目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
◇87 今日はお客さん
今日もまた、馬車に乗っています。一人じゃありません。
「どったの、お前」
「ん~、どうしたら恋のキューピットになれるか考え中」
「誰の」
「凄く高貴な方」
「もしかして……今やり取りしてる手紙の相手?」
「正解」
「……マジか」
そう、タクミです。またまたデートです。でも頭の中はあのパーティーの事でいっぱいです。公爵令嬢の私が高貴な方って言うんだからその相手は分かっちゃうよね。
「相手が強敵中の強敵だから、どう言ってあげればいいのか分かんないのよ」
「強敵か……一体誰なんだよ、だって高貴な方だろ? 結婚したら玉の輿だろ」
「う~ん、強敵も十分高い地位よ。因みに言うと、私がよく知ってる人」
「……まさか」
あ、分かった? だってこの国唯一の公爵家であるアドマンス家の後継者よ? しかもイケメンだし近衛騎士団の副団長だし。そんな人と結婚できるなんて将来安泰でしょ。
「……俺、聞かない方が良かったか?」
「タクミにならいいでしょ。口外する気?」
「いや、恐れ多くて出来ないっつの。お前んちは本当に恐ろしい家だな」
「タクミには言われたくない」
ナカムラ家だって十分恐ろしい家だもん。王様と裕孝さんが仲良しで、裕孝さんの奥さんが王様の初恋相手ですって? しかもタクミ達のお母様が元近衛騎士団団長。国の中でその方の近く以外に安全な所はないだなんて王太子殿下言っちゃってたし。十分恐ろしい家ですよ。
今日私達が向かっている先は、彼の職場。そう、【お食事処・なかむら】です。前から一緒にお客さんしようね、って約束していたから今日果たされる事になりました。あらら、今日も忙しいのかな。
「この時間なら、ちょっと待てば大丈夫か」
「ちょっとぶらぶらしてくる?」
「それもいいな」
という事で、大通りの方をぶらぶらしてくることになりました。勿論手は繋いでますとも。というかタクミが繋ぎたいみたい。しょうがないなぁ、優しいこのアヤメちゃんが手を繋いであげましょうか。
いつも馬車だから、ここら辺はあまり歩いた事がない。でも、見る景色が違うからちょっと新鮮。
いろんなお店があって、働いている人達がいて、元気な子供達もいて、お買い物に来ている人達もいて。馬車からでは見られない景色が沢山ある。
「ここを抜けると広場な。何か噴水ショーとかやったりするんだと」
「タクミは見た事ないの?」
「俺は見た事ないけど、ナナミとナオが見に行ったの聞いた」
噴水ショーか、遊園地とかにあるああいうやつ? 見れるなら見てみたいかも。
「いつやるの?」
「毎週日曜日。見たい?」
「見たい!」
んじゃ決まりな、と次のデートの約束をした。楽しみだなぁ。テレビとかでは噴水ショーをちらっと見た事あるんだけど、こっちだとどんな感じなんだろう。気になる。
じゃあそろそろ戻るか、と【なかむら】に戻ったのだ。
「こんにちは~」
「いらっ……しゃいませぇ!?」
うん、やっぱりそうなるよね。ナオさんだいぶびっくり顔。その声を聞いたナナミちゃんも厨房から頭だけ出して驚いている。
「客に向かってなんて顔だよ」
「いやいやいや、何来ちゃってるのよ」
「アヤメが来たいって言ったから。だから今日は二人でお客さんだってよ」
「あらまぁ、折角のデートの時間をここで使っちゃうなんてねぇ。こっちとしては嬉しいけどね♪」
「煩いな、さっさと客を席に案内しろや」
「二名様ご案内で~す!」
あはは、やっぱり驚いちゃうよね。でも楽しそうだからよくない?
周りはまだお客さんがちらほら。だけど洋服姿のタクミに気付いてない? いや、気付いている人もいるか?
いつもと同じ席、厨房から一番近い席に案内してくれて私達はその席に座った。さてさて、今日のメニューは?
「特別メニュー、いくか?」
「え”っ」
「何食おうかな~」
あ、これはもう最初からそのつもりだったのね。でも作るのナナミちゃんだよね。いつもはタクミが作ってたけど、大丈夫?
でも目の前の人滅茶苦茶楽しそうじゃない?
