目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
◇93 ワルツ
ここに来て5日目。部屋探しをしたりアトリエに行ったり庭散策をしたりとまったりしていたんだけど……
「なぁんか、ゆっくりしすぎてて、こんな事してていいのかどうか分からない」
「いいじゃん別にさ、折角のお休みだぞ?」
「うん、まぁそうなんだけど」
「何にもやる事なくてって事?」
「郵便事業の事で頭いっぱいだったけど、ぜーんぶ置いてきちゃったし。それに今首都でお母様や殿下が頑張ってくださってる訳だし」
「いいじゃん、任せろって言われたんだから。それに事業の事だって一回頭リセットするのは大切な事だろ」
なんか、今ゆっくりととってもいい景色を見ながらタクミと一緒にバルコニーでお茶をしているわけだけど、時間が流れるのが遅い。今何時だろ。
首都ではもう、学院の卒業式が行われた。昨日だったっけ。だからもう高等学生は卒業したという事だ。という事は、首都の屋敷にはきっとお茶会の招待状やら何やらがわんさか贈られてきている事だろう。
そして、学院の卒業式があったという事は、オリコット王国の王太子も卒業。これから王太子と第一王女であるミレイア王女の結婚式が行われる事となる。
因みに言うと、式には私は参加する事となっている。高位貴族の当主様と、王家の血を引いている方々が沢山いらっしゃるアドマンス家が参加する事となっているからだ。私は養子ではあるけれどね。
「ラル夫人のレッスンもないし、押し花も禁止されちゃったし」
「ふ~ん、俺といるのがつまんないの?」
「つまんないわけじゃなくて、タクミといると気が抜けちゃうのよ」
「ふ~ん。まぁ、何かするって言っても何も思いつかないしな。あ、ダンスの練習でもする?」
「私があの時足踏んだの、まだ根に持ってる?」
あの最高傑作のドレスお披露目のパーティーの時、いきなり呼び出されたタクミと休憩室で踊ったんだけど足踏んじゃったんだよね。2回、いや3回だったかな。本当にごめんなさい。
「そーゆーわけじゃないけど。これからも俺とダンス踊る事になるんだから練習した方がいいんじゃないかってだけ」
俺と、にだいぶ力入ってたんだけど。もうタクミ以外と踊っちゃダメって事? というか、今まで先生以外じゃタクミとしか踊った事ないけど。
「やる事ないからやる? おやつ後の運動って事で」
「い~ね~、でもワルツな」
「あはは、スフェーンのダンスは分かりませんよ~」
じゃあ準備をしてきますね、とマリアが行ってくれた。音楽に合わせて踊るわけだけれど、練習時には魔道具を使うの。CDみたいな? 魔道具にあるスイッチを押したらワルツの音楽が流れてくるの。わざわざ毎回演奏者を連れてくるのは大変でしょ? だから貴族の人達はこれを使う訳だ。
というより、まさかこの別荘にもあったとは思わなかった。マリアが教えてくれたんだけどね。それは練習しろって事かな。はい、下手っぴでごめんなさい。
「本当にタクミは貴族だよね」
「何当たり前な事言ってんだよ」
「包丁持ってると見えないけど、こういう時変わるって言うか」
「まぁそりゃそうだろうな。俺らの事を知らないやつが、あの制服着てて貴族だって気付くやつは殆どいないだろ」
「だよね~、私だって分からなかったもん」
いきなり、レスリート卿に向かって貴族スタイルの挨拶をしていた時は本当にびっくりしたもん。まさか貴族だったなんて! ってね。
そんな話をしていたら準備が終わった事をマリアが伝えに来てくれて。ちょうどお茶をしていたバルコニーから部屋の方に戻った。
「……」
「アヤメちゃんは小さくて可愛いですね~」
「煩い」
「あははっ」
ほら、並ぶと身長差が大分出ちゃうのよ。私身長小さい方だけど、タクミは大きい方だから余計だよね。まぁダンスのポーズを取った時ぶら下がるほどではないからいいけれど。
「でもハイヒール履いたら踏んだ時痛いよ?」
「踏む気で言ってんな?」
「あはは~どうでしょう」
流石にヒールで踏まれるのは痛いでしょ。だからそんな事はしませんよ~。あっ。
「あ、ごめん」
「……」
言ったそばから踏んでしまいました。あの、タクミさん。その笑顔やめて下さい。目が笑ってませんよ。わざとじゃないんです。
「これは猛練習が必要か?」
「えぇ~」
「やる事ないし時間はたっぷりあるぞ」
「はぁ~い、タクミの足の為にも頑張りま~す」
「そうしてくれ」
タクミぐらい上手になるのには一体どれぐらい時間をかければいいのだろうか。いや、比べちゃいけないのかもしれない。ど~してもくるって回る所が難しいのよね。身長差で相手より足が短いからかな。
いや、それを思ってしまうと悲しくなるから考えないようにしよう、うん。
「何」
「……タクミって手冷たいよね」
「いつも言われる。肉とか生もの触る時温まらなくて助かってるよ」
「あはは、そうだね」
確かに、生ものって温まっちゃダメだよね。細菌とか危ないもん。
「タクミの冷たい手私好きだよ」
「……」
「おっきいし、ごつごつしてるし。これって剣握ってるから?」
「……」
……ん? 黙っちゃったぞ、タクミ。……んっ!?
