?」
首を傾げながら聞いた。
「ええ、うちの会社のパソコンは全て監視ソフトが入っていますよね。実は、以前から監視をしていた人事の者から連絡があって、パソコンの私的使用をしている可能性の高い人がいると聞かされていました。その人の調査をしている最中に、偶然にもその人がその企みに関することを検索していたみたいです……」
「その内容が内容なだけに、すぐにうちに連絡が入ったんですよ」
「どういうことですか?」
「彼女はうちの今開発中のアプリのソースコードを一般にばら撒く手段を探していました」
「でも、そんなことしたら……」
「お察しの通り、そのコードが公になれば、それを悪用する者が出る。特に課金関連のものが危ないです。彼女はそれをした上で、全ての罪を広瀬さんになすり付けるために、広瀬さんのパソコンを使おうとしました」
それで彼女は私が帰るのを待っていたのだと、納得がついた。
「でもご安心ください。予めダミーのアプリのソースコードにすり替えましたし、彼女が広瀬さんのパソコンを無断で使用して、ダミーコードを拡散した動画もしっかり撮らせていただきました」
「私のために、そこまでしていたんですか。本当にありがとうございます……あ、あの……あのキスはどういう意味だったんでしょうか?」
その答えを知りたいと思う気持ちと同じぐらいに、知るのが怖かった。これは全て自分の勘違いで、一人で勝手に舞い上がって、それこそ海堂の言う"恋愛にうつつを抜かしている"女なのかもしれない。その不安をかき消して欲しかった。
「加藤さんには、少し厳しい現実を見せつける必要がありました。前々から、加藤さんが僕に寄せている好意には気づいていましたが、基本的に女性に興味を示さない僕だから多少諦めは付いていたのでしょう……ですが、どういうわけか、あなたを急にライバル視し始めたようで、あえて僕に面白い噂話を吹き込んできたんですよ」
自分の噂話は気になるけど、聞きたくないのが本音だ。聞いてしまって立ち直れる自信は、今の私にはないのだから。
「聞かないんですか?僕としては、言いたくてうずうずしているくらいなんですけどね」
「えっ?悪い話ではないんですか?」
海堂は目を細め、口元には僅かな笑みを湛えていた。
「僕に取っては、全く。……広瀬さんが僕にゾッコンだと言ってきたんですよ。女性を毛嫌いでもしてると思ったのでしょうけど、満更でもない僕を見て結構焦っているように見えましたね。僕は半信半疑でしたが、気づけば広瀬さんを目で追っていることが多くて……」
「……」
私たちは、目を重ね合わせるようにしばらく何も言わないまま見つめあった。
今日、強く自覚してしまった海堂への気持ちにきっと偽りはない。海堂も、「好き」という言葉こそは使ってないが、彼の言動全てを辿れば、そこには共通している想いがあるようで。
私はそっと海堂の方に手を差し出し、「今日はもう帰りましょう」と言った。
海堂は歩き始めた私の横に馴染んだ格好ですっと私の手を取り、指を絡めてきた。
私は腕組みをしながら、少し怒ったように彼を問い詰めた。
「まず、順番に説明しますね。今日のお昼以降のことですが、加藤さんの企てていることが判明したので、それを阻止し、ついでに犯行現場の証拠もしっかり掴みました」
「彼女の企んでいること?」
首を傾げながら聞いた。
「ええ、うちの会社のパソコンは全て監視ソフトが入っていますよね。実は、以前から監視をしていた人事の者から連絡があって、パソコンの私的使用をしている可能性の高い人がいると聞かされていました。その人の調査をしている最中に、偶然にもその人がその企みに関することを検索していたみたいです……」
「その内容が内容なだけに、すぐにうちに連絡が入ったんですよ」
「どういうことですか?」
「彼女はうちの今開発中のアプリのソースコードを一般にばら撒く手段を探していました」
「でも、そんなことしたら……」
「お察しの通り、そのコードが公になれば、それを悪用する者が出る。特に課金関連のものが危ないです。彼女はそれをした上で、全ての罪を広瀬さんになすり付けるために、広瀬さんのパソコンを使おうとしました」
それで彼女は私が帰るのを待っていたのだと、納得がついた。
「でもご安心ください。予めダミーのアプリのソースコードにすり替えましたし、彼女が広瀬さんのパソコンを無断で使用して、ダミーコードを拡散した動画もしっかり撮らせていただきました」
「私のために、そこまでしていたんですか。本当にありがとうございます……あ、あの……あのキスはどういう意味だったんでしょうか?」
その答えを知りたいと思う気持ちと同じぐらいに、知るのが怖かった。これは全て自分の勘違いで、一人で勝手に舞い上がって、それこそ海堂の言う"恋愛にうつつを抜かしている"女なのかもしれない。その不安をかき消して欲しかった。
「加藤さんには、少し厳しい現実を見せつける必要がありました。前々から、加藤さんが僕に寄せている好意には気づいていましたが、基本的に女性に興味を示さない僕だから多少諦めは付いていたのでしょう……ですが、どういうわけか、あなたを急にライバル視し始めたようで、あえて僕に面白い噂話を吹き込んできたんですよ」
自分の噂話は気になるけど、聞きたくないのが本音だ。聞いてしまって立ち直れる自信は、今の私にはないのだから。
「聞かないんですか?僕としては、言いたくてうずうずしているくらいなんですけどね」
「えっ?悪い話ではないんですか?」
海堂は目を細め、口元には僅かな笑みを湛えていた。
「僕に取っては、全く。……広瀬さんが僕にゾッコンだと言ってきたんですよ。女性を毛嫌いでもしてると思ったのでしょうけど、満更でもない僕を見て結構焦っているように見えましたね。僕は半信半疑でしたが、気づけば広瀬さんを目で追っていることが多くて……」
「……」
私たちは、目を重ね合わせるようにしばらく何も言わないまま見つめあった。
今日、強く自覚してしまった海堂への気持ちにきっと偽りはない。海堂も、「好き」という言葉こそは使ってないが、彼の言動全てを辿れば、そこには共通している想いがあるようで。
私はそっと海堂の方に手を差し出し、「今日はもう帰りましょう」と言った。
海堂は歩き始めた私の横に馴染んだ格好ですっと私の手を取り、指を絡めてきた。