目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
◇29 肉豆腐
今、私は屋敷の厨房にいる。と言っても入口で覗いている感じだ。うん、良い匂いしてる。美味しそう。
厨房内には、ナナミちゃんとタクミ君がいて。2人を手伝っているここのコックさん達も見える。
実は今日、貴族の方々を呼んでの食事会が開かれる。そして、この二人がいるという事は、今日は和食が振る舞われるという事だ。
気が散っちゃったらダメだよね、と、そーっとその場を後に……
「おーいそこのご令嬢」
……出来ませんでした。バレてました。ごめんなさい。
「ごめんね、邪魔しちゃって」
「ぜーんぜん邪魔になってないよ、じゃあこれ味見お願いしまーす!」
「これ?」
出されたのは、これ、きんぴらだ!
「お味はいかが?」
「最高!」
「そりゃよかった」
わーい! 今日はきんぴらが出るぞー!
じゃあ頑張ってね、とエールを送ってからその場を後にした。
そろそろお客様がいらっしゃるかな、と思いお父様とお母様の元へ。
「お、来たか」
「遅れちゃいました?」
「いいえ、大丈夫よ」
もしかして、厨房に行ってた? と、お母様に聞かれてしまって。お見通しだったみたい。鋭い、お母様。
今日いらっしゃるお客様は、レストリス侯爵様と、ご夫人のリアさん。ルーカス・レスリート宮廷魔術師総括とその息子さんである伯爵子息。あとソウゴ・ナカムラ男爵と、その弟であるユウゴ・ナカムラさんだ。どういう集まりかというと、とある魔道具に関わっている人達だ。
そう、遂に完成したのだ。〝炊飯器〟が!
だから、今日はその炊飯器で炊いたご飯で食事をとご招待したという事だ。
レストリス侯爵様は、その炊飯器の販売を担ってくださる事になった。ナカムラ領の商会【ナカムラ商会】とも手を組み特産品にも販売に力を貸してくれるとの事だ。料理大国の商会と一緒に仕事が出来るなんて光栄だよ、と言って下さったのだ。
今日初めて会う人は、伯爵子息とユウゴ・ナカムラさんかな? 他の方は会った事ある。一体どんな人達なんだろう。
「お久しぶりですね、公爵様、ご夫人、ご令嬢」
「あぁ、今日は来てくれて感謝する」
時間になり今日のお客様の馬車が到着した。最初に到着したのはナカムラ男爵様達だ。ウチの子達は粗相をしでかしたりしてませんか? と笑っていて。今厨房で頑張ってくれていますよ。
「お初にお目にかかります、ユウゴ・ナカムラと申します」
「初めまして、アドマンス家当主のアルバート・アドマンスだ」
弟さんの方は、やっぱりお兄さんの方とそっくりだった。日本人顔で、ブロンドヘアー、黒い瞳。ナナミちゃんにそっくりだ。
「あ、アヤメ・アドマンスです。初めまして」
「あぁ、初めまして。兄から聞いているよ。確かに、先代とそっくりだ」
父上も、君にとても会いたがっていた。と言われて。うん、やっぱり王宮の厨房から逃がしてもらってないって事かな? 仕事を辞めたいって言ってたし。
でも、やめてほしくないくらいお爺様の料理が美味しいって事だよね。食べてみたいなぁ。あ、勿論タクミ君達の作る料理もとっても美味しいよ!