「えっちょっ……!?」
「お前さぁ……」
いきなりの事でステップが乱れてしまった。ダンスに集中していたのに、目の前の人が腰を引き寄せてキスをしてきたからだ。よろけそうになったけれど、足と床が離れてしまった。何何何、と思っていたら抱っこされちゃった事にやっと気が付けた。
「何、わざと? わざとだよな」
「いや、何」
いきなりキスしないでよ、マリアがい……何でいないの。さっきそこにいたよね。どこ行った。
てか、ずっと抱っこのままですか? タクミさんよ。
「力持ちですね」
「お前のお父様に鍛えられてるんでね」
「いつもボロボロじゃん」
「あははー、師匠は容赦ないんでね」
あら、師匠って呼んでるんだ。お父様がそう言ったのかな。仲良く(?)なっているようで私は嬉しいです。口が裂けても目の前の人の前で言えないけれど。
そう言えばこの前、ナナミちゃんが毎朝ボロボロなタクミが帰ってくるからお父様に会うのが怖いって言ってたな。でもナナミちゃん何回かお父様と会った事あるよね?
実は私、チラ見ではあるけれど何回かお父様とタクミの鍛錬を見た事があるんだよね。戦ってる最中ではないんだけど、いつもお父様は瞬時に私を見つけてはニコリと笑ってくれるの。邪魔しちゃ悪いと思ってすぐ退散するんだけどさ。
「毎日お疲れ様です」
「子ども扱いすんな」
「あら、ご機嫌斜め?」
「お前なぁ」
頭を撫でてみたけれど、駄目だったらしい。でも身長差があるから抱っこされた時とかじゃないと頭を触れないのよね。もっと私に身長があればいいのになぁ。
「……だから困るんだよ」
「何?」
「いーや、お前と一緒だとこっちが苦労するなって話」
「はぁ? 何か困らせるようなことしましたか?」
「した」
「何を」
「分からなんならいい」
「え、何それ、うわっ!?」
ちょっぐるぐる回るなぁ!! 抱っこしたままはやめろっ!!
「ワルツまだ終わってねぇぞ」
「だったら降ろせ!!」
「やだ」
「やだじゃない!」
「あはは、しょうがねぇな~」
しょうがないじゃないわっ!!
今度思いっきりヒールの方で足を踏んでやろう、そう思ってしまった一日であった。
「なぁんか、ゆっくりしすぎてて、こんな事してていいのかどうか分からない」
「いいじゃん別にさ、折角のお休みだぞ?」
「うん、まぁそうなんだけど」
「何にもやる事なくてって事?」
「郵便事業の事で頭いっぱいだったけど、ぜーんぶ置いてきちゃったし。それに今首都でお母様や殿下が頑張ってくださってる訳だし」
「いいじゃん、任せろって言われたんだから。それに事業の事だって一回頭リセットするのは大切な事だろ」
なんか、今ゆっくりととってもいい景色を見ながらタクミと一緒にバルコニーでお茶をしているわけだけど、時間が流れるのが遅い。今何時だろ。
首都ではもう、学院の卒業式が行われた。昨日だったっけ。だからもう高等学生は卒業したという事だ。という事は、首都の屋敷にはきっとお茶会の招待状やら何やらがわんさか贈られてきている事だろう。
そして、学院の卒業式があったという事は、オリコット王国の王太子も卒業。これから王太子と第一王女であるミレイア王女の結婚式が行われる事となる。
因みに言うと、式には私は参加する事となっている。高位貴族の当主様と、王家の血を引いている方々が沢山いらっしゃるアドマンス家が参加する事となっているからだ。私は養子ではあるけれどね。
「ラル夫人のレッスンもないし、押し花も禁止されちゃったし」
「ふ~ん、俺といるのがつまんないの?」
「つまんないわけじゃなくて、タクミといると気が抜けちゃうのよ」
「ふ~ん。まぁ、何かするって言っても何も思いつかないしな。あ、ダンスの練習でもする?」
「私があの時足踏んだの、まだ根に持ってる?」
あの最高傑作のドレスお披露目のパーティーの時、いきなり呼び出されたタクミと休憩室で踊ったんだけど足踏んじゃったんだよね。2回、いや3回だったかな。本当にごめんなさい。
「そーゆーわけじゃないけど。これからも俺とダンス踊る事になるんだから練習した方がいいんじゃないかってだけ」
俺と、にだいぶ力入ってたんだけど。もうタクミ以外と踊っちゃダメって事? というか、今まで先生以外じゃタクミとしか踊った事ないけど。
「やる事ないからやる? おやつ後の運動って事で」
「い~ね~、でもワルツな」
「あはは、スフェーンのダンスは分かりませんよ~」
じゃあ準備をしてきますね、とマリアが行ってくれた。音楽に合わせて踊るわけだけれど、練習時には魔道具を使うの。CDみたいな? 魔道具にあるスイッチを押したらワルツの音楽が流れてくるの。わざわざ毎回演奏者を連れてくるのは大変でしょ? だから貴族の人達はこれを使う訳だ。
