目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
◇107 どういう事!?
彼らが王城に呼ばれて昼飯を作るよう仰せつかった日から数日後。遂にその日になってしまった。
とは言っても、私は今馬車の中。洗濯機魔道具の話でラレスティ商会に行って今は帰り。勿論屋敷に、だ。
仕事が忙しいせいもあって、それまで一回も【なかむら】に行けず、仕方なく手紙を送った。昼食の件は大丈夫だった? と。でも……
『大丈夫だから心配しなくていい』
と。その一言だけ。は、なにこれ。と最初は口をぽかんとしてしまった。いやいやいや、何よこの一行。もうちょっと書きましょうよ、ねぇ。これはいくらなんでも酷くないですか。せめて『拝啓』ぐらいは書きましょうよ。
まぁ忙しかったのもあるかもしれないけどさ。余計心配するじゃないですか。
「……えっ」
「えっ!?」
ふと、外を見たら、おかしなものを見てしまった。
今通っている道、ここはよく通る道だ。どうしてか、それは……
「何でやってるの……?」
「さ、さぁ……?」
そう、ここは【なかむら】のある通りだ。
そして、私が今見たのは、何故か【なかむら】ののれんがかかっていてお客さんの列が出来ている場面だった。一緒に乗っていたマリアが急いでこの馬車を停めるよう馬者に伝えていた。
おかしい、だって今日、タクミ達は王城にいるはずだよね!? え、じゃあ、もしかして、昼食は延期になったとか? もしかして、何かあったとか!?
急いで馬車を下りて【なかむら】の列の最後尾に並んだのだ。
「えっ、ア、アドマンス嬢!?」
「あ……ごきげんよう、アドマンス嬢」
いつものことながら、ここに並ぶと貴族の皆さんが私に驚くんだよね。でも私の頭の中はそれどころじゃない。今はお昼時、だからお客さんが沢山いらっしゃる。勿論、貴族の人達が大半だ。
「もしよろしければ、わたくし達とご一緒に……」
「いえ、お構いなく」
「で、ですが……」
「お気遣い感謝いたします。ですが、今日はこの者達と食事をしに来ました、の、で……えっ!?」
ちらり、と窓から店内の様子が視線の中に入った。普通こんな所にいない人が、見えた様な、見えなかったような。
如何いたしました? と声をかけてくれたご令嬢達にはもう苦笑いしか出来なかったのだ。
そして一人、また一人と出ては入って、出ては入ってと繰り返し、ようやく自分達の番がやってきた。
「いらっしゃいませ~、あら! アヤメさんじゃない!」
「あ、はは、お久しぶり、です……」
いや、おかしい、どうしてこんな所にこの人がいらっしゃるんだ。
「あの、ナカムラ夫人、は……」
「あらやだ、お義母様って呼んでくれないのですか?」
「え”っ」
「うふふ、来てくれてありがとうございます」
じゃあお席に案内いたしますね~、と楽しそうに空いている席に案内してくださった。いや、敬語はやめて下さい。
でも、おかしい、本当におかしい。
だって、タクミも、ナナミちゃんも、ナオさんも、リカルドさんも、サンスさんもいないんだけど!?
「君がアヤメさんかな?」
何となく、うん、とってもどこかの誰かさんとそっくりな、若い男性の方が私達の元へやってきた。勿論、【なかむら】の制服だ。ナカムラ夫人もだけどね。
「初めまして、タクミ達の兄のマサオミです」
「え”っ!?」
いやいやいや、待ってください!! え、ど、どういう事でしょうか!?
「さ、何が食べたいですか?」
「え”っ」
「ほら、いつもタクミが作ってくれているって聞きましたよ。〝秘密のメニュー〟でしたっけ? 今日はタクミはいませんが、ウチの妹もいい腕ですから美味しいのを作ってくれますよ」
「え……」
いやいやいや、待て待て待て待て。うん、確かに彼の姿は見えないし声も聞こえない。じゃあ、タクミ達は王城ってこと? でもどうしてナカムラ夫人と長男さんがここ、に……
「……」
何で、厨房からとある人の顔が出てくるんだろう。手、振ってくるんですけど。
ナカムラ夫人の旦那さん、ナカムラ男爵様が、どうして【なかむら】の厨房に……?