それからレストリス侯爵様達、レスリート伯爵様達もお揃いになった。そのまま、会場となる食堂にご案内した。
着席した所で、今回完成した〝炊飯器〟だが、と話を始めたお父様。レスリート卿に話を振った。
「ナカムラ男爵の皆様、そして本物を食した事のあるアヤメ嬢に試食していただき、OKを頂けました」
レスリート卿がこちらに試作品を持ってきてくれて、何度も何度も試食したのだ。一体何回試食したのか覚えてないかも。でも完成してよかった。
「量産に関してですが、必要となってくる魔石に関してはアドマンス公爵様から提供してくださるとの事です」
「あぁ、ウチの領地には魔石の鉱山がいくつもあってね。国に定期的に献上しているのだが、こちらに回すくらい余裕もある。そして今回、アドマンス家専属として魔道具師を雇う事に決まった」
そう、ついこの前お父様がそう提案してくれた。まぁ、私が原因なのかもしれない、いや、絶対そうだ。いくつも魔道具を依頼しちゃってるから。
「レスリート卿の息子であるロレン・レスリートに入ってもらう事にした」
「えぇ、この炊飯器もこの子に一任したいと考えております。息子は以前、宮廷魔術師の魔道具担当を務めていました。腕は保証します」
王宮魔術師団を辞めてアドマンス家の専属魔道具師になるだなんて、って思ったけれど……いや、さすがレスリート卿の息子だと思ったよ。
だって、本人にそう聞いたらもう話が止まらなくて。私の依頼する魔道具がどれもこれも素晴らしいものばかりで~って。いや、これは地球にあったものなんだけどな、と言っても、ですが、ってまた話が止まらなくなっちゃって。
レスリート卿には沢山お願いしちゃって、本来のお仕事とで負担がかかってるから今回息子さんが、って思ってたんだけどそうじゃないらしくって。これは彼が自分から言い出した事なのだとか。
だから、もし何かまた作ってほしいものがあれば息子だけじゃなくて私にも作らせてくださいってだいぶ言われてしまった。
「我々の領地でもこの話で持ち切りでしてね、もし購入出来るようでしたらこちらでも買い取らせていただけないでしょうか」
「国境を挟んでしまいますから、税金がかかってしまいます。ですが、お米を提供していただいているわけですので、格安で取引きさせてください」
「ありがたいです、よろしくお願いします」
話もまとまり、あとは国王陛下にご報告するだけ。でもこれは、発案者は私であってもアドマンス家とレスリート伯爵家、ナカムラ男爵家との共同事業であるので私は行かない事となった。良かった良かった。またあの王宮に行く羽目になるのかと思っていたけれど、だいぶ安心だ。
さ、食事にしようか。とお父様がメイドさん達に合図をした。
それからすぐに食事が運ばれてきて。しかも、カトラリーは私達、ナカムラ家の方々はお箸。レストリス侯爵様方とレスリート伯爵様方はナイフとフォークだ。
合わせたほうが良いのかなって思ったけれど、別にいいらしい。というか、お箸とはどういうものかを見てみたいというレストリス侯爵様達からのご要望でもある。
出てきたのは、ご飯にお味噌汁に、小鉢が3つ! その中にはちゃんときんぴらもあって。
そして、今回のメインは……これは肉豆腐ね! ん~良い匂い!
と、思ったら他にも出てきて。あれ、またご飯? あ、炊き込みご飯! さっき出てきたご飯結構少ないなって思ってたら、食べ比べという事か! あ、あとこれは混ぜご飯ね!
「ほぉ、これは?」
「こちらは普通に炊いたご飯、こちらは炊き込みご飯、こちらは混ぜご飯です」
「米と一緒に食材を入れて炊くものと、炊けた米の中に食材を入れて混ぜるものとなります」
令嬢はご存じですか? と聞かれて、知ってます! と答えた。お母様に、ふふっと笑われてしまったけれど。あ、早く食べたいのバレちゃった?
ではいただこうか、と、いただきますと声を揃えた。知らなかったらしいレストリス侯爵様達とレスリート伯爵様達も、笑って同じようにしてくださった。食文化の違い、という事だ。
あぁ、美味しい……炊き込みご飯なんて最高でしょ。しかも肉豆腐! ん~~~! 美味し~~~!!!