「もしや、アドマンス嬢でしょうか」
「え?」
何にしよう、とメニューを見ていた所に、知らない男性が声をかけてきたのだ。う~ん、誰だろ。見た事のない人だ。
「ずっとご令嬢にお会いしたいと思っていたんです。ですが、社交界では中々お会いできずにいたので、今日会えた事は幸運でした。いえ、もしかしたら運命だったのかもしれませんね」
なんか、一人で話し出したぞ。運命だとか何だとかって言ってるけど。
彼は伯爵家の嫡男だそうだ。名前は、知らないし聞いた事もない。家の名前は何となく知ってるけど。
「して、このお連れの者はこの店の店主でしょうか。なぜこんな所に座っているのでしょう」
「今日は休みで今はプライベートなんです。アドマンス嬢に誘われただけですよ」
「ほぉ。確か君はナカムラ男爵家の者だったかな。だが、私は伯爵家の後継者だ。君は私が名乗った時点でその席を譲るべきだったのではないか?」
「あぁ、それは失礼」
あぁ、私と話がしたいのね。でも私達プライベートなんですけど、これからご飯なんですけど。
でも、タクミが席を立つ前に視線を送ってきたから、私は自分の座っているソファーの奥に座り直した。そして隣にタクミが座ってきたのだ。
「な”っ!!」
「はいどうぞ」
滅茶苦茶笑顔じゃないですか、タクミさんよ。まぁ私も笑顔なんだけど。この人の反応面白いし。
あら、座らないんですか? って顔で言ってるし。ちょっと、楽しんでませんか?
「そちらはこの国唯一の公女様だぞ。隣に座っていいわけがないだろ!」
「私が許可したのにダメなんですか?」
「ッ……だとしても! 隣に座らせる者は身分を考えて下さらなければ!! こいつはただの男爵家の次男、男爵家すら継げない男です!!」
「そんなの関係ないじゃないですか。私は楽しく食事をしたい相手は自分で選びたいです」
「ですがッ……」
はぁ、仕方ないな。これは簡単に引き下がってくれなそうだ。
「貴方は身分を気にしているようですけど、この人、サミットの会食で料理作った人ですよ」
「えっ」
「こちらにいらした王族の方々に料理を振る舞った方です。そんな彼の話を聞きながら、故郷の味を楽しもうと思ってたんですけど、それは許されない事なんですか?」
「それは男爵家の先代様がお作りになられた料理で、こいつはただ隣にいただけでしょう!」
「いいえ、先代様はずっと私の隣に座って料理を楽しんでいましたよ?」
「えッ……」
信じられないようでしたら、本人に聞いてみましょうか。今アドマンス家の邸宅に滞在していますよ。そう笑顔で言ってみた。もう満面の笑みで。
「ッ……たかが料理でっ」
「おい」
そう話を遮ったのはタクミだった。
「お前今何つった? たかが料理? お前、今料理を侮辱したのか? 人間誰しも飯食わなきゃ生きていけねぇって知らねぇのか? お前、今いくつだ。そこまで健康的に生きてこれたのは、バランスのいい美味い料理を屋敷のコックが作ってくれたお陰だろーが。それを、たかが料理? ふざけんな。お前みたいな食に感謝する事すら知らないやつは飯食う権利は全くねぇよ。さっさと帰れ!」
……あらら、タクミ、切れちゃた。何か、圧が凄い、圧が。私も怖いんですけど。でも、何となぁく裕孝さんに見えるような、見えないような。さすが親子だわ。
その後もタクミはだいぶ口が止まらず、子息は暴言を一言吐き捨てて帰っていったのだった。負け犬の捨て台詞みたいだったよ。
「煩くしてしまい大変失礼いたしました。どうぞこの後もお食事をお楽しみください」
と、満面の笑みでお店のお客さんに謝ったタクミ。もうイケメンはこういう時有効活用しちゃうんだからずるいよね。自分の顔の使い方分かってるわ。
「これだから周りにちやほやされて育った坊ちゃんは。マジで疲れたわぁ」
「あはは、ありがと」
「マジで迷惑だっつの。んで、何食う?」
「ん~、甘いの食べたいな」
「んじゃフレンチトースト?」
「美味しそう!」
「じゃあ……チーズ入りハンバーグ」
サンスさんが来てくれて、注文をお願いした。メニューにない料理だったから困ってたけど、冷蔵庫の中身をちゃ~んと把握しているタクミが材料はあるから大丈夫と通してしまった。ナナミちゃん、ごめんね。どっちもメニューにないやつで。
「それで……タクミさん、ずっとここ?」
「向こうに戻った方がいい?」
「いや、周りの目もあるし」
ほら、さっき私の隣に座ったじゃん。その顔だと、向こう側に戻る気はないな? まぁ私的には別にいいけどさ、周りのお客さんの目もあるわけだし。
「何?」
「いや、何でもない。さっさと戻って」
「はいはい」
それから、ニヤニヤしたナオさんが私のフレンチトーストとタクミのハンバーグを持ってきてくれた。
「血は争えないわね」
「煩いな」
「うふふ、ごゆっくり~」
ちょっと待って、なんか豪華じゃありませんか!!
