目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
◇5 お兄様
とある日の午後、思わぬ人に出会ってしまった。
お母様と外でテーブルを囲いお茶をしている時だ。近づいてくる男性がいて、そしてこう言った。
「ただいま戻りました。――母上」
そう、私のお母様であるティアさんに、同じく母と呼んだこの若い男性。そんな人物は一人しかいない。
全く予測出来ておらず、しかも心の準備すらまともに出来ていなかったから、ぽかんと口を開く事しか出来なくて。挨拶を、と思ったけれどどうしたらいいのかすら全く分からない。
「遅かったじゃない。手紙を送ったの、何時だったかしら」
「こちらにも仕事というものがございます」
お父様によく似た、若い男性。容姿とかもほんとそっくり。お父様もイケメンだけど、この人も中々のイケメンだ。きっと世の中の女性達が放っておかないだろう。でも、表情が固まってるというか、無表情と言ったほうがいいのか。
「こぉら、早く挨拶なさい」
「……これは失礼した。アルフレッド・アドマンス。王宮近衛騎士団副団長を務めている。君の兄だ」
ビシッと背筋を伸ばして、貴族の挨拶? いや、軍人仕様? みたいな仕草で自己紹介をしてくれたイケメンさん。カッコいい、けど、近衛騎士……しかも副団長!?
副団長って、その騎士団の中で二番目に偉い人って事だよね? 確か、お父様って騎士団総括って言ってた気がするんだけど……アドマンス家って、やっぱりすごい。騎士の家系、とか? あまりこの家の事知らないんだよなぁ。あとでマリアに聞いてみよう。
「あっ……」
「立たなくていい、話は聞いている」
挨拶しなきゃと思い慌てて立ち上がろうとしてた所を止められてしまった。お母様が手紙を送ったみたいだけれど、何て言ったのだろうか。
私が病気を持ってる事は知ってるみたいだけど、異世界から来たこととか、そこら辺って自分から説明した方がいい?
いや、そもそもこれって秘密にした方がいいのかな。なんか、口外しちゃうとまずい事かもしれないし。後で聞かなきゃいけない感じだったな。あ、でも家族になった訳だから知らなきゃいけない事だと思う、んだけど……
そう思いつつ、座ったまま私もアヤメ・アドマンスです、と自己紹介した。挨拶の仕方、これで合ってる? ま、間違っちゃったかな。もし私が異世界から来た人だってまだ知らなかったら、礼儀作法もまともに出来ない無能だとかって思われちゃう? いや、そこまでいかない?
「ちょっと、それだけ? 可愛い妹が出来たっていうのに」
「……何か聞いたほうがいいか」
「あ……えぇと……」
「それとも聞きたい事があるなら聞いていい。大抵の事なら答える」
……あ、そういう感じですか。成程。
でも、こういうのって、戸惑ったりしないのかな。いきなり全く知らない人が家族になりました~だなんて多少なりとも戸惑ったりしちゃうよね。なんか、ごめんなさい。あ、戸惑っているのかどうかは全然顔からは読み取れないんだけどさ。この人の顔は全然表情筋お仕事しない系なのね。
私の事どんな風に思ったんだろ、なんか怖いな。あとで虐められたりしないかな。騎士さんだから怖い気がする。あぁ、急に寒気が……
「もう! アヤメちゃん困ってるじゃない! これからよろしくとか、困った事があったら遠慮せず言ってくれとかないの?」
「……よろしく頼む」
「あ、はい、これからよろしくお願いします」
その様子を見たお母様は、額に手を当てて大きな溜息をついていた。困った息子、と言っていたけど、こういう事……?
何か聞いた方がいいのだろうか、とうーんうーん考えていたけれど、全く思いつかず。
結局、鍛錬の合間に抜けてきたのでこれで失礼します、と戻っていってしまった。
すごかった、色々と、すごかった。
確かに困った息子だわ。同情します。
「アヤメちゃん、ごめんなさいね」
「あ、いえ、大丈夫です」
「本当? あの子にはバートからキツく言ってもらうようお願いしておくから、気にしないで」
あの人が、兄……一体誰の遺伝子を継いだんだろう。顔は似てても性格は全然似てない……
私、また会った時何と言えばいいのかな。全く分からない。こういうタイプの人って今まで周りにいなかったからなぁ。
私、地球でも兄とか、そもそも兄妹すらいなかった。所謂一人っ子というやつだ。だから、兄妹ってどういう関係でどういう距離感だとか、そういうのよく分からないんだよね。病院とかで、兄妹の人達とは顔を合わせた事があるけれど、どんな感じなのか聞いた事ないし。
ど、どうしたらいいのかな……? 誰かに助け舟を求めたり……? でもその時誰もいなかったら? いや、それは恐ろしいな。
でも、あまりこっちに帰ってこないって言ってたし、ゆっくり考えてみる? まぁでも考えた所で何が出来るかって所ではあるんだけどさ。私今初めて会ったわけだし。初対面で十数分で会話終了しちゃったし。
こんなの初めてだから、よく分からないな。これ、いいのか……?