とにかく、幸せな時間だった。
食べた事のなかった方々も、大絶賛していて。これは店に通ったほうがいいなとまで。
とっても美味しい料理に皆さんほっぺたが落っこちちゃいそうになってて。とっても楽しい食事の時間となったのだ。
「アヤメ嬢」
「あ、レストリス侯爵様」
「今日は美味しい食事会に誘ってくれてありがとう。とても美味しかったよ。それで、新しい事業はどんな感じかな?」
「そうですね……何とか間に合うかな? といったところです」
「そうか、順調なようで安心したよ。それで、提案したいのだがいいだろうか」
「提案、ですか」
「あぁ、アヤメ嬢に新しいレターセットを作って欲しいと思ってね」
あ、新しい、レターセット、ですか?
「切手の試作品を見せてもらった時、思いついたんだ。君なら、きっと素敵なレターセットをデザインしてくれると思ってね」
どうだい? と聞かれてしまった。新しいレターセットかぁ。
確かに、今のレターセットは以前ラル夫人に見せていただいたものしかなかった。
でも地球では、数え切れないほどたくさんのレターセットがあった。可愛かったりシンプルだったり、カッコよかったりと、相手のことを考えてデザインを選び送れたのだ。
ならこちらでも、たくさんのレターセットがあってもいいと思う。
「分かりました、検討させてください」
「そうか、よかった。期待しているよ」
新しいレターセット、私らしいものを作ってみたいな。どんなのがいいかな。ふふ、楽しみ。
「お疲れさまで~す?」
と、厨房を覗いてみた。あ、本当にお疲れだった。厨房の椅子に座ってる。力使い果たしたって感じが見て取れる。
「あ、アヤメちゃん!」
「お疲れさま! 美味しかったよ!」
「ほんと? 良かったぁ~!」
本当に美味しかった。皆さん大絶賛してたもん。お料理上手、という言葉では表せないくらい凄い人達。そして、きっと料理が好きなんだ。それじゃなきゃ、ここまで美味しい料理は作れないと思う。
「ナカムラ男爵様達、お父様とお話が終わったらこっち来るって」
「え、マジ?」
「逃げたほうがいい?」
「え?」
二人のお父様と叔父様でしょ? どうして逃げるの?
「会った瞬間お見合い話持ってこられる」
「えっ」
「結婚結婚うるさいのよ~」
なるほど……
ま、まぁとにかく、今回の食事会は成功に終わりました。ちゃんちゃん。
厨房内には、ナナミちゃんとタクミ君がいて。2人を手伝っているここのコックさん達も見える。
実は今日、貴族の方々を呼んでの食事会が開かれる。そして、この二人がいるという事は、今日は和食が振る舞われるという事だ。
気が散っちゃったらダメだよね、と、そーっとその場を後に……
「おーいそこのご令嬢」
……出来ませんでした。バレてました。ごめんなさい。
「ごめんね、邪魔しちゃって」
「ぜーんぜん邪魔になってないよ、じゃあこれ味見お願いしまーす!」
「これ?」
出されたのは、これ、きんぴらだ!
「お味はいかが?」
「最高!」
「そりゃよかった」
わーい! 今日はきんぴらが出るぞー!
じゃあ頑張ってね、とエールを送ってからその場を後にした。
そろそろお客様がいらっしゃるかな、と思いお父様とお母様の元へ。
「お、来たか」
「遅れちゃいました?」
「いいえ、大丈夫よ」
もしかして、厨房に行ってた? と、お母様に聞かれてしまって。お見通しだったみたい。鋭い、お母様。
今日いらっしゃるお客様は、レストリス侯爵様と、ご夫人のリアさん。ルーカス・レスリート宮廷魔術師総括とその息子さんである伯爵子息。あとソウゴ・ナカムラ男爵と、その弟であるユウゴ・ナカムラさんだ。どういう集まりかというと、とある魔道具に関わっている人達だ。
そう、遂に完成したのだ。〝炊飯器〟が!