「バニラアイスに、フルーツいっぱい!」
「あの野郎、アヤメが食べるからって……」
ん~香ばしい匂い! しかもてんこ盛りだし! アイスが溶けない内に食べなきゃ。いただきます!
「ん~~! 甘ぁ♡」
「……俺のも食う?」
「うんっ!」
まぁ色々あったけど、楽しい時間を過ごすことが出来ました。また一緒にお客さんやろうね。
「それでですね、タクミ君よ」
「え? 何々」
屋敷前に馬車が停まったタイミングで、彼にとある物を見せた。綺麗にラッピングされた袋だ。
「どーぞ」
「俺に?」
「そう」
「開けていい?」
「どーぞどーぞ」
その中身とは、レース編みされたコースターだ。パトラさんに教えてもらいながら作ったものの一つ。お父様とお母様とお兄様にも作って、そしてタクミにも作ったのだ。
「パトラさんに教えてもらったの。ひと編みひと編み愛情を込めて編まないと作ったものが光らないって。だからい~っぱい愛情込めて編みました~!」
「へぇ、綺麗に出来てる」
「ほんと!」
「うん、大事に使う」
よかったぁ、何度も解いてやり直した所あったから自信なかったんだけど、気に入ってくれたのであれば満足です。
「んじゃお返し」
「っ!?」
腕を引っ張られてキスをされてしまった。だから言ってからしてください! びっくりするでしょ!
じゃあまたな、と屋敷前で別れた。
「どったの、お前」
「ん~、どうしたら恋のキューピットになれるか考え中」
「誰の」
「凄く高貴な方」
「もしかして……今やり取りしてる手紙の相手?」
「正解」
「……マジか」
そう、タクミです。またまたデートです。でも頭の中はあのパーティーの事でいっぱいです。公爵令嬢の私が高貴な方って言うんだからその相手は分かっちゃうよね。
「相手が強敵中の強敵だから、どう言ってあげればいいのか分かんないのよ」
「強敵か……一体誰なんだよ、だって高貴な方だろ? 結婚したら玉の輿だろ」
「う~ん、強敵も十分高い地位よ。因みに言うと、私がよく知ってる人」
「……まさか」
あ、分かった? だってこの国唯一の公爵家であるアドマンス家の後継者よ? しかもイケメンだし近衛騎士団の副団長だし。そんな人と結婚できるなんて将来安泰でしょ。
「……俺、聞かない方が良かったか?」
「タクミにならいいでしょ。口外する気?」
「いや、恐れ多くて出来ないっつの。お前んちは本当に恐ろしい家だな」
「タクミには言われたくない」
ナカムラ家だって十分恐ろしい家だもん。王様と裕孝さんが仲良しで、裕孝さんの奥さんが王様の初恋相手ですって? しかもタクミ達のお母様が元近衛騎士団団長。国の中でその方の近く以外に安全な所はないだなんて王太子殿下言っちゃってたし。十分恐ろしい家ですよ。
今日私達が向かっている先は、彼の職場。そう、【お食事処・なかむら】です。前から一緒にお客さんしようね、って約束していたから今日果たされる事になりました。あらら、今日も忙しいのかな。
「この時間なら、ちょっと待てば大丈夫か」
「ちょっとぶらぶらしてくる?」
「それもいいな」
という事で、大通りの方をぶらぶらしてくることになりました。勿論手は繋いでますとも。というかタクミが繋ぎたいみたい。しょうがないなぁ、優しいこのアヤメちゃんが手を繋いであげましょうか。
いつも馬車だから、ここら辺はあまり歩いた事がない。でも、見る景色が違うからちょっと新鮮。
