不本意ですが、天才パイロットから求婚されています~お見合いしたら容赦ない溺愛に包まれました~【極甘婚シリーズ】
 失っていた記憶は両親が亡くなるまで彼、大翔と出会ってからのものだった。

「大翔だったんだ」

 一気に記憶が戻ったからか、まだ頭痛がするものの、私の瞳からは涙が溢れて止まらなくなる。

 ずっと忘れてしまっていたのは大翔だったんだね。どうしてあんなに好きだった人のことを忘れていたことに気づかなかったのだろう。

 そもそもなぜ大翔のことだけを忘れてしまったの? 彼はどんな気持ちで今まで過ごしていた?

 お見合いで会った日のことを思い出すと、胸が苦しくてたまらない。

 大翔はずっと私のことを想い続けてくれていたと自惚れてもいいのかな? だからお見合いの日に会ったばかりだと思っていた私と結婚したいと言ってくれたんだよね。

 大切な人との思い出の場所だと言っていたサウスパークも、私とよく遊んだ場所だから? 大翔と交わした言葉、一緒に行った場所、思い出せば思い出すほど彼の愛が感じられてつらい。

 そこからロンドンまでの五時間あまり、私は涙が止まらなくて着陸した時にはすっかりと目が腫れてしまっていた。

 心配する客室乗務員に「お世話になりました、ありがとうございました」と告げて、急いで到着ゲートへと向かう。
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