あぁあと、後でお母様に聞いてみたところ、私が異世界から来た事は別に気が付かれてもいいらしい。前こちらに来た異世界者も普通に異世界出身だと言っているみたい。
というか、私がこちらに来たという情報はもう既に広がっちゃってるみたいだから別に気にしなくてもいいわよって言われてしまった。
私、ここに来たのいつだっけ?
ま、まぁでも絶対言っちゃダメとか言われたら責任重大だからそこら辺はいいかも。
次の日、屋敷に沢山のプレゼントボックスが届けられた。
「こちらは隣国のセオリシア王国から、こちらはミオフィス王国、こちらはスフェーン王国ですね。貴族だったり、王族の方々からのものばかりです」
「え……」
私が来たって事は、国内じゃなくて国外にまで知られちゃってたって事……?
「異世界人だから、仲良くしましょ? って事ね」
「……貰っていいんですか?」
「えぇ、アヤメちゃんに贈られてきたのだからありがたく頂きましょ」
中身は……魔道具? とか、宝石とか。あと、織物なんかもあった。
この二つは、贈ってきた国は以前異世界人が現れた国からだった。なんか、ありがとうございます。
でも、こんな高価なもの、扱えないなぁ。まぁ、後で考えよう。
「これ……」
「それは、神殿からですね。気を和らげる効果のある石があしらわれたネックレスです」
「……貰っていいのかな、そんな凄いもの」
「身体の弱いお嬢様の為を思って贈ってくださったものでしょうから、大丈夫ですよ」
「そ、か……」
そして他国から、それから国内の貴族からのプレゼントは、毎日毎日贈られてくる事になるのである。どうしたものかと頭を悩ませてしまった。
お母様と外でテーブルを囲いお茶をしている時だ。近づいてくる男性がいて、そしてこう言った。
「ただいま戻りました。――母上」
そう、私のお母様であるティアさんに、同じく母と呼んだこの若い男性。そんな人物は一人しかいない。
全く予測出来ておらず、しかも心の準備すらまともに出来ていなかったから、ぽかんと口を開く事しか出来なくて。挨拶を、と思ったけれどどうしたらいいのかすら全く分からない。
「遅かったじゃない。手紙を送ったの、何時だったかしら」
「こちらにも仕事というものがございます」
お父様によく似た、若い男性。容姿とかもほんとそっくり。お父様もイケメンだけど、この人も中々のイケメンだ。きっと世の中の女性達が放っておかないだろう。でも、表情が固まってるというか、無表情と言ったほうがいいのか。
「こぉら、早く挨拶なさい」
「……これは失礼した。アルフレッド・アドマンス。王宮近衛騎士団副団長を務めている。君の兄だ」
ビシッと背筋を伸ばして、貴族の挨拶? いや、軍人仕様? みたいな仕草で自己紹介をしてくれたイケメンさん。カッコいい、けど、近衛騎士……しかも副団長!?
副団長って、その騎士団の中で二番目に偉い人って事だよね? 確か、お父様って騎士団総括って言ってた気がするんだけど……アドマンス家って、やっぱりすごい。騎士の家系、とか? あまりこの家の事知らないんだよなぁ。あとでマリアに聞いてみよう。
「あっ……」
「立たなくていい、話は聞いている」
挨拶しなきゃと思い慌てて立ち上がろうとしてた所を止められてしまった。お母様が手紙を送ったみたいだけれど、何て言ったのだろうか。
私が病気を持ってる事は知ってるみたいだけど、異世界から来たこととか、そこら辺って自分から説明した方がいい?
いや、そもそもこれって秘密にした方がいいのかな。なんか、口外しちゃうとまずい事かもしれないし。後で聞かなきゃいけない感じだったな。あ、でも家族になった訳だから知らなきゃいけない事だと思う、んだけど……
そう思いつつ、座ったまま私もアヤメ・アドマンスです、と自己紹介した。挨拶の仕方、これで合ってる? ま、間違っちゃったかな。もし私が異世界から来た人だってまだ知らなかったら、礼儀作法もまともに出来ない無能だとかって思われちゃう? いや、そこまでいかない?
