目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
◇104 久しぶりの……
ルセロ侯爵令嬢方とのお茶会会場から出て自分の馬車に乗ると、途端に力が抜けてドサッと椅子に座ってしまった。はぁ、こなきゃよかったかな。いや、でもビシッと言っちゃったほうが良かったのかもしれない。
「あの、お嬢様……」
「……マリア、私、ようかんが食べたい」
「は、はい! すぐにご用意いたします!!」
はぁぁぁぁ、疲れた……だから行きたくなかったんだ。全く……もうルセロ嬢からの招待状は全部断ろう。あと今日いた他の人達のも。
……会いたい、なぁ……
「……あれっ?」
今はお昼後。もう【なかむら】は昼営業終わりの時間だけど、きっと今日もお客さんでいっぱいでお疲れだと思うから、お土産だけにして帰ろうかな、と思いようかんをお願いしたんだけど……見えてきたお店の前には、人が集まっていて。
どうなっているのかは分からないんだけど、列になっているわけではないらしい。何か、言い合い?
「……お腹空いちゃった」
「畏まりました」
お店の前で、馬車を停めてもらい降りた。お店の前では、ナオさんがいて取り囲むように貴族の方々が立っていた。
「伯爵家後継者である私を立たせるつもりか」
「あら、私は婚約者が侯爵家の嫡男よ? だったら私を先に店に入れるのが当たり前でしょ?」
「誠に申し訳ございません。まだ席が空いておりませんので、もう少々お待ちいただけないでしょうか」
あぁ、成程。そういう事か。もう営業が終わるころなのにまだやってるって事はこの人達が原因って事ね。
「こんにちは、ナオさん」
「あっ! アヤメ嬢!」
人だかりの隙間から覗いてみたんだけど、私の声でナオさんが見つけてくれた。お疲れのようだ。
「まだ食事は出来るかしら」
「はい、まだ出来ますよ。いつもありがとうございます」
「いいのいいの。それで、何分待ちかしら?」
「そう、ですね……30分でしょうか。本当に申し訳ありません」
「大丈夫よ。じゃあマリア、並びましょうか」
ナオさんが「アヤメ嬢」と呼んだ瞬間に周りの貴族の方々が、し~ん、と静まってしまった。アヤメ嬢、と言ったらあのアドマンス公爵家のご令嬢では? となる事だろう。それに今有名になっちゃってるし。ここも婚約者が経営してるお店だし。
「最後に並んでいた方はどなたですか?」
「え、あ、はい、私です!」
「いえ違います! 私ですわ! でしたら私とご一緒いたしませんか?」
あぁ、こうなるのか。なるほどなるほど。
ちらりと目が合ったナオさんには、目で、早く戻って、と伝えた。伝わったみたいで、小さく頭を下げて戻っていったのだ。
「前々から来てみたいと思っていたのです。あの料理大国のスフェーン王国の料理をここで楽しめるのですから。ほら、スフェーン王国はここからだと遠いではありませんか、本当に今日来れて良かった」
「サミットの際こちらの店主が会食の料理を作ったとお聞きしましたわ。周りの者達も声を揃えて美味しいと言っていましてね、もう楽しみでしかたありませんでしたわ」
「聞くところによると、こちらの店主はアドマンス嬢のご婚約者様だそうで。アドマンス嬢も見る目がおありですな!」
全然止まらない。何よこのゴマすり。もうゴマすりすぎて粉になっちゃってない?
