陰キャな凄腕プログラマーくんの視線が気になって仕事になりません！

彼の冷たい眼差し

　私のデスクの向かい側に座る彼は、目の前の大きい画面を反射した眼鏡越しにパソコンを凝視し、リズミカルにキーボードを打っていた。

　パソコンの画面を２つ隔てて向かい合うように座っているため、ふとした瞬間、画面の上から覗く、黒曜石のような摩訶不思議な引力を持つ彼の瞳と視線がぶつかることがある。

　その度にお互い目線を素早く逸らし、私は何事もなかったかのように仕事に勤しむのであった——あの日までは……。

　あの日を境に、彼の双眸は私を執拗に捕らえ、何かを言うでもなく、心弱い乙女のハートを掻き乱すような冷たく、鋭い眼差しで私を射抜く。

　その視線を背中に感じる度、視界の端に彼が映り込む度、私は絶対に視線を合わせまいと躍起になる。

　そうでもしなければ、この人だけは絶対に好きにならないという決意がぐらぐらと揺らいでしまう予感がしていたから……。