やばいな、全く理解出来ない。
「で、どうします?」
「……オムライス、で、お願いします」
「はい、かしこまりました」
そちらのお二人は? とマリアとジルベルトにも聞いていて。そして厨房に戻っていった。
……すんごく良い笑顔。タクミ、あんな感じの笑顔を出す時あるな、そういえば。パーティーとか、いたずら? とかの時しか出さないけど。
あの人が、タクミ達のお兄さんなんだ……
「これ、どういう事?」
「さ、さぁ……?」
長男さんが、さっき妹が作るって言ってたから、末の妹さんもここにいるってことだよね。え、まさかのナカムラ家大集合じゃないですか。
でも、王城の昼食作りに行かなきゃならなくなっちゃったから家族の皆さん呼んだ、とか? いや、でもタクミってそんな性格じゃないよね。もしや、偶然?
何がどうなっているのか全く分からず、店内を見渡した。皆さんとてもご満足顔ですね。
今日のメニューは、あ、ない。巷で流行ってるエバニス料理。まぁ、足りないって言ってたけど。ちょっと残念な気持ちもあるけど、仕方ないよね。
「わ、ぁ……!」
「タクミほどではないけれど、愛情たっぷりでお作りしましたよ~」
私の前に出されたオムライス。わぁお、ケチャップがハートだ。これ、書いたの誰だろう。妹さんだよね、きっと。男爵様、じゃ……ないよね?
さ、さて、お味の方は……美味ぁ♡ 卵もとろとろで最高です!
「は~いデザートですよ~」
「わぁ、ありがとうございます!」
今日のデザートは、プリンです! ん~美味しい! 私、プルプルよりこんな感じの硬い方のプリンが好きなんだよなぁ~! もう幾つでもいけちゃう!
マリアとジルベルトもこのプリンは気に入ったみたい。そんな感じの顔してる。
「今日、このあと何か用事はありますか?」
「え? ありませんよ」
「それはよかったっか、じゃあお話がしたいから隣で待っててくれませんか。あ、でも時間かかるので時間潰ししてきても良いですよ」
「あ、はい、分かりました」
ん~、じゃあどこで時間潰ししようかな。リアさんのお店にでも行ってみる? なんか、隣にいるマリアの目が光ってるし。あ、でもレストリス商会に行ってみるのも良いかも。
お話、私もお話ししたかったから良かった。どうしてこんなことになってるのか、聞かなきゃずぅ~っと悩みっぱなしになってた事だし。
食べ終わったし、並んでる人がいるのにずっと席を独占するのも悪いからとすぐにお店を出たのだった。
レストリス商会に、と思っていたけれど、結局マリアにごねられてリアさんのお店に。まぁたお洋服が増えてしまった。
あ、そろそろいいかな、そう思ってまた【なかむら】に戻った。
タイミングが良かったみたいで、長男さんがのれんを下げる時だった。さ、中にどーぞ、とお店の中に招かれたのだ。
「改めて、初めまして、ナカムラ家長男のマサオミ・ナカムラと、こっちは末の妹のノゾミです」
「初めまして」
「あ、こちらこそ。アヤメ・アドマンスです」
さっきは会わなかったけど、やっぱり皆さんそっくりな顔。末の妹さんは、ナカムラ夫人寄りではあるけれど、日本人顔だ。そしてお二人も黒目に茶髪。
「タク兄、どんな手使ったの?」
「こぉら、やめなさいノゾミ。全く、なんて事言い出すのよ」
「だって、どうやってこんな美人を捕まえるのよ。騙したに決まってるじゃない」
「ノゾミ、そこまでだよ」
ど、どんな手……? 騙した……?
「いいじゃないか、こんな美人さんがノゾミのお義姉さんになってくれるんだから」
「タク兄より私と結婚しますか?」
「えっ」
なんか、妹さん、表情筋動いてないけど凄い事言うな。長男さんは、穏やか系かな?
「あの、タクミさん達は王城ですよね?」
「そうですよ、きっと今目回してるんじゃないかな。だから代わりに僕たちがお店をやっていたんですよ」
「実は何も知らせず私達来ちゃったんです。到着したのがちょうど今朝だったのですが、でもちょうど何か準備している最中で」
あ、なるほど。もしかしてそれは王城に持っていく荷物とか用意していた時かな?
