目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

◇90 噂の出どころとは

 プリシラ嬢達とのお茶会の後、カリナが来訪してきた。今広まっている噂の件だ。


「どうしてタクミさんと王太子殿下が入れ替わってるのよ。これ絶対誰かが意図的にやったんじゃない?」

「そう、なのかな」

「絶対そうよ。アヤメは異世界人だから貴族派の人達じゃないと思う。となると……」

「……王様?」

「あり得る」

「うん、まぁ、確かに」


 でもこれ、どうしたらいいのかな。勘違いをそのままにしておけないし。


「もう先手打つしかないでしょ」

「やっぱり、そうなる?」


 先手、といってもなぁ。もう婚約しちゃう? いや、早すぎ? でももたもたしてたら王様達から王太子殿下との縁談話持ってこられちゃうよね。う~ん、どうしたものか。


「私、あの人のケツ叩いてこようか」

「え”っ!?」


 カリナが暴走しそうだし、とりあえずまずはタクミと話をしなきゃ。


「明日一緒に【なかむら】行く?」

「あ、ごめん。用事があるの」

「仕事?」

「ううん、お茶会なの」


 そう、お茶会。

 でもその相手は……



「お久しぶりでございます、ミレイア王女殿下」


 そう、第一王女殿下である。

 金色のお手紙が来たと思ったら第一王女殿下からだなんて誰が想像できます? だからすぐさま洋服の準備を大急ぎでしてやっとの思いで今日王城に来たんです。

 王女殿下にお会いしたのは今日で二回目、初めてお会いしたのは私のデビュタントの時だ。とは言っても一言二言かわしただけ。

 でも、殿下はもうそろそろで隣国に嫁ぐことになっているから、お会いできるのも少しだけ。だから今日は粗相のないよう気をつけなきゃ。


「またお会いできて嬉しいわ。どうぞ座って」

「失礼致します」


 今日は体調はどうかしら、と聞かれてしまって。初めてクララ様とお会いした時を思い出しつつ大丈夫ですと答えた。まさかまた王妃様がご登場するなんてことありませんよね。


「実は、アドマンス嬢に謝らなければならないことがあるの」

「えっ?」


 王女殿下が、謝ること? 何かあったっけ。


「あなた方の噂は耳にしているわ。噂が途中から変わったことも」

「あ……」


 何故かタクミではなく王太子殿下に替わってしまっていたことね。


「それは、私の母である王妃殿下のした事なの」


 えっ……お、王妃殿下が……!?

 カリナの予測が当たっちゃったって事だよね。だって王太子殿下とのこの手紙のやり取りも王妃殿下方が言い出した事だし。お友達を断ったら、もう家族のようなものだと言ってきたし。

 お父様が、あわよくばって言ってたけれどそれは正解だったって事よね。


「母上も、悪気があってやった事ではないの。貴方がお付き合いしている方がスフェーン王国、同じ故郷を持つ異世界人がいらっしゃる国の出身の男性だと聞いて、もしかしたらスフェーン王国に嫁いでいってしまうのではと思ったみたいなの」

「あ……」


 そっか、私は異世界人だからこの国にいてほしいって気持ちはあるよね。この国だって、郵便事業で便利になってきてるもん。じゃあ、他にも何かいいものを作り出してくれるのではないかと期待しているという気持ちもあるって事よね。

 そう思うと、ちょっと悲しい気持ちもある。この国を豊かにしたい気持ちも分からなくもないけれど、そんなに私に求めたって出来る事と出来ない事がある。

 それなのに、この国の王太子殿下の王太子妃、そして王妃にだなんて絶対出来っこない。

 だから絶対になりたくないって思っていたのに、これはあんまりだ。私の気持ちは考えてもらえなかったのも。


「母上に代わって、私からお詫びさせてちょうだい。本当に、ごめんなさい」

「い、いえ、頭をお上げください、殿下……!」


 まさか殿下に頭を下げられるとは思っておらず、中々頭を上げて下さらない殿下に何とか上げてもらった。


「もうここまで広まってしまっては、この噂を消す事は難しいわ。でも、私に出来る事があれば何でもするつもりよ。だから手伝わせてほしいわ」

「そんな……殿下にそう言っていただけただけで光栄です」


 殿下が手伝って下さるなら何とかなると思うけれど、一筋縄ではいかないよね。王太子殿下の方も、何とかやってみると手紙で言って下さった。でも、どうしたらいいのだろうか。


「前から兄上は母上にだいぶ言われているの。アヤメさんを誘って演劇を見に行くのはどう? だとかのデートの誘いや、パーティーを開いてあげるからパートナーとして手紙を送りなさい、などね。でも兄上は忙しいからと無理に仕事を入れて言い訳を作ってかわしているのよ」

「あ、だから最近社交界に出てこなくなったのですね」

「そう。でもその手もそろそろ使えなくなってきそうだから次の言い訳を作らないといけなくて困っているらしくって……」


 王妃様から直接何かを言われてしまえばこちらは従わざるを得ない。となると、こちらも何か策を講じなければならなくなってくる。

 なら、一体どうしたらいいのだろうか。



 そして、王城から帰ってきた。


「アヤメちゃ~ん、旅行に行きましょ♡」


 帰って早々に、そんなお母様の驚きの一言が出てきてしまったのだった。

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