不本意ですが、天才パイロットから求婚されています~お見合いしたら容赦ない溺愛に包まれました~【極甘婚シリーズ】
 機内アナウンスとは、パイロットが離陸後にするもの。マイクをオンにしてまずは日本語で挨拶をする。

「こんにちは、那覇空港行き123便にご搭乗いただき、ありがとうございます。本日、皆様を安全に空の旅へご案内するのは機長の会沢と私、副操縦士の上杉です。目的地への到着時刻は十二時三十五分。約二時間半のフライトとなる見込みです」

 その後は、フライト中にお手持ちの電子機器の使用を控えていただき、電源を切ってほしいことや喫煙は禁止されていることを伝えた。

「本日はご搭乗いただき、ありがとうございます。どうぞ空の旅をお楽しみください」

 マイクをオフにするや否や、会沢さんが「相変わらず堅苦しいなぁ」とぼやいた。

「アナウンスに堅苦しいもなにもないじゃないですか」

「それはそうだが、お客様にとって機内アナウンスは思い出に残るものだ。そこでクスッと笑ったり感動したりする話を聞かされたら最高じゃないか?」

「では帰りの便ではぜひ会沢さんの、笑えたり感動したりする機内アナウンスを聞かせてください」

 すると会沢さんは単純な性格で完全に俺に乗せられ、「仕方がないな、先輩として聞かせてやろう」とやる気。

 そんなところも憎めなくて好きな上司だ。

 この日のフライトも順調に進み、無事に二時間半の飛行を終えることができた。

 着陸後は、飛行日誌に記入をしてデブリーフィングという振り返りの仕事が残っている。
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