『え、えぇえ!?』
『何で来てるんだよ……!!』
『来ちゃった♡』
『母上!!』
でもこれから王城に行かなくちゃならないと伝えると……
『お店、やらないの?』
『いや、誰がやるのよ』
『……やる? パパ、ママ』
『はぁっ!?』
『いいなぁ、皆で店をか。懐かしいな』
『お邪魔しま~す』
『あっこらっ!!』
『マサ兄、厨房?』
『ホールがいいかな』
『え~、マサ兄の作るご飯好きなのに』
『なら私とやろうか、ノゾミ』
『え~、パパと?』
『ちょぉっと待ったぁ!!』
『勝手に話進めんな!!』
と、いう事だったみたい。そんなすぐに【なかむら】の料理を作れるの? と思ったけれど、男爵様はカーネリアンに滞在中はここにいたらしい。作り方も知っているし味も分かってる。だからこうなってしまったのだとか。
「いやぁ、懐かしかったですよ。昔は首都で食堂を手伝ったものです。先代と先代夫人と弟で食堂を切り盛りしていましたからね」
「私はそこの常連ですよ」
あ、なるほど。ナカムラ夫人が常連客か、ありそうな話かも。でも今日来店されたお客様、今食べている料理を作ったのは男爵様だって事知ったらどういう顔するだろう。あ、妹さんもか。
「今日はタクミ達は色々と大変でしょうから、そちらには後日伺ってもいいですか?」
「あ、はい、伝えておきます」
「都合の良い日をお伝えください、こちらは何時でも構いませんから」
「はい」
と、いう事になった。今更なんだけど、ナカムラ家っていつも連絡なしで来てません?
「な、んで、アヤメがいるんだよ!!」
「え、ママ達本当にお店やったの? 大丈夫だった? 食材木っ端微塵にさせてない? テーブル無事?」
「アリスは剣を抜いていないから安心しなさい」
「あ、はは……」
はい、帰ってきました。タクミ達が。お疲れ様です。
それより、こ、木っ端微塵……?
「何か余計なこと吹き込んでないだろうな」
「余計な事って?」
「ノゾミ、お前はとりあえず黙ってろ」
「ひどーいおにーちゃーん」
それ、棒読みにも程があるのでは……?
「それで、ママ達なんでここに来たの?」
「もう、何でじゃないでしょう。アヤメちゃんとご両親に会いに来たんじゃない。ご挨拶しないでどうするのよ」
「あ、そっか」
「せーっかくウチのやんちゃ坊主がない頭使ってこんなに素敵なお嬢さんを捕まえたのよ?」
「母上、本人ここにいんだけど」
「本当によくやったわね、偉いわタクミ」
「褒めればいいってもんじゃないだろ」
私、ここにいちゃダメな気がするんだけど……いいの?
とりあえず、親子水入らずを邪魔しちゃいけないと思い退散する事にした。
あ、王城での件がどうなったのか聞くの忘れた。でも、どうせ明日会うから明日聞こうかな。早くお母様達に伝えなきゃ。お仕事の都合とかあるしね。
とは言っても、私は今馬車の中。洗濯機魔道具の話でラレスティ商会に行って今は帰り。勿論屋敷に、だ。
仕事が忙しいせいもあって、それまで一回も【なかむら】に行けず、仕方なく手紙を送った。昼食の件は大丈夫だった? と。でも……
『大丈夫だから心配しなくていい』
と。その一言だけ。は、なにこれ。と最初は口をぽかんとしてしまった。いやいやいや、何よこの一行。もうちょっと書きましょうよ、ねぇ。これはいくらなんでも酷くないですか。せめて『拝啓』ぐらいは書きましょうよ。
まぁ忙しかったのもあるかもしれないけどさ。余計心配するじゃないですか。
「……えっ」
「えっ!?」
ふと、外を見たら、おかしなものを見てしまった。
今通っている道、ここはよく通る道だ。どうしてか、それは……
「何でやってるの……?」
「さ、さぁ……?」
そう、ここは【なかむら】のある通りだ。
そして、私が今見たのは、何故か【なかむら】ののれんがかかっていてお客さんの列が出来ている場面だった。一緒に乗っていたマリアが急いでこの馬車を停めるよう馬者に伝えていた。
おかしい、だって今日、タクミ達は王城にいるはずだよね!? え、じゃあ、もしかして、昼食は延期になったとか? もしかして、何かあったとか!?
急いで馬車を下りて【なかむら】の列の最後尾に並んだのだ。
「えっ、ア、アドマンス嬢!?」
「あ……ごきげんよう、アドマンス嬢」
いつものことながら、ここに並ぶと貴族の皆さんが私に驚くんだよね。でも私の頭の中はそれどころじゃない。今はお昼時、だからお客さんが沢山いらっしゃる。勿論、貴族の人達が大半だ。
「もしよろしければ、わたくし達とご一緒に……」
「いえ、お構いなく」
「で、ですが……」
「お気遣い感謝いたします。ですが、今日はこの者達と食事をしに来ました、の、で……えっ!?」
ちらり、と窓から店内の様子が視線の中に入った。普通こんな所にいない人が、見えた様な、見えなかったような。
如何いたしました? と声をかけてくれたご令嬢達にはもう苦笑いしか出来なかったのだ。
そして一人、また一人と出ては入って、出ては入ってと繰り返し、ようやく自分達の番がやってきた。
「いらっしゃいませ~、あら! アヤメさんじゃない!」
「あ、はは、お久しぶり、です……」
いや、おかしい、どうしてこんな所にこの人がいらっしゃるんだ。
「あの、ナカムラ夫人、は……」
「あらやだ、お義母様って呼んでくれないのですか?」
「え”っ」
「うふふ、来てくれてありがとうございます」
じゃあお席に案内いたしますね~、と楽しそうに空いている席に案内してくださった。いや、敬語はやめて下さい。
でも、おかしい、本当におかしい。
だって、タクミも、ナナミちゃんも、ナオさんも、リカルドさんも、サンスさんもいないんだけど!?
