不本意ですが、天才パイロットから求婚されています~お見合いしたら容赦ない溺愛に包まれました~【極甘婚シリーズ】
ずっと忘れていてごめんね

 早朝五時過ぎ。家族全員で早起きをしてやって来たのは空港。展望デッキで、朝陽が上ると同時に跳び立っていく飛行機を見送っていた。

「久しぶりにこんな近くで飛行機を見たけど、やっぱりカッコいいな」

「ふふ、そうだね」

 はしゃぐ兄を子供みたいと思った私とは違い、雪乃さんは笑顔で見つめる。

「空港に来たのは私も久しぶりだよ。しばらく来ない間にこんなに綺麗になっていたとは」

 祖母は誰もいない広い展望デッキを感慨深そうに見つめた。

 記憶を失っていると告げられてから二ヵ月と少しが過ぎた。私は二週間に一度の通院を続けている。

 記憶は戻らず、頭痛も起こってはいるものの、飛行機へのトラウマは確実に減っていた。こうやって間近で飛行機を見ても平気になったのはもちろん、空を飛ぶということで遊園地の浮遊系のアトラクションも乗ることができなかった。

 でも一ヵ月前、大翔に誘われて行った遊園地で乗ることができたのだ。それを事後報告したところ、大翔に「なにかあったらどうしたんだ」とかなり怒られちゃったけれど。

 その後も絶叫系のアトラクションも乗ることができて、心から楽しむことができた。

 家族も両親との思い出の地を巡ってくれたり、こうして空港へ一緒に来てくれたりと協力してくれて本当に感謝してもしきれない。
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