いろんなお店があって、働いている人達がいて、元気な子供達もいて、お買い物に来ている人達もいて。馬車からでは見られない景色が沢山ある。
「ここを抜けると広場な。何か噴水ショーとかやったりするんだと」
「タクミは見た事ないの?」
「俺は見た事ないけど、ナナミとナオが見に行ったの聞いた」
噴水ショーか、遊園地とかにあるああいうやつ? 見れるなら見てみたいかも。
「いつやるの?」
「毎週日曜日。見たい?」
「見たい!」
んじゃ決まりな、と次のデートの約束をした。楽しみだなぁ。テレビとかでは噴水ショーをちらっと見た事あるんだけど、こっちだとどんな感じなんだろう。気になる。
じゃあそろそろ戻るか、と【なかむら】に戻ったのだ。
「こんにちは~」
「いらっ……しゃいませぇ!?」
うん、やっぱりそうなるよね。ナオさんだいぶびっくり顔。その声を聞いたナナミちゃんも厨房から頭だけ出して驚いている。
「客に向かってなんて顔だよ」
「いやいやいや、何来ちゃってるのよ」
「アヤメが来たいって言ったから。だから今日は二人でお客さんだってよ」
「あらまぁ、折角のデートの時間をここで使っちゃうなんてねぇ。こっちとしては嬉しいけどね♪」
「煩いな、さっさと客を席に案内しろや」
「二名様ご案内で~す!」
あはは、やっぱり驚いちゃうよね。でも楽しそうだからよくない?
周りはまだお客さんがちらほら。だけど洋服姿のタクミに気付いてない? いや、気付いている人もいるか?
いつもと同じ席、厨房から一番近い席に案内してくれて私達はその席に座った。さてさて、今日のメニューは?
「特別メニュー、いくか?」
「え”っ」
「何食おうかな~」
あ、これはもう最初からそのつもりだったのね。でも作るのナナミちゃんだよね。いつもはタクミが作ってたけど、大丈夫?
でも目の前の人滅茶苦茶楽しそうじゃない?
「もしや、アドマンス嬢でしょうか」
「え?」
何にしよう、とメニューを見ていた所に、知らない男性が声をかけてきたのだ。う~ん、誰だろ。見た事のない人だ。
「ずっとご令嬢にお会いしたいと思っていたんです。ですが、社交界では中々お会いできずにいたので、今日会えた事は幸運でした。いえ、もしかしたら運命だったのかもしれませんね」
なんか、一人で話し出したぞ。運命だとか何だとかって言ってるけど。
彼は伯爵家の嫡男だそうだ。名前は、知らないし聞いた事もない。家の名前は何となく知ってるけど。
「して、このお連れの者はこの店の店主でしょうか。なぜこんな所に座っているのでしょう」
「今日は休みで今はプライベートなんです。アドマンス嬢に誘われただけですよ」
「ほぉ。確か君はナカムラ男爵家の者だったかな。だが、私は伯爵家の後継者だ。君は私が名乗った時点でその席を譲るべきだったのではないか?」
「あぁ、それは失礼」
あぁ、私と話がしたいのね。でも私達プライベートなんですけど、これからご飯なんですけど。
でも、タクミが席を立つ前に視線を送ってきたから、私は自分の座っているソファーの奥に座り直した。そして隣にタクミが座ってきたのだ。
「な”っ!!」
「はいどうぞ」
滅茶苦茶笑顔じゃないですか、タクミさんよ。まぁ私も笑顔なんだけど。この人の反応面白いし。
あら、座らないんですか? って顔で言ってるし。ちょっと、楽しんでませんか?
