目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
◇75 赤飯
今日私は王城にいます。そして王城の食堂に案内されて座っています。どうして? 呼ばれた会食の日だからです。
皆さんワクワクしながら料理を待っているようで。でも、スフェーン王国を料理大国へと発展させた今私の隣に座る方がどうしてここにいらっしゃるのか不思議でならない様子。
「孫がやってる」
「おぉ、お孫さんでしたか」
「料理大国へと導いたナカムラ殿のお孫さんでしたら、きっと素晴らしい腕の持ち主でしょうなぁ。一体どんな料理が出てくるのか、楽しみでなりません!」
「この会食の料理を任せられるほどの腕を持っていらっしゃるという事ですな」
「まだまだひよっこだよ」
「これはこれは厳しいですな。ですが、そんな教育があってここまで料理の腕を上げられたのですから、家族としては誇らしいのではないのですか?」
「な訳ねぇだろ」
あ、はは……皆さん困ってますよ。頑固、意地っ張り、意地悪って聞いてたけれど本当だったのね。けど照れ屋で世話焼きの優しい方だとも言ってたし。だからきっと心配はしてるのかな。
厨房は、さっき顔出したらもう戦場になってて。これは声をかけてはいけないなとそーっとその場を離れたのだけれど。でも良い匂いはしてた。お腹が鳴りそうだったけれど鳴らしたらバレちゃうから頑張って我慢しました。
「アドマンス嬢、実は私共も開発された炊飯器を購入したいと考えているのです」
「え?」
「こちらの食文化では、食事の主食でよく食べられている料理の原料が不作続きでしてね。国民全体を賄えるほどの量が採れなくなっているのですよ。もし可能でしたら、我々も取引に参加させていただけませんか」
「分かりました、では後ほどお話をさせてください」
「助かります」
となると、炊飯器づくりに必要な魔道具師を何人も雇わなければならなくなるわけだ。昨日お父様にその件に関してはレスリート卿に任せなさいと言われた。どうなるかは分からないけれど、後でこの事をレスリート卿にも伝えなきゃ。
まさかこんなに沢山の取引をすることになるなんて思いもしなかった。
では全員揃ったところで、食事にいたしましょうか。その王様の掛け声で周りにいた使用人達が動き出し、食堂のドアも開かれた。
「あ……」
持ってきて私の目の前に置いてくれた料理。これは和え物? ちょっと待って、このお皿、【なかむら】で使ってるものだ。まぁ、【なかむら】の料理って和食が多いから、今回も和食が多いのかな?
こちらで使われている白くて大きなお皿だと見栄えしないから持ってきたんだと思う。
そしてどんどん目の前に置かれていく料理達。あ……!
「あの野郎、『もち米』使いやがったな」
そんな中村さんの文句が横で聞こえてきたと同時に、とあるものが並べられた。
「もしや、これが米というものですか」
「あぁ、だが赤いのだけは種類が違う」
「赤いもの? 見た目は似ているようですが……」
お皿に乗せられているものは、お稲荷さん、俵の形になっている炊き込みご飯と、その隣に並べられているのは赤飯だ。あと、こっちは巻きずし。しかも側面が綺麗なお花になってる。
「こっちはうるち米、こっちはもち米だ」
「何が違うのですか?」
「食べてみれば分かる」
と言われてしまったので皆さん興味津々で数種類のご飯を口に入れた。味付けは全部違うけれど、この二種類は明らかに違う。
「もちもちしています!」
「確かに、二つとも明らかに違う食感です」
どれもこれも本当に美味しい。しかもこのお花の巻きずし。このピンクはでんぶだ! う~ん甘くて美味し~!
「ったく、もち米は貴重だって知ってる癖にあの野郎」
「まぁまぁ、赤飯は祝いの席でよく出されるものなんですから。いいじゃないですか」
すっごく長い溜息をつかれていた中村さん。私のその言葉を耳にしていた周りの皆さんが、確かにピッタリな料理ですねと笑っていた。
でも、次に出された料理に私は疑問を覚えた。あれ、おかしいなって。
出された料理は、白身魚の煮付け。でも、味見をした時の魚と違う。あ、お願いされて昨日味見したの。とっても美味しかったけれど、このお魚じゃなかったよね?
