目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
◇68 ピペリメの花
次の日、私の所に金色の手紙が届いた。昨日送った手紙の返事だ。
「マリア! 王城の絵使っていいって! あと、ピペリメの花も! 夜撮りに来てもいいって」
「それは良かったです。では、早速見に行きましょうか」
「うん!」
お母様にもこの事を報告し、すぐに準備をして馬車で王城に向かった。
この前以上に王城には沢山の見た事のない馬車がいくつも停まっていて。他国からいらっしゃった方ばかりだ。それに対応している王宮の方々も大変そう。
「アドマンス嬢でしょうか」
「はい、実は庭園に行きたいのですが」
陛下から許可は頂いています、と送られてきた手紙に同封されていた書類を渡した。確認した王宮の方が、ご案内しますと言ってくれて。
じゃあ行ってくるね、とマリアとジルベルトに告げて王城に入った。
「庭園には、どんなご用件で?」
「パーティーに必要な絵をこの魔道具で撮りたくて。夜撮るつもりなんですけど、庭園には初めてなので一度見に来たんです」
「なるほど、もしや、ご令嬢の立ち上げた事業ですか?」
「はい、そうです」
「実は私も何度か利用させていただいていまして、本当に素晴らしい事業で感激いたしました」
「本当ですか! ありがとうございます」
案内人に付いていくと、せかせかと働く方々が目に入る。本当に忙しそう。私、邪魔しちゃってるかな。すみません、でも必要なものなんです。ごめんなさい。
数分後で、目の前にはとても素敵な広い庭園が見えてきた。これが、王城の庭園か。
「何かご覧になりたいものがあればご案内しますよ」
「あ、ピペリメの花を見たいです」
「畏まりました、こちらです」
と、綺麗な庭園を歩き出した。目に入るものすべてがとても綺麗で、上品な華やかさって感じなんだろうか。とにかく、凄い。
ウチにある花や、以前殿下から頂いたポプランの花も見かける。植物図鑑にあったものも。あぁ、植物図鑑とにらめっこしながらここに居座っていたい。私ここなら何週間でもいられそう。
「こちらが、ピペリメの花です」
「……えっ」
「如何しました?」
「あ、いえ、何でもありません」
これ、桔梗じゃん。桔梗って青っぽい紫色しか見た事ないけれど、これはピンク寄りの白。光ったらどんな感じだろう、白く光るのかな。今夜また見に来るからその時だね。
「今夜また来たいのですが、大丈夫ですか?」
「陛下から許可を頂いておりますので大丈夫ですよ。ではまた私がご案内いたしますね」
「すみません、お忙しいところ」
「いえ、アドマンス嬢の手助けが出来て嬉しい限りです。周りに自慢しますね」
そ、そこまでですか。
そんな時、少し遠くから女性の声がした。誰か人を探しているみたい。あ、この王宮の人を探してるのかな。道に迷ったとか?
「行って下さい、私ここにいますから」
「よろしいのですか?」
「はい」
「お気遣い、ありがとうございます」
すぐに戻ってまいります、と向こうの女性の所へ行った案内人さん。
ここにいるって事は、もしかしたら他国から来た人かも。初めて来た場所だから迷っちゃうよね。
「こんにちは、ご令嬢」
「え?」
そう話しかけてきたのは、若い男性。身なりからして、貴族の方かな?
「もしかして、これが有名なピぺリメの花ですか?」
「あ、はい、そうみたいです」
「ん? ご令嬢は誰かとここに?」
「は、はい。王城の方に案内してもらいました」
「なるほど。ご令嬢はお花が好きなのかな?」
「あ、はい」
「そうですか、僕も好きですよ。水色が好きなので、水色の花に目が行っちゃうんですけどね」
ご令嬢はどんな花が好きですか? と聞かれたから、ラミラスの花が好きだと答えた。
この人誰なんだろうと思ったけれど、この人話が長いから中々聞けなくて。
「花は近くにあるだけで癒されますよね。仕事で疲れていても笑顔をくれるから本当にいいんですよねぇ。あ、でも僕の知り合いにこう言われたんですよ。花なんてただの地面に生えた雑草と一緒だろって。酷い話でしょ? 花の素晴らしさを感じられないなんて、可哀想で仕方ありません」
ただ、苦笑いをするしか出来なかった。何と答えればいいのやら。
「あぁ、来たようですね」
「あっ」
遠くから走ってくる先程のお兄さんが見えた。
「ではまたどこかで」
「あ……」
と、颯爽と行ってしまった。結局、誰なのか聞けなかったな。
ぜーはーぜーはーと息を整えながら、何もありませんでしたか? と心配してくれるお兄さん。ふふ、落ち着いてからでもよかったのに。
そして、私は屋敷に帰ったのだ。
「あの……お仕事は?」
「アヤメ以上に重要な事はないだろう」
「はい」
「……」
夜、もう一度王城に来た。そこで待っていたのは、昼間案内してくれたお兄さんと、お父様とお兄様だった。お兄さんは……苦笑いである。
今、家に帰れないほどに忙しいはずなのに。私のせい、だよね。すみません、ごめんなさい。