ちらり、と窓から店内を覗いてみると……うわぁ、中にも貴族様がいらっしゃる。あ、タクミとナナミちゃんだ。貴族様に呼ばれて、何か言われてる? でも、これだと料理作れないじゃない。
「アドマンスご令嬢」
店内から出てきたとある人物。知らない人だ。その人は、私に声をかけてこう言った。
「実は、私達は2人で来ていましてね。よろしければご令嬢もご一緒にいかがでしょう」
「いえ、私は一番最後に来たものですから、順番は守らないと」
「そんな、ご令嬢は身体が弱くいらっしゃいますから外で待つのは大変でしょう?」
「これくらい大丈夫ですよ。それにお二人での楽しいお食事を邪魔するのもあれですから。なのでお気になさらず」
でも、とは言っているけれどもう満面の笑みで返したら店内に戻っていった。はぁ、知らない人達と食事なんてたまったもんじゃない。
「お待たせしました! 次の方どうぞ!」
やぁっと席が空いたようだ。中々中の人達は帰りたがらないみたいね。
「アドマンス嬢、よろしければ私と一緒に……」
「ごめんなさい、今日はこの者達と一緒に食事をしようと約束していますので」
「えっ」
この者達、とは私と一緒にいるマリアとジルベルトだ。普通、貴族と使用人は同じ席には座らない。
けれど私は何度も何度もマリア達とここで食事をしている。だって一緒に食べる人達がいないし。一人だと他の人達に声をかけられそうだし。だからいつもマリア達と食べているのだ。
「で、ですがこの者達は……」
「今は私に仕えてくださっていますが、どちらも貴族の者達ですよ。それに、私の故郷の味を二人にも味わってもらいたくて今日約束したんです」
「そ、そうですか……」
そう、マリアも子爵令嬢だけど、ジルベルトも実は貴族の血が流れている。子爵家の人なんだって。
だからごめんなさい、とニッコニコで断った。はぁ、なんか疲れたかも。お茶会の事もあったけれど。
それから数分後、やぁっと店内に入ることが出来たのだ。店内の貴族の方々が、私が外で立って待っている事に気が付いて、こりゃマズいと急いだみたい。挨拶をされたけれど、何とかサラッと流すことが出来た。
「はぁ……」
「大丈夫ですか、お嬢様」
「うん、へーき」
さて、何を食べようかしら。と思ったら、あ、来た。
「今日、お茶会じゃなかったか?」
「あはは、お腹空いちゃって」
「そりゃ一大事だ。んじゃ何食いたいですか?」
うん、なんか疲れ吹っ飛んだかもしれない。
「ん~、久しぶりのお茶漬け!」
「お茶漬け? 中身は」
「梅干し!」
「あはは、懐かしいな」
んじゃ付け合わせは任せな、と厨房に戻っていった。……あれ? なんか、凄い見られてない?
そう思っていたら……遠くからこう聞こえてきた。アドマンス嬢が注文したものと同じものを、と。アヤメ嬢だけのスペシャルメニューですよ、とナオさんやリカルドさんが断っていたけれど。なんか、ごめんなさい。
「なるほど、ご令嬢は婚約者様ですからね。特別なものを作って差し上げたい気持ちは理解できますな」
「いやぁ、仲睦まじいようで」
「では、愛情たっぷりの料理という事ですね」
……あの、勝手に色々と言わないでくださいよ。聞いてて恥ずかしいんですけど。
でも、久しぶりに食べたお茶漬けは本当に愛情たっぷりで美味しかった。はぁ、身体に沁みる……
ん、だけど……あれ、なんか、厨房からいつもと違う声がしてくるのはどうしてだろう。いや、私のよく知っている声だ。外にはナオさんとリカルドさん、サンスさん。となると厨房にはタクミとナナミちゃんしかいないはずなのに。じゃあ、一体誰だ。
「あの、お食事中失礼します、ご令嬢」
「え?」
いきなりこの席に来たのは、外で一緒に食事しようと言ってきていた男性だった。
「もしよろしければこの後……」
けど、ぽん、と誰かが男性の肩に手を乗せたのだ。まぁ、誰だか想像はつくけれど。ほらやっぱり、今エプロン付けてる人だ。
彼は、無言の圧力って言うのかな。満面の笑みで男性を見ていて。背も高いから余計ね。対して男性は顔を真っ青にして、失礼しましたと戻っていった。
「お茶漬け、最高です」
「はいはい、そりゃよかった」
ついグッジョブサインを出してしまった。美味しいです。それに助かりました、タクミさん。
そして食べ終わった頃にはようかんが私達の目の前に。他のお客様には、もうそろそろで閉店ですのでと追い出されてしまっていて。あ、追い出されて、は失礼か。
「あぁあ!! やっぱりルークさんだった!!」
「あはは、見つかってしまいましたか、お嬢様」
そう、厨房から聞こえてきた知っている声。それは、アドマンス家の屋敷の料理長ルークさんだった。
「え、転職!?」
「そんなわけありません!! 私の幸せは、お嬢様方に美味しい料理を食べて頂く事ですから!! ただ、私は勉強がてらお手伝いさせていただいているだけです」
「あ、なるほど」
彼は何度も何度もここに来ているから、忙しくしていた事を知っていたみたい。
「最近貴族の客が増えてさぁ、俺とナナミを呼び出しては話し出すから料理が中断されてさぁ。だからルーク料理長が手伝ってくれて助かってるんだ」
「そんな、自分はまだまだですから」
そっか、さっきもタクミ達呼び出されてたし。料理担当の人達が厨房から呼び出しされたらそりゃ大変だもんね。しかも作ってる最中でも問答無用って事でしょ? うわぁ、それやめてほしい。
「もう我儘な貴族共の相手は本当に疲れるわ~」
「アヤメちゃん、さっきは助かったよ~」
「あはは、これくらい何ともないよ」
でも本当にお疲れみたい。皆疲れた顔してるもん。
だから今日は役に立つことが出来て嬉しかったです。もう毎日来ちゃおうかしら。
お茶漬けも美味しかったです、ごちそうさまでした。
「あの、お嬢様……」
「……マリア、私、ようかんが食べたい」
「は、はい! すぐにご用意いたします!!」
はぁぁぁぁ、疲れた……だから行きたくなかったんだ。全く……もうルセロ嬢からの招待状は全部断ろう。あと今日いた他の人達のも。
……会いたい、なぁ……
「……あれっ?」
今はお昼後。もう【なかむら】は昼営業終わりの時間だけど、きっと今日もお客さんでいっぱいでお疲れだと思うから、お土産だけにして帰ろうかな、と思いようかんをお願いしたんだけど……見えてきたお店の前には、人が集まっていて。
どうなっているのかは分からないんだけど、列になっているわけではないらしい。何か、言い合い?