だから、今日はその炊飯器で炊いたご飯で食事をとご招待したという事だ。
レストリス侯爵様は、その炊飯器の販売を担ってくださる事になった。ナカムラ領の商会【ナカムラ商会】とも手を組み特産品にも販売に力を貸してくれるとの事だ。料理大国の商会と一緒に仕事が出来るなんて光栄だよ、と言って下さったのだ。
今日初めて会う人は、伯爵子息とユウゴ・ナカムラさんかな? 他の方は会った事ある。一体どんな人達なんだろう。
「お久しぶりですね、公爵様、ご夫人、ご令嬢」
「あぁ、今日は来てくれて感謝する」
時間になり今日のお客様の馬車が到着した。最初に到着したのはナカムラ男爵様達だ。ウチの子達は粗相をしでかしたりしてませんか? と笑っていて。今厨房で頑張ってくれていますよ。
「お初にお目にかかります、ユウゴ・ナカムラと申します」
「初めまして、アドマンス家当主のアルバート・アドマンスだ」
弟さんの方は、やっぱりお兄さんの方とそっくりだった。日本人顔で、ブロンドヘアー、黒い瞳。ナナミちゃんにそっくりだ。
「あ、アヤメ・アドマンスです。初めまして」
「あぁ、初めまして。兄から聞いているよ。確かに、先代とそっくりだ」
父上も、君にとても会いたがっていた。と言われて。うん、やっぱり王宮の厨房から逃がしてもらってないって事かな? 仕事を辞めたいって言ってたし。
でも、やめてほしくないくらいお爺様の料理が美味しいって事だよね。食べてみたいなぁ。あ、勿論タクミ君達の作る料理もとっても美味しいよ!
それからレストリス侯爵様達、レスリート伯爵様達もお揃いになった。そのまま、会場となる食堂にご案内した。
着席した所で、今回完成した〝炊飯器〟だが、と話を始めたお父様。レスリート卿に話を振った。
「ナカムラ男爵の皆様、そして本物を食した事のあるアヤメ嬢に試食していただき、OKを頂けました」
レスリート卿がこちらに試作品を持ってきてくれて、何度も何度も試食したのだ。一体何回試食したのか覚えてないかも。でも完成してよかった。
「量産に関してですが、必要となってくる魔石に関してはアドマンス公爵様から提供してくださるとの事です」
「あぁ、ウチの領地には魔石の鉱山がいくつもあってね。国に定期的に献上しているのだが、こちらに回すくらい余裕もある。そして今回、アドマンス家専属として魔道具師を雇う事に決まった」
そう、ついこの前お父様がそう提案してくれた。まぁ、私が原因なのかもしれない、いや、絶対そうだ。いくつも魔道具を依頼しちゃってるから。
「レスリート卿の息子であるロレン・レスリートに入ってもらう事にした」
「えぇ、この炊飯器もこの子に一任したいと考えております。息子は以前、宮廷魔術師の魔道具担当を務めていました。腕は保証します」
王宮魔術師団を辞めてアドマンス家の専属魔道具師になるだなんて、って思ったけれど……いや、さすがレスリート卿の息子だと思ったよ。
だって、本人にそう聞いたらもう話が止まらなくて。私の依頼する魔道具がどれもこれも素晴らしいものばかりで~って。いや、これは地球にあったものなんだけどな、と言っても、ですが、ってまた話が止まらなくなっちゃって。
レスリート卿には沢山お願いしちゃって、本来のお仕事とで負担がかかってるから今回息子さんが、って思ってたんだけどそうじゃないらしくって。これは彼が自分から言い出した事なのだとか。
だから、もし何かまた作ってほしいものがあれば息子だけじゃなくて私にも作らせてくださいってだいぶ言われてしまった。
「我々の領地でもこの話で持ち切りでしてね、もし購入出来るようでしたらこちらでも買い取らせていただけないでしょうか」
「国境を挟んでしまいますから、税金がかかってしまいます。ですが、お米を提供していただいているわけですので、格安で取引きさせてください」
「ありがたいです、よろしくお願いします」
話もまとまり、あとは国王陛下にご報告するだけ。でもこれは、発案者は私であってもアドマンス家とレスリート伯爵家、ナカムラ男爵家との共同事業であるので私は行かない事となった。良かった良かった。またあの王宮に行く羽目になるのかと思っていたけれど、だいぶ安心だ。
さ、食事にしようか。とお父様がメイドさん達に合図をした。
それからすぐに食事が運ばれてきて。しかも、カトラリーは私達、ナカムラ家の方々はお箸。レストリス侯爵様方とレスリート伯爵様方はナイフとフォークだ。
合わせたほうが良いのかなって思ったけれど、別にいいらしい。というか、お箸とはどういうものかを見てみたいというレストリス侯爵様達からのご要望でもある。
出てきたのは、ご飯にお味噌汁に、小鉢が3つ! その中にはちゃんときんぴらもあって。
そして、今回のメインは……これは肉豆腐ね! ん~良い匂い!