「君がアヤメさんかな?」
何となく、うん、とってもどこかの誰かさんとそっくりな、若い男性の方が私達の元へやってきた。勿論、【なかむら】の制服だ。ナカムラ夫人もだけどね。
「初めまして、タクミ達の兄のマサオミです」
「え”っ!?」
いやいやいや、待ってください!! え、ど、どういう事でしょうか!?
「さ、何が食べたいですか?」
「え”っ」
「ほら、いつもタクミが作ってくれているって聞きましたよ。〝秘密のメニュー〟でしたっけ? 今日はタクミはいませんが、ウチの妹もいい腕ですから美味しいのを作ってくれますよ」
「え……」
いやいやいや、待て待て待て待て。うん、確かに彼の姿は見えないし声も聞こえない。じゃあ、タクミ達は王城ってこと? でもどうしてナカムラ夫人と長男さんがここ、に……
「……」
何で、厨房からとある人の顔が出てくるんだろう。手、振ってくるんですけど。
ナカムラ夫人の旦那さん、ナカムラ男爵様が、どうして【なかむら】の厨房に……?
やばいな、全く理解出来ない。
「で、どうします?」
「……オムライス、で、お願いします」
「はい、かしこまりました」
そちらのお二人は? とマリアとジルベルトにも聞いていて。そして厨房に戻っていった。
……すんごく良い笑顔。タクミ、あんな感じの笑顔を出す時あるな、そういえば。パーティーとか、いたずら? とかの時しか出さないけど。
あの人が、タクミ達のお兄さんなんだ……
「これ、どういう事?」
「さ、さぁ……?」
長男さんが、さっき妹が作るって言ってたから、末の妹さんもここにいるってことだよね。え、まさかのナカムラ家大集合じゃないですか。
でも、王城の昼食作りに行かなきゃならなくなっちゃったから家族の皆さん呼んだ、とか? いや、でもタクミってそんな性格じゃないよね。もしや、偶然?
何がどうなっているのか全く分からず、店内を見渡した。皆さんとてもご満足顔ですね。
今日のメニューは、あ、ない。巷で流行ってるエバニス料理。まぁ、足りないって言ってたけど。ちょっと残念な気持ちもあるけど、仕方ないよね。
「わ、ぁ……!」
「タクミほどではないけれど、愛情たっぷりでお作りしましたよ~」
私の前に出されたオムライス。わぁお、ケチャップがハートだ。これ、書いたの誰だろう。妹さんだよね、きっと。男爵様、じゃ……ないよね?
さ、さて、お味の方は……美味ぁ♡ 卵もとろとろで最高です!
「は~いデザートですよ~」
「わぁ、ありがとうございます!」
今日のデザートは、プリンです! ん~美味しい! 私、プルプルよりこんな感じの硬い方のプリンが好きなんだよなぁ~! もう幾つでもいけちゃう!
マリアとジルベルトもこのプリンは気に入ったみたい。そんな感じの顔してる。
「今日、このあと何か用事はありますか?」
「え? ありませんよ」
「それはよかったっか、じゃあお話がしたいから隣で待っててくれませんか。あ、でも時間かかるので時間潰ししてきても良いですよ」
「あ、はい、分かりました」
ん~、じゃあどこで時間潰ししようかな。リアさんのお店にでも行ってみる? なんか、隣にいるマリアの目が光ってるし。あ、でもレストリス商会に行ってみるのも良いかも。
お話、私もお話ししたかったから良かった。どうしてこんなことになってるのか、聞かなきゃずぅ~っと悩みっぱなしになってた事だし。
食べ終わったし、並んでる人がいるのにずっと席を独占するのも悪いからとすぐにお店を出たのだった。
レストリス商会に、と思っていたけれど、結局マリアにごねられてリアさんのお店に。まぁたお洋服が増えてしまった。
あ、そろそろいいかな、そう思ってまた【なかむら】に戻った。
タイミングが良かったみたいで、長男さんがのれんを下げる時だった。さ、中にどーぞ、とお店の中に招かれたのだ。
「改めて、初めまして、ナカムラ家長男のマサオミ・ナカムラと、こっちは末の妹のノゾミです」
「初めまして」
「あ、こちらこそ。アヤメ・アドマンスです」
さっきは会わなかったけど、やっぱり皆さんそっくりな顔。末の妹さんは、ナカムラ夫人寄りではあるけれど、日本人顔だ。そしてお二人も黒目に茶髪。
「タク兄、どんな手使ったの?」
「こぉら、やめなさいノゾミ。全く、なんて事言い出すのよ」
「だって、どうやってこんな美人を捕まえるのよ。騙したに決まってるじゃない」
「ノゾミ、そこまでだよ」
ど、どんな手……? 騙した……?
