不本意ですが、天才パイロットから求婚されています~お見合いしたら容赦ない溺愛に包まれました~【極甘婚シリーズ】
「あぁ、今初めて知った。なんだよ、桜花が思い出したら俺から直接返そうと思っていたのに」

 あからさまにがっかりする大翔には申し訳ないけれど、その姿が可愛くてたまらない。

「なんて言って私に返そうと思ったの?」

 たしかあの時、零して怒られたことが恥ずかしかったのか、大翔は私が差し出したハンカチを奪うように取ったよね。

「それはわかるだろ? ……あと時、ちゃんとお礼が言えなくて悪かったって謝ろうと思ったんだ」

「……そっか」

 それからも私たちは、一緒に過ごした日々の懐かしい話が尽きず、夕食を食べている時も止まらなかった。

「明日は大英博物館とウェストミンスター寺院を見に行って、それからオペラ座の怪人を鑑賞するんだよな」

「うん、せっかくだからロンドンを満喫したい」

 ホテルに到着し、部屋の前で足を止める。

 私がゆっくり休めるようにと気遣い、大翔は二部屋取ってくれていた。だから今夜はそれぞれ違う部屋で眠る。

「それじゃまた明日の朝、七時にロビーで」

「うん、おやすみなさい」

 大翔は明日の休みを挟んで、また帰国の便のフライトが控えている。その貴重な休みの明日も観光に付き合ってくれるんだもの。彼だってゆっくり休むべきだ。

 ドアノブに手をかけ部屋に入ろうとしたものの、なかなか一歩が出ない。
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