「それで、映像撮影だったな」
「あ、はい」
「では行こうか」
これはきっと、お母様が言ったんだろうなぁ。だいぶ渋ってたもん。カーネリアンの人じゃない人たちが沢山ここにいるんだから、気持ちも分かる。でもどうしても自分で撮りに行きたかった。ごめんなさい、お母様。
まさかの、カーネリアン王国騎士団総括様と近衛騎士団副団長様の護衛付きです。最強? うん、最強だと思う。よく知らないけれど。でも、何かあったとしても100%無事に帰れる気がする。
ジルベルトだって、お父様に勝てる人なんてこの国にはいないって言ってたし。お兄様も、お父様と団長さんを除けば勝てる人はいないって言ってた。
「こちらでございます」
「ご苦労」
今日の昼間とはまた違った、幻想的っていうのかな。とても素敵な王城内だったけど、ピペリメの放つ光もとても神秘的というか、とにかくとても綺麗だった。言葉では上手く表せないくらい。
これを、上手く絵に収めることができるだろうか。いや、無理だと思う。
でも、精一杯綺麗に撮れるよう頑張ってみよう。
私の撮った昨日の夜空は裏側。だからこちらは表側にするつもり。とてもいいアングルで撮った方がいいんだけど、ここで見るのと明るいところで見るのとでは変わってくる。だから何枚か複数撮っておこう。
「撮れたか?」
「ん~、どうでしょう」
持っていた明かりで照らしてみて、確認した。うん、良さそう。
「皆さんの絵をお撮りしましょうか?」
「え?」
「アドマンス夫人はいらっしゃいませんが、良い機会だと思いますよ」
ふむ、と考えてから、いいなと言ってくださったお父様。明かりを持っていれば私達も映るそうだから、撮ったらお母様に見せてあげよう。
「ティアに見せたら羨ましがられそうだな」
「ふふ、明日撮りに行くって言い出しそうです」
「違いないな」
3、2、1、という掛け声で絵を撮ってもらった。うん、よく撮れたかも。帰ってからまた見てみようかな。
では、お仕事頑張ってください。と王城の入り口でお父様達と別れた。
「んも~~!! ずるいわ!! 撮るなら私も呼んでちょうだい!!」
「あはは、また今度みんなで撮りに行きましょう」
「絶対よ! 約束よ!」
と、お父様の予想通りお母様はとても羨ましがっていた。ふふ、楽しみだなぁ。
私室に、もう一つ大切な宝物が並んだ。
「マリア! 王城の絵使っていいって! あと、ピペリメの花も! 夜撮りに来てもいいって」
「それは良かったです。では、早速見に行きましょうか」
「うん!」
お母様にもこの事を報告し、すぐに準備をして馬車で王城に向かった。
この前以上に王城には沢山の見た事のない馬車がいくつも停まっていて。他国からいらっしゃった方ばかりだ。それに対応している王宮の方々も大変そう。
「アドマンス嬢でしょうか」
「はい、実は庭園に行きたいのですが」
陛下から許可は頂いています、と送られてきた手紙に同封されていた書類を渡した。確認した王宮の方が、ご案内しますと言ってくれて。
じゃあ行ってくるね、とマリアとジルベルトに告げて王城に入った。
「庭園には、どんなご用件で?」
「パーティーに必要な絵をこの魔道具で撮りたくて。夜撮るつもりなんですけど、庭園には初めてなので一度見に来たんです」
「なるほど、もしや、ご令嬢の立ち上げた事業ですか?」
「はい、そうです」
「実は私も何度か利用させていただいていまして、本当に素晴らしい事業で感激いたしました」
「本当ですか! ありがとうございます」
案内人に付いていくと、せかせかと働く方々が目に入る。本当に忙しそう。私、邪魔しちゃってるかな。すみません、でも必要なものなんです。ごめんなさい。
数分後で、目の前にはとても素敵な広い庭園が見えてきた。これが、王城の庭園か。
「何かご覧になりたいものがあればご案内しますよ」
「あ、ピペリメの花を見たいです」
「畏まりました、こちらです」
と、綺麗な庭園を歩き出した。目に入るものすべてがとても綺麗で、上品な華やかさって感じなんだろうか。とにかく、凄い。
ウチにある花や、以前殿下から頂いたポプランの花も見かける。植物図鑑にあったものも。あぁ、植物図鑑とにらめっこしながらここに居座っていたい。私ここなら何週間でもいられそう。
「こちらが、ピペリメの花です」
「……えっ」
「如何しました?」
「あ、いえ、何でもありません」
これ、桔梗じゃん。桔梗って青っぽい紫色しか見た事ないけれど、これはピンク寄りの白。光ったらどんな感じだろう、白く光るのかな。今夜また見に来るからその時だね。
「今夜また来たいのですが、大丈夫ですか?」
「陛下から許可を頂いておりますので大丈夫ですよ。ではまた私がご案内いたしますね」
「すみません、お忙しいところ」
「いえ、アドマンス嬢の手助けが出来て嬉しい限りです。周りに自慢しますね」
そ、そこまでですか。
そんな時、少し遠くから女性の声がした。誰か人を探しているみたい。あ、この王宮の人を探してるのかな。道に迷ったとか?