「いいじゃないか、こんな美人さんがノゾミのお義姉さんになってくれるんだから」
「タク兄より私と結婚しますか?」
「えっ」
なんか、妹さん、表情筋動いてないけど凄い事言うな。長男さんは、穏やか系かな?
「あの、タクミさん達は王城ですよね?」
「そうですよ、きっと今目回してるんじゃないかな。だから代わりに僕たちがお店をやっていたんですよ」
「実は何も知らせず私達来ちゃったんです。到着したのがちょうど今朝だったのですが、でもちょうど何か準備している最中で」
あ、なるほど。もしかしてそれは王城に持っていく荷物とか用意していた時かな?
『え、えぇえ!?』
『何で来てるんだよ……!!』
『来ちゃった♡』
『母上!!』
でもこれから王城に行かなくちゃならないと伝えると……
『お店、やらないの?』
『いや、誰がやるのよ』
『……やる? パパ、ママ』
『はぁっ!?』
『いいなぁ、皆で店をか。懐かしいな』
『お邪魔しま~す』
『あっこらっ!!』
『マサ兄、厨房?』
『ホールがいいかな』
『え~、マサ兄の作るご飯好きなのに』
『なら私とやろうか、ノゾミ』
『え~、パパと?』
『ちょぉっと待ったぁ!!』
『勝手に話進めんな!!』
と、いう事だったみたい。そんなすぐに【なかむら】の料理を作れるの? と思ったけれど、男爵様はカーネリアンに滞在中はここにいたらしい。作り方も知っているし味も分かってる。だからこうなってしまったのだとか。
「いやぁ、懐かしかったですよ。昔は首都で食堂を手伝ったものです。先代と先代夫人と弟で食堂を切り盛りしていましたからね」
「私はそこの常連ですよ」
あ、なるほど。ナカムラ夫人が常連客か、ありそうな話かも。でも今日来店されたお客様、今食べている料理を作ったのは男爵様だって事知ったらどういう顔するだろう。あ、妹さんもか。
「今日はタクミ達は色々と大変でしょうから、そちらには後日伺ってもいいですか?」
「あ、はい、伝えておきます」
「都合の良い日をお伝えください、こちらは何時でも構いませんから」
「はい」
と、いう事になった。今更なんだけど、ナカムラ家っていつも連絡なしで来てません?
「な、んで、アヤメがいるんだよ!!」
「え、ママ達本当にお店やったの? 大丈夫だった? 食材木っ端微塵にさせてない? テーブル無事?」
「アリスは剣を抜いていないから安心しなさい」
「あ、はは……」
はい、帰ってきました。タクミ達が。お疲れ様です。
それより、こ、木っ端微塵……?
「何か余計なこと吹き込んでないだろうな」
「余計な事って?」
「ノゾミ、お前はとりあえず黙ってろ」
「ひどーいおにーちゃーん」
それ、棒読みにも程があるのでは……?
「それで、ママ達なんでここに来たの?」
「もう、何でじゃないでしょう。アヤメちゃんとご両親に会いに来たんじゃない。ご挨拶しないでどうするのよ」
「あ、そっか」
「せーっかくウチのやんちゃ坊主がない頭使ってこんなに素敵なお嬢さんを捕まえたのよ?」
「母上、本人ここにいんだけど」
「本当によくやったわね、偉いわタクミ」
「褒めればいいってもんじゃないだろ」
私、ここにいちゃダメな気がするんだけど……いいの?
とりあえず、親子水入らずを邪魔しちゃいけないと思い退散する事にした。
あ、王城での件がどうなったのか聞くの忘れた。でも、どうせ明日会うから明日聞こうかな。早くお母様達に伝えなきゃ。お仕事の都合とかあるしね。