「ちょっと、それだけ? 可愛い妹が出来たっていうのに」
「……何か聞いたほうがいいか」
「あ……えぇと……」
「それとも聞きたい事があるなら聞いていい。大抵の事なら答える」
……あ、そういう感じですか。成程。
でも、こういうのって、戸惑ったりしないのかな。いきなり全く知らない人が家族になりました~だなんて多少なりとも戸惑ったりしちゃうよね。なんか、ごめんなさい。あ、戸惑っているのかどうかは全然顔からは読み取れないんだけどさ。この人の顔は全然表情筋お仕事しない系なのね。
私の事どんな風に思ったんだろ、なんか怖いな。あとで虐められたりしないかな。騎士さんだから怖い気がする。あぁ、急に寒気が……
「もう! アヤメちゃん困ってるじゃない! これからよろしくとか、困った事があったら遠慮せず言ってくれとかないの?」
「……よろしく頼む」
「あ、はい、これからよろしくお願いします」
その様子を見たお母様は、額に手を当てて大きな溜息をついていた。困った息子、と言っていたけど、こういう事……?
何か聞いた方がいいのだろうか、とうーんうーん考えていたけれど、全く思いつかず。
結局、鍛錬の合間に抜けてきたのでこれで失礼します、と戻っていってしまった。
すごかった、色々と、すごかった。
確かに困った息子だわ。同情します。
「アヤメちゃん、ごめんなさいね」
「あ、いえ、大丈夫です」
「本当? あの子にはバートからキツく言ってもらうようお願いしておくから、気にしないで」
あの人が、兄……一体誰の遺伝子を継いだんだろう。顔は似てても性格は全然似てない……
私、また会った時何と言えばいいのかな。全く分からない。こういうタイプの人って今まで周りにいなかったからなぁ。
私、地球でも兄とか、そもそも兄妹すらいなかった。所謂一人っ子というやつだ。だから、兄妹ってどういう関係でどういう距離感だとか、そういうのよく分からないんだよね。病院とかで、兄妹の人達とは顔を合わせた事があるけれど、どんな感じなのか聞いた事ないし。
ど、どうしたらいいのかな……? 誰かに助け舟を求めたり……? でもその時誰もいなかったら? いや、それは恐ろしいな。
でも、あまりこっちに帰ってこないって言ってたし、ゆっくり考えてみる? まぁでも考えた所で何が出来るかって所ではあるんだけどさ。私今初めて会ったわけだし。初対面で十数分で会話終了しちゃったし。
こんなの初めてだから、よく分からないな。これ、いいのか……?
あぁあと、後でお母様に聞いてみたところ、私が異世界から来た事は別に気が付かれてもいいらしい。前こちらに来た異世界者も普通に異世界出身だと言っているみたい。
というか、私がこちらに来たという情報はもう既に広がっちゃってるみたいだから別に気にしなくてもいいわよって言われてしまった。
私、ここに来たのいつだっけ?
ま、まぁでも絶対言っちゃダメとか言われたら責任重大だからそこら辺はいいかも。
次の日、屋敷に沢山のプレゼントボックスが届けられた。
「こちらは隣国のセオリシア王国から、こちらはミオフィス王国、こちらはスフェーン王国ですね。貴族だったり、王族の方々からのものばかりです」
「え……」
私が来たって事は、国内じゃなくて国外にまで知られちゃってたって事……?
「異世界人だから、仲良くしましょ? って事ね」
「……貰っていいんですか?」
「えぇ、アヤメちゃんに贈られてきたのだからありがたく頂きましょ」
中身は……魔道具? とか、宝石とか。あと、織物なんかもあった。
この二つは、贈ってきた国は以前異世界人が現れた国からだった。なんか、ありがとうございます。
でも、こんな高価なもの、扱えないなぁ。まぁ、後で考えよう。
「これ……」
「それは、神殿からですね。気を和らげる効果のある石があしらわれたネックレスです」
「……貰っていいのかな、そんな凄いもの」
「身体の弱いお嬢様の為を思って贈ってくださったものでしょうから、大丈夫ですよ」
「そ、か……」
そして他国から、それから国内の貴族からのプレゼントは、毎日毎日贈られてくる事になるのである。どうしたものかと頭を悩ませてしまった。