目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

◇33 問題発生

 あれから、【フラワーメール】は大盛況だった。……手紙ではなく、切手とレターセットが。売れる割には届けて欲しい手紙が来なくて。

 あれ、皆さん切手収集家ですか? とつい言ってしまった。

 だって、この前だって今貴族の女性達の間で人気のとある物があるとラル夫人が教えてくださって。それが……本だ。しかも、中身は透明な袋。そう、切手を入れるものだ。

 まぁ、これから書く手紙の為に保存するのは分かるけれど……一体どういった考えでそれを使っているのかは分からない。

 けど、それはすぐに解消された。

 何度も何度も、郵便局の前に王家の家紋がついた馬車が停まるからだ。王家での手紙のやり取りはほぼ毎日行われている。それを聞きつけた貴族の方々が、手紙を
持ってくるようになった。

 でも、毎日毎日お城の方がこちらにわざわざ持ってこなければならなくなるわけだから、私はこうする事にした。

 毎日朝の同じ時間にお手紙を取りに行く事にする、と。これはお城限定という事にして。それなら、毎日こちらに来る手間が省ける。

 その提案に、陛下は喜んでいたそうだ。直接お伝えはしていないからどんな反応だったのかは詳しくは知らないけれど。その代わり、国に納める税金を下げてくださった。

 わぁ、こんなにいいの? と思ったけれど、ありがたくそうさせていただく事にした。

 実は、もう少ししたらポストを設置しようかなと考えている。魔道具で、絶対に配達員にしか開けられないポストを設置してはどうだろうか、とアドマンス家専属魔道具師となってくださったロレン・レスリートさんと話し合っている最中である。

 あ、ロレンとお呼びくださいって本人に言われてるんだけど、恐れ多いんじゃないのだろうかと思ってはいる。でもレスリート伯爵様と被るからって言われてしまったから直さないとね。

 だけど、またまた問題が起ってしまった。

 配達員が、足りない。

 今、募集をかけているのだけれど……その条件が馬に乗れる事。だから中々集まらない。郵便物は、半分以上が郵便局から離れたものばかり。第二首都、第三首都にまで配達に行くには馬が必須だ。

 地球では、郵便屋さんは車かバイクだった。まぁ、思い付きはしたんだけれど……それも問題がありありで、どうしたものかと頭を悩ませている。

 思いついたもの、それは……


「自転車……?」

「は、はい……」


 それだったら、馬に乗れなくても練習さえすれば簡単に乗ることが出来る、ん、だけど……

 一応、絵を描いてみた。我ながら何とも酷い絵だ。恥ずかしい……見せたお父様とお母様はクスクス笑ってるし。


「……実は私、自転車、乗れないんです……」

「えっ」

「ち、小さい頃は乗れたんです! で、でも、大きくなって、自転車に乗る機会が全くなくなったというか、まぁ、はい、そんな、ところ、デス……」


 自転車の構造はこれくらいしか分からないし、そもそもよく知ってる私が乗れないとなると……本当に実現するのかどうか、分からない。あ~もう私の馬鹿馬鹿ぁ~!!

 はっ、キックボード!! じゃ、ダメかぁ……ちょっとは早いと思うけど、自転車よりは全然進めないもんね。電動っていう手もあるけれど、どんな造りになってるのか全く分からないし……やっぱり、自転車かぁ……


「タイヤにハンドルに、ペダルか……ブレーキもあるのか」

「はい……分かります?」

「大体の想像は付いたが、でもバランスを取るのに難しそうだな」

「最初は苦労するんですけど、一度乗れたらもう簡単に乗れちゃうんです」

「ふむ……」


 ……伝わった? 絶対伝わってないよね? 絶対そうだよね!!

 ごめんなさい、配達員の皆さん……私もお手伝いします。お母様に怒られちゃうから、ここの屋敷の近くのだけお届けさせてください。


 と、思っていた数十日後。


「……え」

「どう?」


 お母様に呼ばれ、庭に出て、目の前にあったのは……


「じ、てんしゃ……!?」

「ふふ、そっくり?」

「……お母様って、地球に行った事あるんですか?」

「ん~、残念ながらないわね~♪」


 試しに、ジルベルトが乗ってみたんだけれど……え、簡単に乗りこなしちゃった。騎士だから? 馬に乗ってるから? なんか悔しいのはどうしてだろうか。

 ここの庭師見習いであるカミロさんも、最初は苦戦していたけれど乗れてしまった。……私もやってみようかしら。でもお母様に止められそう。転びそうだし、何日かかるか分からないし。


「これなら馬じゃなくても配達がスムーズに出来るわね。そうねぇ、今の配達員に乗ってもらうのはどうかしら」

「え? 馬ではなくて?」

「そう。きっと知らない乗り物に乗っている配達員を見て、興味を示す人がいるはずだわ」

「なるほど……じゃあ早速、練習してもらいますね」

「えぇ」


 配達員さん達は、最初は驚いていたけれど興味津々で練習をしてくれた。勿論、簡単に乗りこなしてしまったのだけれど。やっぱり悔しい。日本人として。

 あぁあと、交通ルールは馬車や馬と同じ扱いになった。ちゃーんとルールを守りましょうと念押しもしたし、大丈夫だと思う。

 これで、配達員さんが増えるといいなぁ。

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