「……お腹空いちゃった」
「畏まりました」
お店の前で、馬車を停めてもらい降りた。お店の前では、ナオさんがいて取り囲むように貴族の方々が立っていた。
「伯爵家後継者である私を立たせるつもりか」
「あら、私は婚約者が侯爵家の嫡男よ? だったら私を先に店に入れるのが当たり前でしょ?」
「誠に申し訳ございません。まだ席が空いておりませんので、もう少々お待ちいただけないでしょうか」
あぁ、成程。そういう事か。もう営業が終わるころなのにまだやってるって事はこの人達が原因って事ね。
「こんにちは、ナオさん」
「あっ! アヤメ嬢!」
人だかりの隙間から覗いてみたんだけど、私の声でナオさんが見つけてくれた。お疲れのようだ。
「まだ食事は出来るかしら」
「はい、まだ出来ますよ。いつもありがとうございます」
「いいのいいの。それで、何分待ちかしら?」
「そう、ですね……30分でしょうか。本当に申し訳ありません」
「大丈夫よ。じゃあマリア、並びましょうか」
ナオさんが「アヤメ嬢」と呼んだ瞬間に周りの貴族の方々が、し~ん、と静まってしまった。アヤメ嬢、と言ったらあのアドマンス公爵家のご令嬢では? となる事だろう。それに今有名になっちゃってるし。ここも婚約者が経営してるお店だし。
「最後に並んでいた方はどなたですか?」
「え、あ、はい、私です!」
「いえ違います! 私ですわ! でしたら私とご一緒いたしませんか?」
あぁ、こうなるのか。なるほどなるほど。
ちらりと目が合ったナオさんには、目で、早く戻って、と伝えた。伝わったみたいで、小さく頭を下げて戻っていったのだ。
「前々から来てみたいと思っていたのです。あの料理大国のスフェーン王国の料理をここで楽しめるのですから。ほら、スフェーン王国はここからだと遠いではありませんか、本当に今日来れて良かった」
「サミットの際こちらの店主が会食の料理を作ったとお聞きしましたわ。周りの者達も声を揃えて美味しいと言っていましてね、もう楽しみでしかたありませんでしたわ」
「聞くところによると、こちらの店主はアドマンス嬢のご婚約者様だそうで。アドマンス嬢も見る目がおありですな!」
全然止まらない。何よこのゴマすり。もうゴマすりすぎて粉になっちゃってない?
ちらり、と窓から店内を覗いてみると……うわぁ、中にも貴族様がいらっしゃる。あ、タクミとナナミちゃんだ。貴族様に呼ばれて、何か言われてる? でも、これだと料理作れないじゃない。
「アドマンスご令嬢」
店内から出てきたとある人物。知らない人だ。その人は、私に声をかけてこう言った。
「実は、私達は2人で来ていましてね。よろしければご令嬢もご一緒にいかがでしょう」
「いえ、私は一番最後に来たものですから、順番は守らないと」
「そんな、ご令嬢は身体が弱くいらっしゃいますから外で待つのは大変でしょう?」
「これくらい大丈夫ですよ。それにお二人での楽しいお食事を邪魔するのもあれですから。なのでお気になさらず」
でも、とは言っているけれどもう満面の笑みで返したら店内に戻っていった。はぁ、知らない人達と食事なんてたまったもんじゃない。
「お待たせしました! 次の方どうぞ!」
やぁっと席が空いたようだ。中々中の人達は帰りたがらないみたいね。
「アドマンス嬢、よろしければ私と一緒に……」
「ごめんなさい、今日はこの者達と一緒に食事をしようと約束していますので」
「えっ」
この者達、とは私と一緒にいるマリアとジルベルトだ。普通、貴族と使用人は同じ席には座らない。
けれど私は何度も何度もマリア達とここで食事をしている。だって一緒に食べる人達がいないし。一人だと他の人達に声をかけられそうだし。だからいつもマリア達と食べているのだ。
「で、ですがこの者達は……」
「今は私に仕えてくださっていますが、どちらも貴族の者達ですよ。それに、私の故郷の味を二人にも味わってもらいたくて今日約束したんです」
「そ、そうですか……」