「そちらはこの国唯一の公女様だぞ。隣に座っていいわけがないだろ!」
「私が許可したのにダメなんですか?」
「ッ……だとしても! 隣に座らせる者は身分を考えて下さらなければ!! こいつはただの男爵家の次男、男爵家すら継げない男です!!」
「そんなの関係ないじゃないですか。私は楽しく食事をしたい相手は自分で選びたいです」
「ですがッ……」
はぁ、仕方ないな。これは簡単に引き下がってくれなそうだ。
「貴方は身分を気にしているようですけど、この人、サミットの会食で料理作った人ですよ」
「えっ」
「こちらにいらした王族の方々に料理を振る舞った方です。そんな彼の話を聞きながら、故郷の味を楽しもうと思ってたんですけど、それは許されない事なんですか?」
「それは男爵家の先代様がお作りになられた料理で、こいつはただ隣にいただけでしょう!」
「いいえ、先代様はずっと私の隣に座って料理を楽しんでいましたよ?」
「えッ……」
信じられないようでしたら、本人に聞いてみましょうか。今アドマンス家の邸宅に滞在していますよ。そう笑顔で言ってみた。もう満面の笑みで。
「ッ……たかが料理でっ」
「おい」
そう話を遮ったのはタクミだった。
「お前今何つった? たかが料理? お前、今料理を侮辱したのか? 人間誰しも飯食わなきゃ生きていけねぇって知らねぇのか? お前、今いくつだ。そこまで健康的に生きてこれたのは、バランスのいい美味い料理を屋敷のコックが作ってくれたお陰だろーが。それを、たかが料理? ふざけんな。お前みたいな食に感謝する事すら知らないやつは飯食う権利は全くねぇよ。さっさと帰れ!」
……あらら、タクミ、切れちゃた。何か、圧が凄い、圧が。私も怖いんですけど。でも、何となぁく裕孝さんに見えるような、見えないような。さすが親子だわ。
その後もタクミはだいぶ口が止まらず、子息は暴言を一言吐き捨てて帰っていったのだった。負け犬の捨て台詞みたいだったよ。
「煩くしてしまい大変失礼いたしました。どうぞこの後もお食事をお楽しみください」
と、満面の笑みでお店のお客さんに謝ったタクミ。もうイケメンはこういう時有効活用しちゃうんだからずるいよね。自分の顔の使い方分かってるわ。
「これだから周りにちやほやされて育った坊ちゃんは。マジで疲れたわぁ」
「あはは、ありがと」
「マジで迷惑だっつの。んで、何食う?」
「ん~、甘いの食べたいな」
「んじゃフレンチトースト?」
「美味しそう!」
「じゃあ……チーズ入りハンバーグ」
サンスさんが来てくれて、注文をお願いした。メニューにない料理だったから困ってたけど、冷蔵庫の中身をちゃ~んと把握しているタクミが材料はあるから大丈夫と通してしまった。ナナミちゃん、ごめんね。どっちもメニューにないやつで。
「それで……タクミさん、ずっとここ?」
「向こうに戻った方がいい?」
「いや、周りの目もあるし」
ほら、さっき私の隣に座ったじゃん。その顔だと、向こう側に戻る気はないな? まぁ私的には別にいいけどさ、周りのお客さんの目もあるわけだし。
「何?」
「いや、何でもない。さっさと戻って」
「はいはい」
それから、ニヤニヤしたナオさんが私のフレンチトーストとタクミのハンバーグを持ってきてくれた。
「血は争えないわね」
「煩いな」
「うふふ、ごゆっくり~」
ちょっと待って、なんか豪華じゃありませんか!!
「バニラアイスに、フルーツいっぱい!」
「あの野郎、アヤメが食べるからって……」
ん~香ばしい匂い! しかもてんこ盛りだし! アイスが溶けない内に食べなきゃ。いただきます!
「ん~~! 甘ぁ♡」
「……俺のも食う?」
「うんっ!」
まぁ色々あったけど、楽しい時間を過ごすことが出来ました。また一緒にお客さんやろうね。
「それでですね、タクミ君よ」
「え? 何々」
屋敷前に馬車が停まったタイミングで、彼にとある物を見せた。綺麗にラッピングされた袋だ。
「どーぞ」
「俺に?」
「そう」
「開けていい?」
「どーぞどーぞ」
その中身とは、レース編みされたコースターだ。パトラさんに教えてもらいながら作ったものの一つ。お父様とお母様とお兄様にも作って、そしてタクミにも作ったのだ。
「パトラさんに教えてもらったの。ひと編みひと編み愛情を込めて編まないと作ったものが光らないって。だからい~っぱい愛情込めて編みました~!」
「へぇ、綺麗に出来てる」
「ほんと!」
「うん、大事に使う」
よかったぁ、何度も解いてやり直した所あったから自信なかったんだけど、気に入ってくれたのであれば満足です。
「んじゃお返し」
「っ!?」
腕を引っ張られてキスをされてしまった。だから言ってからしてください! びっくりするでしょ!
じゃあまたな、と屋敷前で別れた。