というより、まさかこの別荘にもあったとは思わなかった。マリアが教えてくれたんだけどね。それは練習しろって事かな。はい、下手っぴでごめんなさい。
「本当にタクミは貴族だよね」
「何当たり前な事言ってんだよ」
「包丁持ってると見えないけど、こういう時変わるって言うか」
「まぁそりゃそうだろうな。俺らの事を知らないやつが、あの制服着てて貴族だって気付くやつは殆どいないだろ」
「だよね~、私だって分からなかったもん」
いきなり、レスリート卿に向かって貴族スタイルの挨拶をしていた時は本当にびっくりしたもん。まさか貴族だったなんて! ってね。
そんな話をしていたら準備が終わった事をマリアが伝えに来てくれて。ちょうどお茶をしていたバルコニーから部屋の方に戻った。
「……」
「アヤメちゃんは小さくて可愛いですね~」
「煩い」
「あははっ」
ほら、並ぶと身長差が大分出ちゃうのよ。私身長小さい方だけど、タクミは大きい方だから余計だよね。まぁダンスのポーズを取った時ぶら下がるほどではないからいいけれど。
「でもハイヒール履いたら踏んだ時痛いよ?」
「踏む気で言ってんな?」
「あはは~どうでしょう」
流石にヒールで踏まれるのは痛いでしょ。だからそんな事はしませんよ~。あっ。
「あ、ごめん」
「……」
言ったそばから踏んでしまいました。あの、タクミさん。その笑顔やめて下さい。目が笑ってませんよ。わざとじゃないんです。
「これは猛練習が必要か?」
「えぇ~」
「やる事ないし時間はたっぷりあるぞ」
「はぁ~い、タクミの足の為にも頑張りま~す」
「そうしてくれ」
タクミぐらい上手になるのには一体どれぐらい時間をかければいいのだろうか。いや、比べちゃいけないのかもしれない。ど~してもくるって回る所が難しいのよね。身長差で相手より足が短いからかな。
いや、それを思ってしまうと悲しくなるから考えないようにしよう、うん。
「何」
「……タクミって手冷たいよね」
「いつも言われる。肉とか生もの触る時温まらなくて助かってるよ」
「あはは、そうだね」
確かに、生ものって温まっちゃダメだよね。細菌とか危ないもん。
「タクミの冷たい手私好きだよ」
「……」
「おっきいし、ごつごつしてるし。これって剣握ってるから?」
「……」
……ん? 黙っちゃったぞ、タクミ。……んっ!?
「えっちょっ……!?」
「お前さぁ……」
いきなりの事でステップが乱れてしまった。ダンスに集中していたのに、目の前の人が腰を引き寄せてキスをしてきたからだ。よろけそうになったけれど、足と床が離れてしまった。何何何、と思っていたら抱っこされちゃった事にやっと気が付けた。
「何、わざと? わざとだよな」
「いや、何」
いきなりキスしないでよ、マリアがい……何でいないの。さっきそこにいたよね。どこ行った。
てか、ずっと抱っこのままですか? タクミさんよ。
「力持ちですね」
「お前のお父様に鍛えられてるんでね」
「いつもボロボロじゃん」
「あははー、師匠は容赦ないんでね」
あら、師匠って呼んでるんだ。お父様がそう言ったのかな。仲良く(?)なっているようで私は嬉しいです。口が裂けても目の前の人の前で言えないけれど。
そう言えばこの前、ナナミちゃんが毎朝ボロボロなタクミが帰ってくるからお父様に会うのが怖いって言ってたな。でもナナミちゃん何回かお父様と会った事あるよね?
実は私、チラ見ではあるけれど何回かお父様とタクミの鍛錬を見た事があるんだよね。戦ってる最中ではないんだけど、いつもお父様は瞬時に私を見つけてはニコリと笑ってくれるの。邪魔しちゃ悪いと思ってすぐ退散するんだけどさ。
「毎日お疲れ様です」
「子ども扱いすんな」
「あら、ご機嫌斜め?」
「お前なぁ」
頭を撫でてみたけれど、駄目だったらしい。でも身長差があるから抱っこされた時とかじゃないと頭を触れないのよね。もっと私に身長があればいいのになぁ。
「……だから困るんだよ」
「何?」
「いーや、お前と一緒だとこっちが苦労するなって話」
「はぁ? 何か困らせるようなことしましたか?」
「した」
「何を」
「分からなんならいい」
「え、何それ、うわっ!?」
ちょっぐるぐる回るなぁ!! 抱っこしたままはやめろっ!!
「ワルツまだ終わってねぇぞ」
「だったら降ろせ!!」
「やだ」
「やだじゃない!」
「あはは、しょうがねぇな~」
しょうがないじゃないわっ!!
今度思いっきりヒールの方で足を踏んでやろう、そう思ってしまった一日であった。