目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

◇55 ぶっかけうどん

 さてさて、私は今どこにいるでしょ~か。そう、厨房です!

 外の気温が上がってしまい外に出られなくなってしまった私が、つまらないからとお願いをしたのだ。


「あら~、アヤメちゃんエプロンも似合うのね!」

「そう? 仕事出来ます感出てる?」

「出てる出てる!」

「どこが?」

「だまらっしゃい」


 全く、タクミ君は黙っててよ。

 目の前にある材料は、小麦粉に塩にお水。さてこれで何を作るでしょうか。そう! うどんです!

 前からやってみたかったんだよね~。料理ってあまりやった事がなかったから、その点に関してもとっても楽しみだった。

 さ、まずはおててを洗いましょ~ね~、と馬鹿にしてくるタクミ君を無視して手を洗いナナミちゃんに最初の工程を聞いた。


「ではまずボウルに塩と水を入れてよく混ぜます」

「溶かすの?」

「そう。季節によって水の分量が変わってくるんだけど、今日はこの分量ね」

「ふ~ん」


 気温とかの関係? そんな事知らなかった。じゃあうどん屋さんとかは毎日温度を確認して作ってるんだ。大変だな。


「ここに小麦粉をふるってくださ~い」

「なんか、お菓子作ってるみたい」

「砂糖はありませんよ?」

「あはは、甘いうどんは美味しくなさそう」


 ふるった小麦粉に塩を溶かしたお水を少し残して入れてこねる。うわ、べたべただぁ。でもどんどんやっていく内にまとまってきて。


「ここで袋ですか!」

「そうでーす。次はお休みタイムです!」


 その間にうどんのおつゆとおかずなどを準備するみたい。もう慣れた手さばきでどんどん出来てきちゃって素晴らしい。さすがプロだ。邪魔しないよう遠くから見てたんだけど、それでもよく分かる。

 お料理上手な女の子ってレベル高かったじゃん、地球では。だから私も料理上手になりたいな~って思ってたけどそもそも台所に立つことすらなかったって言うね。

 それに、こっちだともう貴族になっちゃったし。貴族だとどんな女性がレベル高いんだろう。やっぱり頭よくて美人? 料理ってあまり関係ない?

 あ、でももし料理上手がいいとしても、もう既に料理上手、いや、プロの彼氏できちゃったし。意味ないか。なんか複雑。


「何やってんの?」

「いや、女子力の壁を感じてた」

「アヤメちゃんは女子力低くても可愛いよ」


 タクミ君の、そーゆーのサラッと言っちゃうところが本当に腹立つ。ほら、ニヤニヤしてる。アヤメちゃんって言った所がもうモロ馬鹿にしてるよね。ムカつく。

 んじゃ続き行くぞ~、と袋からさっきの生地を取り出したタクミ君。ここからは力仕事らしいので私の分は彼に代わってもらう事になった。すみませんね、力なくて。

 それから床に台を置き、ビニールシートを広げて生地を挟んだ。


「ほら、お待ちかねの踏む作業ですよ」

「私乗っていいの?」

「気を付けてな」

「はーい!」


 タクミ君の手に掴まりながら靴を脱ぎ、よっこいしょ、と生地の上に乗ってみた。おぉ、なんか変な感じ。

 ご指導を頂き、踏み方を聞きつつ踏んでみた。


「いちに、いちに、いちに」

「あんよがじょうず、あんよがじょうず」

「……黙って」

「あははっ」


 も~馬鹿にしてぇ~! てかなんでその言葉知ってるのよ。お爺様に教えてもらった?

 お嬢様が一生懸命お踏みになさったのであればもう最高級のうどんになりましたわ! とか、絶対に美味しいうどんになりますわ! とか聞こえてきたけれど大袈裟すぎでしょ。ここの使用人さん達って本当にこういう冗談が好きよね。

 私達の分に、ここの使用人さん達の分もあるから、沢山ある生地をいっぱい踏んだ。結構な働きだったんじゃない? 私頑張った!

 そこから先はプロの方々のお仕事。どんどんまとまっていって。


「麺切るの? 私切り…」

「アヤメはダメ」

「お嬢様は包丁禁止です」

「そんなに綺麗な手を切ってしまわれたら大変です!」

「お嬢様、刃物は危険ですよ!」


 ……過保護? いや、過保護にも程があるでしょ。一体私を何だと思ってるのか。子供? 子供扱いなの? 酷くない?

 それよりもアヤメちゃんは味見係ね、とスプーンとフォークを渡されてしまった。こねて、踏んで、味見……だけ?


「美味いか?」

「……最高です」

「んじゃ良かった」


 文句は言えませんでした。美味しすぎて。何か丸め込められた感はあったけれど。

 お昼ご飯になる予定だったうどんは無事完成、プロによって茹でられて完成していただき、ぶっかけうどんへと姿を変えてテーブルに並べられた。

 私が厨房でうどん作りに参加していたとは知らなかったお母様が、教えた後に何故かタクミ君と顔で会話していたのには気が付かなかった。

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