と、思ったら他にも出てきて。あれ、またご飯? あ、炊き込みご飯! さっき出てきたご飯結構少ないなって思ってたら、食べ比べという事か! あ、あとこれは混ぜご飯ね!
「ほぉ、これは?」
「こちらは普通に炊いたご飯、こちらは炊き込みご飯、こちらは混ぜご飯です」
「米と一緒に食材を入れて炊くものと、炊けた米の中に食材を入れて混ぜるものとなります」
令嬢はご存じですか? と聞かれて、知ってます! と答えた。お母様に、ふふっと笑われてしまったけれど。あ、早く食べたいのバレちゃった?
ではいただこうか、と、いただきますと声を揃えた。知らなかったらしいレストリス侯爵様達とレスリート伯爵様達も、笑って同じようにしてくださった。食文化の違い、という事だ。
あぁ、美味しい……炊き込みご飯なんて最高でしょ。しかも肉豆腐! ん~~~! 美味し~~~!!!
とにかく、幸せな時間だった。
食べた事のなかった方々も、大絶賛していて。これは店に通ったほうがいいなとまで。
とっても美味しい料理に皆さんほっぺたが落っこちちゃいそうになってて。とっても楽しい食事の時間となったのだ。
「アヤメ嬢」
「あ、レストリス侯爵様」
「今日は美味しい食事会に誘ってくれてありがとう。とても美味しかったよ。それで、新しい事業はどんな感じかな?」
「そうですね……何とか間に合うかな? といったところです」
「そうか、順調なようで安心したよ。それで、提案したいのだがいいだろうか」
「提案、ですか」
「あぁ、アヤメ嬢に新しいレターセットを作って欲しいと思ってね」
あ、新しい、レターセット、ですか?
「切手の試作品を見せてもらった時、思いついたんだ。君なら、きっと素敵なレターセットをデザインしてくれると思ってね」
どうだい? と聞かれてしまった。新しいレターセットかぁ。
確かに、今のレターセットは以前ラル夫人に見せていただいたものしかなかった。
でも地球では、数え切れないほどたくさんのレターセットがあった。可愛かったりシンプルだったり、カッコよかったりと、相手のことを考えてデザインを選び送れたのだ。
ならこちらでも、たくさんのレターセットがあってもいいと思う。
「分かりました、検討させてください」
「そうか、よかった。期待しているよ」
新しいレターセット、私らしいものを作ってみたいな。どんなのがいいかな。ふふ、楽しみ。
「お疲れさまで~す?」
と、厨房を覗いてみた。あ、本当にお疲れだった。厨房の椅子に座ってる。力使い果たしたって感じが見て取れる。
「あ、アヤメちゃん!」
「お疲れさま! 美味しかったよ!」
「ほんと? 良かったぁ~!」
本当に美味しかった。皆さん大絶賛してたもん。お料理上手、という言葉では表せないくらい凄い人達。そして、きっと料理が好きなんだ。それじゃなきゃ、ここまで美味しい料理は作れないと思う。
「ナカムラ男爵様達、お父様とお話が終わったらこっち来るって」
「え、マジ?」
「逃げたほうがいい?」
「え?」
二人のお父様と叔父様でしょ? どうして逃げるの?
「会った瞬間お見合い話持ってこられる」
「えっ」
「結婚結婚うるさいのよ~」
なるほど……
ま、まぁとにかく、今回の食事会は成功に終わりました。ちゃんちゃん。