「ほぉ」
「なるほど、確かに今日の会食では赤飯がぴったりだ」
と、セオリシアのアルムホルド王太子殿下が呟いていた。スフェーン王国のドリファリス王太子殿下も、そうですねと言っていて。周りの方々も笑っている。
これ、もしかして私だけが分かってない感じ?
最後に出てきたのは、デザート。これって、練り切りっていうんだっけ?
3つ並べられているお菓子、この形は……!
「松竹梅!」
「あぁ」
あ、やばい、つい声を大きくしてしまった。
恥ずかしがっていると、目の前に座っていた方がショウチクバイとは? と聞いてくださった。答えたのは、お隣の中村さん。
「俺らの故郷ではこの三つを合わせて縁起の良い物の象徴としてきたんだ。おめでたい行事に度々使われてる」
「なるほど、赤飯とデザートと、やはりナカムラ殿のお孫さんはとても素晴らしい料理人だ」
「我らの国々の平和がこれからも続く事を祈っての事でしょう」
俺の真似をしただけだろ、と愚痴を言っていたけれどこんな特技を隠し持っていたとは思わなかった。果たしてこれを作ったのはタクミかナナミちゃんか。このあと聞いてこよう。
会食は、何事もなく終わりを告げた。とっても美味しかったです。
皆さんもとても満足そうで良かった。大成功だね。
「俺っす!」
「えっリカルドさん!?」
「こいつの手先の器用さには誰も勝てねぇよ」
まさかのリカルドさんでした。彼はお菓子作りが好きみたい。だから今度【なかむら】に行った時には何か作ってもらおうかな。あ、事前にお願いしなきゃ駄目か。
とにかく、とっても美味しかったです。ごちそうさまでした!
その後、ドリファリス王太子殿下に教えてもらった。あの白身魚の事だ。あれは、セオリシア王国の特産物らしい。セオリシアの特産物を、スフェーン料理で振る舞った。それは、長い間絶交していた関係が解消されましたよ~というサインだったそうだ。
きっと、何があったのかを聞いたタクミがそうしたんじゃないかな。さすがです。
皆さんワクワクしながら料理を待っているようで。でも、スフェーン王国を料理大国へと発展させた今私の隣に座る方がどうしてここにいらっしゃるのか不思議でならない様子。
「孫がやってる」
「おぉ、お孫さんでしたか」
「料理大国へと導いたナカムラ殿のお孫さんでしたら、きっと素晴らしい腕の持ち主でしょうなぁ。一体どんな料理が出てくるのか、楽しみでなりません!」
「この会食の料理を任せられるほどの腕を持っていらっしゃるという事ですな」
「まだまだひよっこだよ」
「これはこれは厳しいですな。ですが、そんな教育があってここまで料理の腕を上げられたのですから、家族としては誇らしいのではないのですか?」
「な訳ねぇだろ」
あ、はは……皆さん困ってますよ。頑固、意地っ張り、意地悪って聞いてたけれど本当だったのね。けど照れ屋で世話焼きの優しい方だとも言ってたし。だからきっと心配はしてるのかな。
厨房は、さっき顔出したらもう戦場になってて。これは声をかけてはいけないなとそーっとその場を離れたのだけれど。でも良い匂いはしてた。お腹が鳴りそうだったけれど鳴らしたらバレちゃうから頑張って我慢しました。
「アドマンス嬢、実は私共も開発された炊飯器を購入したいと考えているのです」
「え?」
「こちらの食文化では、食事の主食でよく食べられている料理の原料が不作続きでしてね。国民全体を賄えるほどの量が採れなくなっているのですよ。もし可能でしたら、我々も取引に参加させていただけませんか」
「分かりました、では後ほどお話をさせてください」
「助かります」
となると、炊飯器づくりに必要な魔道具師を何人も雇わなければならなくなるわけだ。昨日お父様にその件に関してはレスリート卿に任せなさいと言われた。どうなるかは分からないけれど、後でこの事をレスリート卿にも伝えなきゃ。
まさかこんなに沢山の取引をすることになるなんて思いもしなかった。
では全員揃ったところで、食事にいたしましょうか。その王様の掛け声で周りにいた使用人達が動き出し、食堂のドアも開かれた。
「あ……」
持ってきて私の目の前に置いてくれた料理。これは和え物? ちょっと待って、このお皿、【なかむら】で使ってるものだ。まぁ、【なかむら】の料理って和食が多いから、今回も和食が多いのかな?