「行って下さい、私ここにいますから」
「よろしいのですか?」
「はい」
「お気遣い、ありがとうございます」
すぐに戻ってまいります、と向こうの女性の所へ行った案内人さん。
ここにいるって事は、もしかしたら他国から来た人かも。初めて来た場所だから迷っちゃうよね。
「こんにちは、ご令嬢」
「え?」
そう話しかけてきたのは、若い男性。身なりからして、貴族の方かな?
「もしかして、これが有名なピぺリメの花ですか?」
「あ、はい、そうみたいです」
「ん? ご令嬢は誰かとここに?」
「は、はい。王城の方に案内してもらいました」
「なるほど。ご令嬢はお花が好きなのかな?」
「あ、はい」
「そうですか、僕も好きですよ。水色が好きなので、水色の花に目が行っちゃうんですけどね」
ご令嬢はどんな花が好きですか? と聞かれたから、ラミラスの花が好きだと答えた。
この人誰なんだろうと思ったけれど、この人話が長いから中々聞けなくて。
「花は近くにあるだけで癒されますよね。仕事で疲れていても笑顔をくれるから本当にいいんですよねぇ。あ、でも僕の知り合いにこう言われたんですよ。花なんてただの地面に生えた雑草と一緒だろって。酷い話でしょ? 花の素晴らしさを感じられないなんて、可哀想で仕方ありません」
ただ、苦笑いをするしか出来なかった。何と答えればいいのやら。
「あぁ、来たようですね」
「あっ」
遠くから走ってくる先程のお兄さんが見えた。
「ではまたどこかで」
「あ……」
と、颯爽と行ってしまった。結局、誰なのか聞けなかったな。
ぜーはーぜーはーと息を整えながら、何もありませんでしたか? と心配してくれるお兄さん。ふふ、落ち着いてからでもよかったのに。
そして、私は屋敷に帰ったのだ。
「あの……お仕事は?」
「アヤメ以上に重要な事はないだろう」
「はい」
「……」
夜、もう一度王城に来た。そこで待っていたのは、昼間案内してくれたお兄さんと、お父様とお兄様だった。お兄さんは……苦笑いである。
今、家に帰れないほどに忙しいはずなのに。私のせい、だよね。すみません、ごめんなさい。
「それで、映像撮影だったな」
「あ、はい」
「では行こうか」
これはきっと、お母様が言ったんだろうなぁ。だいぶ渋ってたもん。カーネリアンの人じゃない人たちが沢山ここにいるんだから、気持ちも分かる。でもどうしても自分で撮りに行きたかった。ごめんなさい、お母様。
まさかの、カーネリアン王国騎士団総括様と近衛騎士団副団長様の護衛付きです。最強? うん、最強だと思う。よく知らないけれど。でも、何かあったとしても100%無事に帰れる気がする。
ジルベルトだって、お父様に勝てる人なんてこの国にはいないって言ってたし。お兄様も、お父様と団長さんを除けば勝てる人はいないって言ってた。
「こちらでございます」
「ご苦労」
今日の昼間とはまた違った、幻想的っていうのかな。とても素敵な王城内だったけど、ピペリメの放つ光もとても神秘的というか、とにかくとても綺麗だった。言葉では上手く表せないくらい。
これを、上手く絵に収めることができるだろうか。いや、無理だと思う。
でも、精一杯綺麗に撮れるよう頑張ってみよう。
私の撮った昨日の夜空は裏側。だからこちらは表側にするつもり。とてもいいアングルで撮った方がいいんだけど、ここで見るのと明るいところで見るのとでは変わってくる。だから何枚か複数撮っておこう。
「撮れたか?」
「ん~、どうでしょう」
持っていた明かりで照らしてみて、確認した。うん、良さそう。
「皆さんの絵をお撮りしましょうか?」
「え?」
「アドマンス夫人はいらっしゃいませんが、良い機会だと思いますよ」
ふむ、と考えてから、いいなと言ってくださったお父様。明かりを持っていれば私達も映るそうだから、撮ったらお母様に見せてあげよう。
「ティアに見せたら羨ましがられそうだな」
「ふふ、明日撮りに行くって言い出しそうです」
「違いないな」
3、2、1、という掛け声で絵を撮ってもらった。うん、よく撮れたかも。帰ってからまた見てみようかな。
では、お仕事頑張ってください。と王城の入り口でお父様達と別れた。
「んも~~!! ずるいわ!! 撮るなら私も呼んでちょうだい!!」
「あはは、また今度みんなで撮りに行きましょう」
「絶対よ! 約束よ!」
と、お父様の予想通りお母様はとても羨ましがっていた。ふふ、楽しみだなぁ。
私室に、もう一つ大切な宝物が並んだ。