目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

◇45 出発!

 私は、ナナミちゃん、タクミ君と同じ馬車に乗った。全員一緒の馬車となると窮屈だし男性がタクミ君一人だけだから可哀想だしね。

 因みに二人の今の恰好は洋服です。いつもの和服だと目立つから、だそうだ。やっぱりそういう姿を見ると新鮮に感じるかも。

 外を覗いてみると、首都の門が見えてくる。


「あ、もしかしてアヤメちゃんって首都から出た事ない?」

「あぁ、あるよ。第二首都と第三首都に行った事はあるんだけど……」

「あ、そっか。そっちにも新しく郵便局作ったんだよね」

「そうそう」


 事業を立ち上げたのは私なんだから、現場を見ないとと思ってマリア達と一緒に向かった事がある。でも一回だけだったし、ちゃんとは見れなかったからもう一回視察をするつもりではある。

 これから、第三首都ターザニシアスに行くみたい。そこで宿に泊まってから、スラス伯爵領を通って隣のアドマンス領に。と言ってもアドマンス領地はとっても広いらしくて、領地に入ったとしても屋敷までは遠いから一晩宿を取る事になる。

 だからアドマンス領の屋敷まで4日間かけて行くことになる。


「私達は、スフェーンからここに来るまで大体20日くらいだったから、旅には慣れてるかな。アヤメちゃんは旅行初めてなんでしょ?」

「うん。というより、ここに来る前も全然旅行って行った事ないんだよね」

「じゃあ人生で初めての旅行って事か?」

「うん、そうかも」


 まさかこんな所で旅行が出来るとは思わなかったよ。

 というか、2人の母国まで20日かかるなんて、やっぱり隣じゃないからそれなりには距離があるよね。

 あ、因みに言うと、今回の旅では暑さ対策、体調不良対策はバッチリです。この馬車には冷気魔導具搭載、あと魔道具の日傘にも涼しい機能が搭載されている。

 そして何より、今回の旅ではあの方がご同行してくださっています。それは、シモン先生です。

 え、先生も一緒にいいんですか? って思ったんだけど、先生本人はもうウキウキで。アドマンス領ってそれだけ涼しくて快適な場所らしい。そりゃ、こんな猛暑の中城の中で仕事するよりこっちで旅行した方がいいよね。


「体調は?」

「平気で~す!」

「本当か?」

「本当です~~!」

「私達、夫人からアヤメちゃんの体調確認の任務課せられてるから、ちゃんと言ってね?」

「え、そうなの?」

「そ」


 お母様ったら、私を何だと思ってるんです? 気分悪い時はちゃんと言いますって。もう。


 これから行く第3首都は行ったことあるけどよく知らないからどんな宿なのかとっても楽しみ。

 と、思っていたのに……


「え……ホテルじゃん」


 4階建てで高くはないけど、とっても大きい建物。そして見た目がモロホテル。え、ここですか。と思いつつ馬車から降りた。あ、タクミ君紳士。乗る時もだけど手貸してくれた。ナナミちゃんはなかったけど。おいコラ愚兄、と半ギレしてたけど。

 中に入るとやっぱりホテル。広いエントランスがあって、奥に受付。


「お待ちしておりました、オーナー(・・・・)


 ……ん? オーナー? お母様にそう言った?

 予約してるみたいで、そんなやりとり聞こえたんだけど。


「あら、知らなかったのね。このホテル、アドマンス家が経営してるのよ」

「……わぁ」


 なるほど、そういう事でしたか。凄いな、アドマンス家。知ってたけど。私が知る事業だけでも凄いなぁって思ってたけど、もう一つですか。あとでそういうの聞いてみようかな。

 と思いつつ、受付を終えた。

 ちらりと見えた、ジルベルト達。私達の荷物、運んでくれてる。


「アヤメちゃんが教えてくれたエレベーター、このホテルに導入したいなって思ってるの」

「なるほど、お客様のお荷物部屋に運ぶならあった方がいいですよね」

「そう。あとで話そうと思ってたんだけど、でも今日は旅行で来たから、この話は後にしましょうか」

「はい!」


 まだ、エレベーターについては試作中。安全をきちんと確保しないといけないからまだ時間がかかると思う。

 今日は、お母様とリアさん、私とナナミちゃん、タクミ君と部屋を取る事になった。


「わぁ! 広い!」

「おぉー!」


 部屋もとっても綺麗で、やっぱりホテルだった。ないものもあったけど。

 ジルベルト達が荷物を持ってきてくれたから、ありがとうと言っておいた。これくらい当たり前のことですよ、と笑顔で言ってくれたけど。

 ナナミちゃんは、ベッドふかふか~! と大はしゃぎだ。窓の外の眺めもとっても綺麗。魔道具の灯りが並んで夜もとっても綺麗だって聞いた。楽しみだなぁ。

 夜の食事も新鮮だった。屋敷と【なかむら】以外で食事したことなかったし、ナナミちゃんとタクミ君と一緒に食事したことなかった。ナイフとフォークを優雅に使う二人が不思議に見えてつい笑ってしまいそうになった。


「ねーねーアヤメちゃん、恋バナしよーよ!」

「え?」


 もう寝る準備万端、という所でナナミちゃんがそう言い出した。あるあるだよね、こういうのって。


「気になる人とかいないの?」

「ん~、そういうの分かんないや」

「え~つまんな~い」


 そういうの考えたことなかったし。そもそもそんな余裕なかったし。


「ほら、一緒にいて楽しいとか、寂しくなった時ふと思い出す人とか、女の人と喋っててモヤモヤするとか、ないの?」


 ん~、あ、思い当たる人……いや、違うかな。

 それじゃナナミちゃんは? と質問返しをしておいた。ほんと、乙女だなぁ。


「ん~、私もないかも」

「一緒じゃん」

「あ、でもアヤメちゃんのお兄さんかっこいいな~っては思ったよ?」

「お兄様イケメンだもんね、毎日会う度眩しいもん。ナナミちゃんって面食い?」

「顔は最重要事項でしょ。顔よし、性格よし、高収入、そして腕の立つ人が一番の理想かな」

「えっ、お兄様じゃない」


 性格は……まぁ攻略すればいける?


「え? 強いの?」

「この国の近衛騎士団副団長」

「えぇ~!? もう最高じゃない!!」


 あ、だからお兄様を見るご令嬢の目があんなにギラギラしてたのね。理想の旦那像ってやつ? アドマンス家の後継者だし。本人は興味なさそうだけど。

 そんな話で盛り上がり、早く寝るのよとお母様に言われてたからすぐにおやすみと灯りを消した。

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