そう、マリアも子爵令嬢だけど、ジルベルトも実は貴族の血が流れている。子爵家の人なんだって。
だからごめんなさい、とニッコニコで断った。はぁ、なんか疲れたかも。お茶会の事もあったけれど。
それから数分後、やぁっと店内に入ることが出来たのだ。店内の貴族の方々が、私が外で立って待っている事に気が付いて、こりゃマズいと急いだみたい。挨拶をされたけれど、何とかサラッと流すことが出来た。
「はぁ……」
「大丈夫ですか、お嬢様」
「うん、へーき」
さて、何を食べようかしら。と思ったら、あ、来た。
「今日、お茶会じゃなかったか?」
「あはは、お腹空いちゃって」
「そりゃ一大事だ。んじゃ何食いたいですか?」
うん、なんか疲れ吹っ飛んだかもしれない。
「ん~、久しぶりのお茶漬け!」
「お茶漬け? 中身は」
「梅干し!」
「あはは、懐かしいな」
んじゃ付け合わせは任せな、と厨房に戻っていった。……あれ? なんか、凄い見られてない?
そう思っていたら……遠くからこう聞こえてきた。アドマンス嬢が注文したものと同じものを、と。アヤメ嬢だけのスペシャルメニューですよ、とナオさんやリカルドさんが断っていたけれど。なんか、ごめんなさい。
「なるほど、ご令嬢は婚約者様ですからね。特別なものを作って差し上げたい気持ちは理解できますな」
「いやぁ、仲睦まじいようで」
「では、愛情たっぷりの料理という事ですね」
……あの、勝手に色々と言わないでくださいよ。聞いてて恥ずかしいんですけど。
でも、久しぶりに食べたお茶漬けは本当に愛情たっぷりで美味しかった。はぁ、身体に沁みる……
ん、だけど……あれ、なんか、厨房からいつもと違う声がしてくるのはどうしてだろう。いや、私のよく知っている声だ。外にはナオさんとリカルドさん、サンスさん。となると厨房にはタクミとナナミちゃんしかいないはずなのに。じゃあ、一体誰だ。
「あの、お食事中失礼します、ご令嬢」
「え?」
いきなりこの席に来たのは、外で一緒に食事しようと言ってきていた男性だった。
「もしよろしければこの後……」
けど、ぽん、と誰かが男性の肩に手を乗せたのだ。まぁ、誰だか想像はつくけれど。ほらやっぱり、今エプロン付けてる人だ。
彼は、無言の圧力って言うのかな。満面の笑みで男性を見ていて。背も高いから余計ね。対して男性は顔を真っ青にして、失礼しましたと戻っていった。
「お茶漬け、最高です」
「はいはい、そりゃよかった」
ついグッジョブサインを出してしまった。美味しいです。それに助かりました、タクミさん。
そして食べ終わった頃にはようかんが私達の目の前に。他のお客様には、もうそろそろで閉店ですのでと追い出されてしまっていて。あ、追い出されて、は失礼か。
「あぁあ!! やっぱりルークさんだった!!」
「あはは、見つかってしまいましたか、お嬢様」
そう、厨房から聞こえてきた知っている声。それは、アドマンス家の屋敷の料理長ルークさんだった。
「え、転職!?」
「そんなわけありません!! 私の幸せは、お嬢様方に美味しい料理を食べて頂く事ですから!! ただ、私は勉強がてらお手伝いさせていただいているだけです」
「あ、なるほど」
彼は何度も何度もここに来ているから、忙しくしていた事を知っていたみたい。
「最近貴族の客が増えてさぁ、俺とナナミを呼び出しては話し出すから料理が中断されてさぁ。だからルーク料理長が手伝ってくれて助かってるんだ」
「そんな、自分はまだまだですから」
そっか、さっきもタクミ達呼び出されてたし。料理担当の人達が厨房から呼び出しされたらそりゃ大変だもんね。しかも作ってる最中でも問答無用って事でしょ? うわぁ、それやめてほしい。
「もう我儘な貴族共の相手は本当に疲れるわ~」
「アヤメちゃん、さっきは助かったよ~」
「あはは、これくらい何ともないよ」
でも本当にお疲れみたい。皆疲れた顔してるもん。
だから今日は役に立つことが出来て嬉しかったです。もう毎日来ちゃおうかしら。
お茶漬けも美味しかったです、ごちそうさまでした。