こちらで使われている白くて大きなお皿だと見栄えしないから持ってきたんだと思う。
そしてどんどん目の前に置かれていく料理達。あ……!
「あの野郎、『もち米』使いやがったな」
そんな中村さんの文句が横で聞こえてきたと同時に、とあるものが並べられた。
「もしや、これが米というものですか」
「あぁ、だが赤いのだけは種類が違う」
「赤いもの? 見た目は似ているようですが……」
お皿に乗せられているものは、お稲荷さん、俵の形になっている炊き込みご飯と、その隣に並べられているのは赤飯だ。あと、こっちは巻きずし。しかも側面が綺麗なお花になってる。
「こっちはうるち米、こっちはもち米だ」
「何が違うのですか?」
「食べてみれば分かる」
と言われてしまったので皆さん興味津々で数種類のご飯を口に入れた。味付けは全部違うけれど、この二種類は明らかに違う。
「もちもちしています!」
「確かに、二つとも明らかに違う食感です」
どれもこれも本当に美味しい。しかもこのお花の巻きずし。このピンクはでんぶだ! う~ん甘くて美味し~!
「ったく、もち米は貴重だって知ってる癖にあの野郎」
「まぁまぁ、赤飯は祝いの席でよく出されるものなんですから。いいじゃないですか」
すっごく長い溜息をつかれていた中村さん。私のその言葉を耳にしていた周りの皆さんが、確かにピッタリな料理ですねと笑っていた。
でも、次に出された料理に私は疑問を覚えた。あれ、おかしいなって。
出された料理は、白身魚の煮付け。でも、味見をした時の魚と違う。あ、お願いされて昨日味見したの。とっても美味しかったけれど、このお魚じゃなかったよね?
「ほぉ」
「なるほど、確かに今日の会食では赤飯がぴったりだ」
と、セオリシアのアルムホルド王太子殿下が呟いていた。スフェーン王国のドリファリス王太子殿下も、そうですねと言っていて。周りの方々も笑っている。
これ、もしかして私だけが分かってない感じ?
最後に出てきたのは、デザート。これって、練り切りっていうんだっけ?
3つ並べられているお菓子、この形は……!
「松竹梅!」
「あぁ」
あ、やばい、つい声を大きくしてしまった。
恥ずかしがっていると、目の前に座っていた方がショウチクバイとは? と聞いてくださった。答えたのは、お隣の中村さん。
「俺らの故郷ではこの三つを合わせて縁起の良い物の象徴としてきたんだ。おめでたい行事に度々使われてる」
「なるほど、赤飯とデザートと、やはりナカムラ殿のお孫さんはとても素晴らしい料理人だ」
「我らの国々の平和がこれからも続く事を祈っての事でしょう」
俺の真似をしただけだろ、と愚痴を言っていたけれどこんな特技を隠し持っていたとは思わなかった。果たしてこれを作ったのはタクミかナナミちゃんか。このあと聞いてこよう。
会食は、何事もなく終わりを告げた。とっても美味しかったです。
皆さんもとても満足そうで良かった。大成功だね。
「俺っす!」
「えっリカルドさん!?」
「こいつの手先の器用さには誰も勝てねぇよ」
まさかのリカルドさんでした。彼はお菓子作りが好きみたい。だから今度【なかむら】に行った時には何か作ってもらおうかな。あ、事前にお願いしなきゃ駄目か。
とにかく、とっても美味しかったです。ごちそうさまでした!
その後、ドリファリス王太子殿下に教えてもらった。あの白身魚の事だ。あれは、セオリシア王国の特産物らしい。セオリシアの特産物を、スフェーン料理で振る舞った。それは、長い間絶交していた関係が解消されましたよ~というサインだったそうだ。
きっと、何があったのかを聞いたタクミがそうしたんじゃないかな。さすがです。